ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > 責任逃れのJBIC
住民無視の開発プロセス、激しい反対運動、そして汚職。
日本政府とアジア開発銀行(ADB)が環境ODAとして300億円以上を融資しているタイのサムットプラカン県汚水処理プロジェクトを象徴する言葉はこれだけでは足りないようです。
責任の押し付け
以下の記事に見られるJBICの態度は、責任の押しつけとしか言いようがありません。もちろんタイ政府の責任は問われるべきですが、それについては自ら捜査を行っています。何もしていないのはJBICです。これまでJBICや外務省は、「タイ政府は法律に基づいて適切にやっています」「問題ありません」と繰り返してきました。問題が(当然の結果ですが)次々に顕在化するにつれ、JBICは責任をタイ側に全て押し付け、自らの審査責任や国会等で行った説明の責任はないと言わんばかりの姿勢をとっています。
新環境社会ガイドラインを制定し、それに基づく異議申し立て制度を設立したばかりのJBIC・・・過去のプロジェクトの責任にこのような態度をとり続ける限りは、「新しいガイドラインでJBICは変わった」といくら叫んでも、現地の住民やNGOは信じてくれないでしょう。
JBICはこのような事業を承認した自らの審査責任、問題が指摘されてから3年間も有効な手だてを講じなかった責任をどのようにとるのか、担当した職員が出世する中で、タイ政府にだけ責任を押し付けて幕引きにすることは許されません。
第3者による透明なプロセスでこの事業の問題点を分析し、再発防止のための方法を社会に明らかにすべきではないでしょうか。
本事業をめぐる問題とこれまでの経緯は、以下のページをご覧ください。
以下はタイの日刊マネージャー紙の記事をメコン・ウォッチ(在バンコク)の土井利幸が翻訳しました。
日刊マネージャー紙2003年6月17日(一・三面)
JBICが16億バーツにおよぶクロンダンへの融資による債務の返済を強く求めている。契約を無効にしたタイ政府の工事中止命令を根拠としたもの。プラパット天然資源環境大臣はプロジェクトに問題があることを知りながら債権者が責任逃れをしていると指摘。一方犯罪防止課は来週はじめにも10名の容疑者に対して逮捕状を発行するべく準備を進めている。
本日(6月16日)天然資源環境省を管轄するプラパット・パンヤーチャートラック大臣が明かしたところによると、国際協力銀行(JBIC)タイ駐在の藤沼敏雄主席が面会に訪れ、JBICがサムットプラカン県クロンダン区の汚水処理場建設プロジェクトに融資した16億4800万バーツ(約47 億8000万円)の額にのぼる債務の返還を求めた。このプロジェクトに対してタイ政府はJBICから17億5000万バーツ(約50億7500万円)の額の融資を受けているが、実際には16億4800万バーツしか引き出しておらず、さらに1億200万バーツ(約2億9500万円)が残されている。
融資契約書によればタイ政府は2009年から融資の返済を開始することになっているが、JBICは公害管理局による工事中止命令を根拠としている。同局はプロジェクトの所有者であるが、工事契約が無効で過去の支払いも間違っていたとして契約相手のNVPKSGジョイント・ベンチャーを告訴する旨通知している。この工事中止命令で工事は未完のままであり、これはJBICとの間で締結した融資契約に違反すると見なされる。そのためタイ政府に対して上記の融資額を即座に返済してもらいたいというのである。
プラパット大臣が言うには、JBICに理解を求めようと、このプロジェクトが不透明で不適切な問題を抱えながらいろいろと衝突を生み出し、もしこのまま続行すれば衝突が激化し死者や負傷者が出る流血の事態にまで発展する可能性もあることから天然資源環境省としても中止命令を出さざるを得なくなったという理由について懸命に説明を行なった。プラパット大臣は、日本政府も日本国民もそのような事態が再び発生することは歓迎しないだろうし、プロジェクトには技術的にも大きな問題があり、建設地も適切ではなく、大きな不正が発覚している以上不正に関わった人々を訴える必要もあると考えている、とした。
ところが、JBICの主席はこうした理由には耳を貸そうとせず、依然として融資の全額返済を要求し天然資源環境省の回答を求めた。これに対して同省は、回答する前に財務省や公害管理局の関係者や責任者などと協議する時間がほしいとした。
「JBICの行動は非常に不適切で責任逃れにうつる。プロジェクトに大きな問題があると知り、JBICも関わりを持っているくせに」とプラパット大臣は最後に述べた。
一方クロンダン汚水処理場プロジェクトに関わる土地の不正売買に加担した人々を訴える件の進捗状況について、ノパドン・ソンブーンサップ特別調査局局長(警察・陸軍中将)が公害管理局や犯罪防止課とこの件で話し合った後に明らかにしたところでは、調査はすでに80%程度完了している。手はじめに不正を行った約10名の人々に対して逮捕状を請求するが、これには政府関係者と民間人の双方が含まれている。
スラシット・サンカポン犯罪防止課課長(警察・陸軍少将)も、立件はほぼ完了し土地局の航空写真による情報がそろうのを待っているだけである、と語った。
来週はじめにも最初の10人に対する逮捕状の発行の承認を求める見込みである。