ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > タイ政府が日本からの融資を全額返済
日本のODAが引き起こした環境・社会問題として、2000年5月以来大きな批判を受けてきたタイのサムットプラカン汚水処理プロジェクトに関して重大な動きがありました。
タイ政府はこのプロジェクトのために日本から借りた円借款融資を、返済期限前にも関わらず全額返済したということです。プロジェクト施設が9割完成した段階で事業が中断し、ODA融資を一括返済するというのは異例の事態です。
これは本日(9月2日)、このプロジェクトの問題で質問主意書を総理大臣に提出するなど国会でこの問題を取り上げてきた中村敦夫参議院議員事務所に対して、国際協力銀行(JBIC)が明らかにしたものです。
JBICへの円借款融資全額返済によって、プロジェクト自体が完全に凍結・廃止されるのかどうかは今のところ不明です。ただ、JBICによれば、契約違反を理由にタイ政府はプロジェクト地を更地に戻して返還することを業者に求めているということで、事業の廃止に向けて事態が進んでいる可能性は強そうです。
また、日本政府からこのプロジェクトへの融資額が70億円なのに対して、アジア開発銀行(ADB)は2億3000万ドルをタイ政府に融資しました。こちらへの対応がどうなるかもカギを握りそうです。
融資の全額返済によって、今後JBIC/日本政府は本プロジェクトについて実質的には一切の関係がなくなることになります。しかしながら、こうした事態を招くきっかけとなった業者との違法な契約(注を参照)や、建設地の変更に関わるJBICの審査・監理責任がなくなったわけではありません。これについてはタイ側の動きを見ながら今後も追求する必要があります。
いずれにせよ、住民の願いは、汚水処理プロジェクトについて白紙に戻し、ニーズの調査から立地選定まで改めてやり直すことであり、今回の動きが住民の望む方向に事態を好転させるものにつながるのかどうかは、なお注意深く見守る必要があると思われます。
とりあえず速報としてお知らせします。関連情報が入り次第改めてニュースを流す予定です。プロジェクトの概要・敬意については以下のページをご覧ください。
以下は、JBICの説明資料の内容です。
国際協力銀行
本行が円借款で支援を行っている「環境保全基金支援事業」のサブプロジェクトの一つ「サムットプラカン下水処理施設建設事業(以下、本事業)」について、本年2月末、タイ政府は工事契約の無効を主張し、これを発表すると共に、工事の停止命令を発出しました。
これに対し、本行は、借款を供与している立場から、累次に亘りタイ政府の真摯な対応を求めてきましたが、7月29日、タイ政府は、本事業に対する円借款融資撤回と右に基づく自主的な期限前弁済を決定し、本行に通知してきました。本行はこれに同意し、同月31日、タイ政府より自主的な期限前弁済がなされました。(総額48億4,397万5,728円) 本行としては、将来、もしタイ政府が本件事業を再開するという決定を行った場合には、その段階での本件の状況を踏まえて、いかなる協力が可能か別途検討していく所存です。
(注) 事業を受注したジョイント・ベンチャー(J/V)のうち1社が、契約署名日(1997年8月20日)以前に(J/V)から脱退(同年7月28日)していたにも拘わらず、同社がJ/Vを構成するかのような形をとって契約していたことから、事業実施機関は同契約を無効としています。
以上