ホーム > 資料・出版物 > タイ汚水処理 > タイ政府が工事業者を提訴へ
ADB・JBIC融資で建設されていたサムットプラカン汚水処理プロジェクトに関する最新ニュースです。工事を受注した企業体に対して、タイ政府がついに工事費用の返還を求めて訴訟を起こす見通しとなりました。
以下、この問題をフォローし続けているメコン・ウォッチの福田健治の解説と翻訳です。
このプロジェクトはADBの強い後押しでタイ政府が進めてきたものの、土地取得をめぐる汚職や環境問題から地元住民の強い反発を招き、昨年2月にタイ政府が工事中止を決めています。この直接の原因となったのが、共同企業体との契約における不正です。工事を請け負った企業体は、汚水処理場の運用を行う企業が企業体から脱退したのに、それを知らせずに契約を行ったというものです。
土地取得や契約にまつわる汚職疑惑は、政府が警察に告訴したものの調査に進展が見られません。これにしびれを切らした政府が、企業体を提訴することになりそうです。
プロジェクトへの融資を行ったJBICやADBは、環境影響について十分検討しなかっただけでなく、入札・契約についても十分にチェックできなかったことが明らかになりつつあります。契約前に精査されていれば不正は防ぐことができたかもしれません。しかし、実際には契約は締結され住民は4年にわたる反対運動を強いられることになったのです。
本件を報じるバンコクポスト紙の報道です。
Bangkok Post、2004年1月8日
Anchalee Kongrut記者
Praphat Panyachartrak自然資源環境大臣は昨日、事業費230億バーツに上るクロンダン汚水処理場について、工事を請け負った共同企業体に対して今月末までに民事訴訟を起こすことを明らかにした。
自然資源環境省公害管理局は昨年、工事を請け負っていたNVPSKG共同企業体が、代表者による契約締結の前に企業体を構成する1社が企業体から抜けていたにもかかわらず、この事実を伝えず、契約違反を犯していたと非難していた。
「本件に関してここ数ヶ月進捗が見られないため、我々は企業体に対して独自に法的責任を問うことにした」とPraphat大臣は述べた。
「市民やメディアは、本省がこの問題を野放しにしていると非難している」と彼は付け加えた。
これに先立って自然資源環境省は、同省の告訴にもかかわらず、警察と国家汚職防止委員会が汚職問題の調査を行わず犯罪者の逮捕もしていないと非難している。
Praphat大臣は、民事裁判所は契約が無効か否か判決を出すよう求められると語った。
もし契約が無効とされれば、企業体はこれまでに終わらせた工事への支払いを返還するよう求められることになる。
企業体はこれまでに、契約に基づいて実施することになっていた汚水処理場の工事の90%を完成し、合計200億バーツを受け取っている。
NVPSKG共同企業体幹部のSukree Dhirakul氏は、この問題は契約に書かれているように、調停によって解決されるべきだと主張していたと伝えられている。
提訴に踏み切ることは、12月30日の閣議決定で承認された。