ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > スキャンダルで担当局長更迭
日本のODAで建設されているタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクト問題。今回は工事をめぐる不正契約で、実施機関の公害管理局長が更迭されたニュースです。
以下、メコン・ウォッチのインターンの山口健介さんの翻訳です。
The Nation、2003年1月29日
委員会により、サムットプラカン県クロンダン区汚水処理施設における仮契約において不正が発覚したことで、昨日環境省環境質促進局長が左遷された。プラパット・パニャチャトラクサ天然資源・環境大臣によれば、波紋を広げているプロジェクトに対する調査委員会の設置を命じたタクシン首相は、シリタン・パイロボリブーン局長の異動を承認した、とのことである。
汚水処理プロジェクトの実施機関である公害管理局のシリタン前局長は、バンブー地区におけるプロジェクトの調査に道を開くために、首相公邸勤務に異動となった。
このプロジェクトの予算300億バーツ(約900億円)のうち3分の1は、アジア開発銀行(ADB)により拠出されているが、入札・土地購入・環境問題の各分野で汚職と不正が蔓延していると報じられている。
地元住民やその地域で操業する企業の多くは、当初は2002年末には運用開始予定であった汚水プロジェクトに、現在でも反対している。
建設作業そのものはほぼ完了しているが、それが将来的に実際に稼動するか否かについては現在疑念がもたれている。
公害管理局(PCD)は、環境影響評価は不要であり、工場からの汚染物質の問題解決に施設が役立つこととして、環境影響評価調査を行っていない。
PCD側は対象工場に対し、施設を使用し、プロジェクトの運用費用に貢献するよう説得を続けている。
PCDによれば、各工場は排水処理料として1立方メートルあたり10〜15バーツを支払い、それにより施設運用費用の大部分をまかなう計画である。
しかしながら、同県の5000ある工場のうち大半は既に自前の処理施設を有する。したがって汚水処理に余計な費用をかけないために、多くの工場はPCDによる新しい汚水処理施設を使わないだろう。
プラパット大臣によると、環境質推進局の副局長が局長の代理を務めるという。
バンコクポスト、2003年1月29日
Ranjana Wangvipula記者
環境省環境質推進局長は、議論を呼んでいるクロンダン汚水処理施設における不正を理由に、首相公邸勤務に異動となった。
調査団は、シリタン氏が公害管理局長として予算23億バーツ【原文まま:230億バーツ=クロンダン汚水処理施設=の誤り】のプロジェクトを管理していた際に、「適切でない行為」を行っていたことを示唆した。彼は施設建設プロジェクトの5企業による合弁会社に、新企業を加えるよう斡旋した容疑がかけられている。
調査団長であり法律専門家のスラチェット・ドゥアンソドゥスリ氏は、調査継続中との理由から、詳細にはふれなかった。
パパット天然資源・環境省大臣は、タクシン首相に昨日の閣議で不正発覚を伝えたことを表明した。
パパット氏は、この決定により、省庁内の役人はこれまで以上の情報を報復の恐れなく調査団に報告することが可能になるだろう、と述べた。さっそく大臣顧問のスラチェット氏は、2000年にオプコ社を合弁企業に組み込むことを認めた同意書にシリタンが署名したことを明かした。オプコ社はノースウェスト社に代わって合弁企業に入り、その一方でノースウェスト社は同社の許可なしに契約に同社の名前が用いられた、として合弁企業から脱退した。
現在調査の焦点となっているのは、6つ目の企業の紹介とそれに引き続いたノースウェスト社の脱退である。5社合弁企業(NVPSG)は技術専門社としてノースウェスト社を必要としていたのだ。企業の交代は可能だが、それはノースウェスト社が撤退する前に起こる限りにおいてである。
スラチェット氏は、シリタン氏はオプコ社を紹介する2年前からノースウェスト社の撤退を知っていた、と述べた。
