ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > 政府は経済学落第
日本のODAとアジア開発銀行の融資でタイ中部のサムットプラカン県クロンダン区に建設が進められている汚水処理プロジェクト問題についてです。
このODAプロジェクトをめぐる汚職疑惑が現地の新聞で連日報道されています。以下は、タイのクオリティ・ペーパーであるタイ字新聞のプージャッガン(マネージャー)オンラインの記事を、メコン・ウォッチの木口由香(バンコク)が翻訳しました。
2月18日マネージャー紙 オンライン
クロンダン保全グループのリーダは、クロンダン汚水処理場建設が明らかに政策を利用した汚職であると指摘。土地取得、土地の売買の政治家間の協力、そして共有地にまで発行されている何枚もの土地権利書などのデータを示した。ヂェムサック・ピントーン博士(上院議員)は国に対し、無理にプロジェクトを進めれば環境への影響は却って大きいと、揺さぶりをかけている。また、同事業が経済学から見ると落第だ、と述べた。
本日(2月18日)、タマサート大学の多目的ビル会議室で、経済社会顧問委員会の汚職不正問題追跡・調査作業部会の代表であるトーラクン・ヨンマナーク助教授が、捜査的な研究である「クロンダン汚水処理場事業:政策を利用した汚職」の調査結果発表の記者会見に出席した。これは、真偽を調査し、また、汚職問題を予防・解決するための知識を一般に広めるため、「汚職に反対する市民社会基金」と、政府の汚職防止政策に従って予算化された基金により調査されたものである。
「地域保全グループとコーヒーショップ議会とその仲間たち」を代表した、ダワン・チャンタラハッサディさんは、クロンダン汚水処理場計画が政策を利用した汚職であることがはっきりした、と話している。それによると、土地探しの段階から政治家が利権を求めて関わり、その上、(運河などの)公共用地にまで土地権利書が発行されているという。
ダワンさんは、1900ライの土地が、価格見積もりより異常に高いと指摘した。売買価格は1ライ(0.16ha)あたり1030万バーツにもなり、総額で19億5660万バーツに上った。しかし、これが県土地事務所の見積もりでは、1ライあたり48万バーツにしかならないのである。土地価格の上昇が、事業予算を136億1200万バーツから237億100万バーツまで引き上げることを内閣が承認する原因の一つとなっている。これは、損得に関わりのある政治家、建設業者、官僚という3つのグループが事前に図ったことだ、という。
バンコクと選出のヂェムサック・ピントーン議員は、政府は汚水処理場建設に投入した予算200億バーツを惜しむべきではないという。なぜなら事業の実施に固執すると、自然に対して甚大な影響があるからだ。いずれにしても政府が、建設した予算がもったいないという考え方で、パクムンダムに対して行ったような決断方法をクロンダンでも使うことが心配だという。議員は、これがもし自分の教える経済学の学生であれば、試験を通さないところだ、という。なぜなら、既に失われたものは再度カウントする必要がないからだ。
「200億バーツという支払った金額を含めて考えない方が良い。なぜなら、(汚水処理場を)使おうが使うまいが、払わなくてはならない金だからだ。それよりも考えなくてはならないのは、使用した場合、どのような損害が更に発生するか、ということだ。仮に政府が、また投入した予算を惜しむようでは、タイ国は生き残っていけないに違いない」と議員は述べた。
環境・天然資源省大臣パパット・パンヤチャートラック氏は、(事業)契約調査チームは既に首相に報告を提出していることを明らかにした。実施についてどうするかは全て首相の決断次第だという。また、この件に関して首相が中国から帰国した後に、正式に記者会見が行われる見込みだ。