ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > 首相が経済性にも疑問
ADBの融資と日本の環境ODAで建設が進められているタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクト(クロンダン区)についてです。
環境アセスメントの不在、住民無視の開発、汚職疑惑、工事請負契約違反・・・、3年前から住民らが指摘してきた問題が、今、タイで大きな政治問題となっています。
以下は少し前の記事ですが、例え建設しても経済的に成り立たないことを指摘しています。どうしてこんなプロジェクトに、日本が最大出資国で財務省OBが総裁を務めるADBが2億3000万ドルも援助をした上、国際協力銀行が70億円もの円借款を供与したのか、そして両機関とも本質的な解決策を何ら講じないのか。責任はすべてタイ側にあると言わんばかりの、援助機関の無責任さです。
メコン・ウォッチでインターンをしている山口健介さんの翻訳です。
2003年1月25日
Anchalee Kongrut、バンコクポスト
工業省工場局長は、「タクシン首相は、問題を抱えているクロンダン汚水処理プロジェクトが、完成後に低需要により資金問題を抱えるだろうことを、警告してきた」と述べた。
木曜日のVirah Mahvichak局長の発言では、タクシン首相はサムットプラカン県の工場から排出されると見込まれる排水量に関する情報を既に要求している、とのことである。
この件についてVirah局長は、「タクシン首相に対して、汚水処理プロジェクトはその運用に見合うだけの収入が得られない可能性があることを伝えた。工場からの排水量が予定量に到達する見込みはなく、代わりに国が運用費用を補填することになる可能性が高い」と語った。
予算230億バーツ(約690億円)の当該プロジェクトの汚水処理容量の半分である25万立方メートルは工場からの排水である。残りの半分は一般家庭や商業用建築物からの排水が予定されている。しかし実際には、工場からの排水量ははるかに少なくなると予想されている。Virah局長によれば、プロジェクトで汚水処理を求められている工場から排出される排水量は、実際には予定量より10万立方メートル少ないわずか13万2167立方メートルになる、とのことである。
真の懸念は、プロジェクトの対象工場の大多数が既に自前の処理施設を有していることだった。政府は、このプロジェクトが運用費用に見合うだけの収入を得られるよう、専門家の助言を求めている。水の汲み上げ作業だけで1日200万バーツの電気料金が見込まれている。
1995年チュアン・リクパイ政権下で科学技術環境省の主導で始まったこのプロジェクトは、当初から汚職の疑いをもたれていた。また地元の村民からも、施設からの汚水処理後の排水が、沿岸部の環境破壊につながる恐れがあるとして反対されている。
タイ開発研究所によれば、プロジェクトの各段階において、利得を得ていた政治家がいただろうということである。入札段階において不正が行われた形跡がある。入札に応じたのは合弁企業1社のみで、契約は成立したものの、本来入札規則に拠れば再度入札が行われるべきであった。その合弁企業の各社は閣僚と関係を持っていることが知られている。
汚水処理場用地は、平均価格より10億バーツも高価な金額で購入された。土地の所有者はチャワリット政権の閣僚2人であった。
プロジェクトに携った元技術者は、プロジェクトの仕様と資材の変更が当初の120億バーツから230億バーツへの費用高騰を招いた、として政府に請願している。その請願は、現在上院委員会で調査されている。
プロジェクトの建設は現在95%が終わり、200億バーツ以上が、建設請負業者のNPVSKG社に支払われた。
合弁企業のうち2つの企業は、現政府の実力者とコネクションを持っている。これらは、プラユーンビサバ・エンジニアリングとスワット・リプタパンロップ労働大臣、およびシ・サン・カン・ヨタ(1979)とチャットタイ党党首バンハーン・シルパアルカの関係である。