メコン河開発メールサービス 2000年9月20日
ベトナムからカンボジアに流れるメコン河最大の支流の1つセサン川に、ロシアとウクライナの支援を受けて建設が進められているヤリ滝ダム(ベトナム)からの放流で、下流のカンボジア・ラタナキリ県で洪水が起き、少なくとも32人の死亡が確認された問題についてはすでにお伝えしました(詳細はセサン川・スレポック川・セコン川ダム開発を参照)。そしてこのヤリ滝ダムのすぐ下流に、日本政府が最大出資者であるアジア開発銀行がセサン3ダムという新たなダム建設を計画していました。
ところが、本日、アジア開発銀行はホームページを通じて、このプロジェクトへの支援をベトナム政府は今後ADBに求めないと通告してきたため、支援リストから削除すると伝えました。ヤリ滝ダムの影響をNGOなどがADBに訴えたため、調査のやり直しをすることになり、結果的にこうした面倒なプロセスを嫌ったベトナムが、プロジェクトの取下げを申し出たと見る向きもありますが、確かなことは今のところわかりません。来日中のアジア開発銀行報道官に聞いてみましたが、彼はこの事実をまだ知りませんでした。
下記はアジア開発銀行(ADB)のホームページの翻訳です。現地のグループが働きかけていたADBのプロジェクトからの撤退は決まりましたが、ベトナム政府の独自資金もしくは民間ベースで開発するという選択肢も残っています。また、ヤリ滝ダムからの放流による影響は今後とも監視していかなくてはならない問題です。いずれにしましても、現地住民から阻止の声が挙がっていたメコン河支流のダム計画が1つなくなったことは歓迎したいと思います。
ベトナム政府は正式にADBに対して、セサン3水力発電プロジェクトを進めるためのADBの支援を今後は求めないことを連絡してきた。
先にADBはこのプロジェクトへの融資を進める決定を延期していた。これは(ベトナム政府によって実施された)ヤリ滝水力発電所の派流への影響報告と共に行なったADBの初期調査の結果、セサン3プロジェクトの技術的な様式や運転の特質を決定する前に、更なる環境社会影響調査をする必要があるとADBは考えたからである。ADBは追加支援としてベトナム政府に180万ドルを供与した。これはヤリとセサン3の下流影響を評価する環境影響調査の準備と、すでに運転したヤリ滝ダムの影響緩和策を含めカスケード(階段状のダム群)全体の環境・社会管理と影響緩和と監視計画を立てることに充てられていた。
ベトナム政府の今回の決定は提案された支援プロジェクトを進めないことを意味する。それゆえ提案された投資プロジェクトはADBローンプログラムからも削除される。
これまでに完成した環境社会影響評価(ADBからセサン3プロジェクトに供与された最初の支援)は現在、社会学者/住民移転アドバイザーと環境アドバイザーからなる独立した国際委員会でレビューしている。完成すれば、これらの報告書は国際委員会のコメントを含めてベトナム政府に送られる。ADBとしては、最初の調査のファインディングが、同国の将来のエネルギーセクター開発に役立つことを願っている。
ADBがもはやセサン3プロジェクトに積極的に関与しないとはいえ、ADBはこの地域での水力発電プロジェクトの開発のための適切な環境影響緩和策や管理方法に対して、喜んで自分たちの見方をシェアするつもりである。