パパット氏はプロジェクトの契約内容の理解、汚職の問題点、経済・環境的な観点での問題点の調査には今しばらく時間が必要だと述べた。
シリタン氏は突然の異動に動揺していることを認めながらも、コメントを避けた。
とにかく彼は「『行け』といわれればどこへでも行きますよ。」とだけ述べた。
チュアン・リクパイ政権時代の1995年より開始されたこのプロジェクトは、当初より汚職の疑いがもたれていた。また施設による沿岸部の環境への悪影響を危惧する地元住民の反対の結果、プロジェクトは今までに幾度か計画を遅延している。
The Nation、2002年1月30日
Woranari Khosachan記者&Sirinart Sirisunthorn記者
昨日タクシン首相は、シリタンの公害管理局長からの異動は、汚職にまみれたクロンダン汚水処理プロジェクトの調査をやり易くするであろう、と述べた。
公害管理局(PCD)は230億バーツ規模のプロジェクトを管理している。シリタンの異動承認に関する閣議決定の後、タクシン首相は、「調査はより確実な証拠と綿密な情報を必要とする。従ってシリタンをまず異動せねばならない。」と述べた。異動は即日に実施された。
予備調査では該当プロジェクトにおける汚職疑惑は事実であり、政治家・ビジネスマン・政府役人をも巻き込むものであった。タクシン首相は「プロジェクトは当初から用地購入段階・建設プロジェクト用地変更などの点で疑問点が多かった。よりいっそうの調査が必要である。この目標のために、私は国家汚職防止委員会(NCCC)による同様の調査と平行して、調査団に定期的な報告を命じた。」と述べた。
タクシン首相は、「ボーノークやヒンクルートプロジェクト【注:日本企業が投資して住民から激しい反対に直面してきたタイ南部の石炭火力発電所。燃料や】と同様な、断固たる決断をクロンダンプロジェクトに対しても行うつもりでいる。しかしながら実施決定後に、建設会社から起訴されないことを確かなものとしたい」と言った。当該プロジェクトに関連する汚職が発覚した場合、それがたとえ彼自身の所属政党の代議士であろうと罪を免れ得ない、とタクシンは述べた。
一方、シリタン氏は異動には何の異存もなく、むしろ首相を補佐する任務の一部になることに名誉を感じていることを表明した。
シリタン氏は「私の異動は私が有罪であるとか、汚職に関わったということを意味するものではない。私は調査を支持する」と述べた。
さらにシリタン氏は「じつは政府公邸で首相補佐団の一部として仕事をすることは、私の夢であった。疑惑が表面化してから、私には疑惑を払拭する場が与えられていないが、やっとその場が与えられた」とも言い切った。
異動時、シリタン氏は短期間のPCD局長職在任後、就任していた環境省環境質推進局長だった。ただし以前プロジェクトの用地購入契約に署名したのはシリタン氏であった。
シリタン氏は「もし私が有罪であるならば、用地購入プロジェクトに関連する契約を2度も承認した内閣もまた有罪であるべきだ」と主張する。
さらに、「プロジェクトに関して全力を尽くし、さらに地代の1ライあたり160万バーツから102万9000バーツへの引き下げに成功した結果、国はいくらかの経済的恩恵を受けることができたのだ」とシリタン氏は強調した。
プロジェクトにおける「高価」な地代は、プロジェクト反対者の主要な反対理由の1つである。彼らは、その法外な値段は、汚職の結果を反映しており、またプロジェクト全体の予算を現在の230億バーツに倍増させている、と指摘している。
これに対しシリタン氏は、「我々も当初の計画よりも地代が高いことは承知していた。しかし当時限られた選択肢しか我々には残されておらず、選択の余地がない中、最善を尽くしたのだ」と反論した。
「私は私がすべきことをしただけだ。全ては適切な慣行および規則に従っており、合法かつ他の機関からも承認されていたことだ」
用地代の問題に加えて、シリタン氏は他の多くの疑惑のある問題への関与が疑われている。ただし彼自身は、その1つ1つについて、疑いを晴らすことができると主張している。