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メコン河開発メールニュース 2002年10月13日
地元住民の強い反対の中、日本のODAとアジア開発銀行（ADB）の融資によって建設が進められているタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクトに関する最新情報です。
省庁再編で天然資源・環境大臣となったプラパートが工事延期の可能性を表明したということです。
以下、メコン・ウォッチ（バンコク）の土井利幸の報告です。
なお、本案件に関する問題点などにつきましては、下記をご参照下さい。
サムットプラカン汚水処理施設建設をめぐる動きが再び活発化してきました。
まず、9月末にアジア開発銀行（ADB）が今年3月以降のタイ政府の対応などをまとめた報告書を公表しました。報告書（英文）は、影響住民と話し合いながら補償計画を作成中としていますが、影響住民を最小に限定し、また先にADBに調査（インスペクション機能）を要請した反対運動のリーダーには連絡すらなく報告書が作成されたことで、住民からはすでに強い反発の声が聞こえてきています。
多額の融資を行ない、「これまでの紛糾を教訓化する」と言い、理事会は「今後も積極的な役割を果たす」としながら、真に問題を解決する意思があるのかどうか、大きな疑問です。
汚水処理場の工事は進んでいますが、住民が送水管の敷設場所の一部を守っていることもあり完成には至っていません。しかし、来週早々にも工事が強行されるとの観測があり、現地は緊張感を高めています。
そんな中、省庁再編にともない新設された天然資源・環境省の大臣に就任したプラパット・パンヤチャートラック氏が、「工事延期もありうる」との発言をした、
と現地紙は報じています。同大臣はすでに就任早々、「サムットプラカン汚水処理場建設については反対住民の意見も聞きつつ最重要課題として取り組む」と発言しています。
プラパット大臣は、大学生だった1973年当時民主化闘争に加わり軍に狙撃され重症を負ったことがあり、現タクシン政権でも農民の負債返済を三年間猶予する政策の提唱者として知られています。こうした経歴が期待を抱かせる一方で、今回の発言にはまだまだ微妙な部分も多く、現地の状況ともあわせて注視していく必要があります。
以下、大臣発言をめぐる地元英字紙の報道の日本語訳です。
ザ・ネイション2002年10月12日
Sirinart Sirisunthorn署名記事
プラパット・パンヤチャートラック天然資源・環境大臣は、昨日、24億バーツ（約70億円）をかけたクロンダン汚水処理場について、工事延期もありうる、と発言した。
大臣は、「サムットプラカン県住民に影響が出ないよう、必要な限りにおいて計画を遅らせることもある」と述べた。
また大臣は、学術顧問を中心に特別委員会を編成した上で計画についての全ての可能性を検討する、とし、「委員会の目的は、あらゆる変更が可能であるという前提の基に最善の選択肢を探ることである」と語った。
選択肢の中には、処理後の排水を周辺の工場の冷却水として使用し湾への排出量を最小限に抑える方法もある。
バンコク・ポスト2002年10月12日
Ranjana Wangvipula署名記事
プラパット・パンヤチャートラック天然資源・環境大臣は、サムットプラカン県クロンダン区の汚水処理場建設をめぐる汚職問題について、調査は個人を対象とするもので計画自体を云々すべきではない、と発言した。
プラパット大臣は、汚職に関わった個人にはしかるべき措置が取られるべきである、とした。
しかし、クロンダン住民の間に汚水処理場が生活を悪化させるとの深刻な懸念があるのなら、解決策が見つかるまで完成間近の計画を一時的に中止することもやぶさかではない、と大臣は述べた。
これらの発言は、大臣が23億バーツ（約70億円）をかけた同計画についての説明を受けたあとに出たもので、大臣はまた、調査グループに住民の懸念などの詳細を調査するよう指示する、と語った。
住民の大半はイガイの養殖や漁業で生計を営んでおり、処理場の排水によって生業の基盤である環境が汚染されることを懸念している。
これまで調査で、入札・土地取得・契約書作成時における不正が指摘されており、調査が継続中である。