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メコン河支流のセサン川のベトナム側に建設されたヤリ滝ダムの不安定な放水によって、1999年以来、下流のカンボジアで32人が犠牲になるなど大きな被害が出ました。今も影響は続いていますが、問題解決どころか、ベトナム政府はセサン川に次々とダムを建設しています。反省する姿勢が全く見られません。
その1つセサン3ダムは、日本が最大ドナーのアジア開発銀行(ADB)が技術協力をしていましたが、2000年にベトナム政府側がADBの支援を断るという事態になりました。その原因となったADBの調査報告書(2000年作成)が最近リークされました。以下は、それに関するカナダのNGO、プローブ・インターナショナルの報道資料です。
プローブ・インターナショナル(Probe International)
報道資料
2003年9月23日
リークされたアジア開発銀行(ADB)の報告書は、ベトナム政府に対して、同国第2の水力発電ダム下流域に住む人々の安全を確保するために、重大な運用変更が必要だと忠告している。
これはオーストラリアのコンサルタント会社であるWorley社が作成した報告書で、この中でヤリ滝ダムの貯水や発電タービンの設置が、下流域の社会や居住者に受け入れ難い被害を与え、そのダムの運転体制は短期的には危険なものだったと確認した。
過去15か月間に及ぶヤリ滝ダムの余水吐(スピルウェー)の運用は、自然の川の流れを、受け入れ難く危険な放水の連続に変えてしまった、Worley報告はそう記している。
ヤリ滝ダムからの大量の水の流出は1999年と2000年に数十人の人々を殺し怪我を負わせ、ベトナムとカンボジアの数十の下流域の村々で、財産・家畜・農作物を流し去った。
ダムを所有するベトナム電力公社は、犠牲者へ何の償いもしていない。
Worley報告書はまた、ヤリ滝ダムの余水吐は大きな洪水を安全に通すには小さ過ぎ、(恐らくは1999年の大量放水によって)すでに損傷していたことをつきとめた。
環境影響について言えば、ヤリ滝ダムは次第に下流域の生産システムや生態系を破壊しており、川の近くに住む人々にとっては相当な困難を引き起こしている。
Worley報告書は、こうした損害は、ベトナム電力公社とヤリ水力発電プロジェクト管理委員会が責任を負うものと考えられるだろう、と述べている。
総工費12億ドルのヤリ滝ダムは、ADBの資金によって計画されたセサン川の一連巨大水力発電ダムの最初である。
セサン川はベトナム中部高地からカンボジア北東部に流れるメコン河の一大支流で、川沿いに住む農民や漁民集落の命の源である。
Worley報告書は、ベトナム電力公社の管理上の無責任さを批判した上で、国際的な基準を満たし、ヤリ滝ダムの安全で責任ある運転を確保するための詳細な勧告を行っている。
ベトナム電力公社に対して迅速に以下のことを実施するよう勧告した。
Worley報告書の勧告は、ヤリ滝ダムの20キロ下流に建設が進められているセサン川で2番目のセサン3ダムに対するADBの審査の一部分だった。
2億6400万ドル規模のセサン3ダムプロジェクトは、ベトナムにおけるADB初の、かつモデルとなる水力発電事業への投資だった。しかし、Worley報告書のあと、ベトナム政府はADBに対して、このプロジェクトへの支援は必要ないと伝えたということである。そして、ベトナム電力公社は代わりにロシアの資金を確保し、昨年建設を開始した。
★なお、この報道資料の原文、及びリークされたADBの報告書(セサン3ダムの環境社会分析調査)は、以下の、プローブ・インターナショナルのホームページで読むことができます。