ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 対ビルマ債権放棄 > 不透明なまま来年度予算案に300億円計上
昨年12月22日に情報を流しました、対ビルマODA債権の放棄に関する続報です。昨年12月に、日本政府は、問題が多く指摘された債務救済無償資金協力を廃止し、債権放棄という「国際的な流れ」に方向を変えることを発表しました。債務放棄がそれぞれの国の経済社会の発展に寄与するよう、多くの国については、世界銀行が中心となっている「貧困削減戦略ペーパー(PRSP)」を軸とする「重債務貧困国(HIPCs)イニシアティブ」のもとでモニタリングをする予定だと日本政府は説明しています。
しかし、HIPCsイニシアティブの対象国でありながら、軍事政権下にあるためPRSPのプロセスを行っていないビルマ(ミャンマー)に対しては、今のところ国際的なモニタリングシステムは存在していません。
にもかかわらず、日本政府は2735億円の債権放棄をビルマ軍事政権に行うと発表しています。この額は、2番目に多いバングラデシュの2倍以上と、対象国の中でダントツです。本来、日本に返済されるべき(原資は税金、郵便貯金、簡保等)これらのお金が、民主化弾圧や人権抑圧を続ける軍関連の支出に回される可能性は少なくありません。日本政府は、そうならないためのモニタリングシステムについては全くアイディアがない状態で、にもかかわらず債権放棄だけは早々と決定してしまいました。
債権放棄の方法について、日本政府は、支払期日が来たら交換公文を結んで債権を漸次放棄していくことにしています。その際に、モニタリングに相当する条件を提示することになると説明していますが、何を条件にしたらいいか、今のところ白紙に近い状態です。
もう1つの問題は延滞債権です。債権放棄の対象額とされている2735億円のうち、期日が来たのに支払われていない延滞債権が1500億円もあることが明らかになりました。日本政府は、延滞債権は債権放棄の対象外と話していたにもかかわらず、公表した債権放棄対象額の2735億円にこの1500億円も含まれているのです。
これについては、日本政府は将来民主化されたときに債権放棄の対象に加えるという考えのようですが、そうした考え方は外務省からは公表されていませんし、今回の対ビルマODA債権放棄決定の不透明さの象徴と言えます。
平成15年度政府予算案には、対ビルマODAを含む債権放棄のための国際協力銀行への交付金300億円が計上されています。放棄した債権が軍備増強や人権侵害に使われることはないのか、ルール違反の延滞債権をどうするつもりなのか、一部ODA業界紙(経済協力通信)が報じたように債権放棄がビルマ軍事政権への円借款再開に向けた環境整備ではないのか・・・。問題は山積しています。