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ベトナム・セサン川ダム>河川紛争をどう扱うか
メコン河開発メールニュース 2004年2月1日

メコン河最大の支流セサン川は、ベトナム中部高原(タイグエン)からカンボジア北東部を流れてメコン河に注いでいます。メコン河最下流国と言われるベトナムですが、セサン川においては、ベトナムがカンボジアの上流国です。この川に建設されたヤリ滝ダムからの放水が、下流域のカンボジアの人々の生活や環境を破壊したことはすでにこのメールニュースでも何度か報じていますし、メコン・ウォッチが発行している『フォーラムMekong』でもお伝えしている通りです。この問題が解決されていないにもかかわらず、ベトナム政府はセサン川に次々と新たなダムを建設するつもりです。

セサン川の上流・下流の問題を解決する実践的なアプローチとして、カナダの調査研究NGOのスタッフで、15年近くメコン地域の環境問題に関わってきたグラニア・ライダー氏が、カンボジアの英字紙にカナダのケースを紹介しています。

ベトナムへの最大ドナー国である日本は、問題解決や回避のため、こうした実例をベースに、ベトナム電力公社に対する政策支援をすることが重要ではないでしょうか?

河川紛争どう扱うか:カナダのモデル

プノンペンポスト:論評 2004年1月15日

グラニア・ライダー

昨年、カンボジアとベトナムの当局は、セサン川のダムをめぐる環境問題の解決を約束した。セサン川とは、ベトナムの中部高原からカンボジア北東部に流れ込むメコン河最大の支流だ。両国の当局と同様に、援助機関もまたセサン川の一連のダムが引き起こす悪影響が緩和されるかどうか注意深く見守ると宣言した。

しかしながら、そこで欠けているのは、こうした政治的な意志を現実的な結果に結びつけるための組織的なアプローチである。幸いにも、北アメリカ大陸最大の電力会社の1つである「BCハイドロ」は、発電と河川環境を良くしたいという市民の要求のバランスをとり、河川に影響を与える意思決定を現地がもっと行えるという意味で、先駆的なアプローチをとってきた。

BCハイドロは、メコン河流域国の電力会社同様に国有企業である。その主たる業務は、160万人の消費者に販売する電力を生産することである。メコン河流域国の電力会社と違うのは、BCハイドロは、川というのは「メガワット」では計れないものであり、その利用には話し合いが要求される共有資源であるということを認識している点である。電力以外の河川利用者や河川が提供する多くの生態的な能を認識している。

BCハイドロの新しい姿勢は例外的なものではない。北アメリカ中のダムを運営している電力会社は、環境面での目的を考慮するためにいかにダムの運転方法を変えるかに取り組んでいる。

『Rivers for Life: Managing Water for People and Nature』の著者であるSandra Postel氏とPian Richter氏によれば、地球全体で230以上の河川において、何らかの形で川の復元(flood restoration)が行われている。その基本的な考え方は、自然の川の流れのある部分とそっくりなように、ちょうどいいタイミングでちょうどいい量の水をダムから流すことで、生物の棲息地が再び創られ、他の生態的な機能が取り戻せるというものである。そして、ダムにせきとめられた川も、運が良ければ元通りにすることができるという良い知らせが科学者たちから寄せられている。

アメリカの研究者たちは「川を再び氾濫原とつなげば、魚類や河岸植物群は蘇るだろう」と言う。「ダムを撤去すれば、長い間離れていた種が川上に戻ってくるだろう。貯水池から激しい流れの脈動を放てば、主要な棲息地の回復が実現されるだろう」。

BCハイドロの経験は、それが公衆の参加を強調している点で、メコン河流域国に特に関係している。30ある発電施設のそれぞれで、地域住民、発電所運転会社、政府各レベルの代表者、漁業関連団体、それに環境団体からなる委員会を作り、それを通じて水利用計画を策定してきた。

それがどのように機能するか以下に見てみる。第一に、委員会は水利用計画の目的が何であるか、そしてどの運転代替案を作るべきかについてまず決定する。策定や調査が行われ、その結果が吟味されると、委員会は他の代替案を作るべきかを決定する。委員は幅広い専門性や知識を持ち合わせているので(人によっては実務面では知識がなかったり、一方では技術的な専門性について非常に高度な教育を受けていたりする)、委員はBCハイドロの専門家や情報を明確化するため独立したファシリテーターを頼りにしている。

委員会の提言に基づいて、BCハイドロは発電所幹部や運転に関わる計画担当者たちのための詳細な運転基準を準備し、それを政府の業務監視機関に提出して最終承認を得ることになる。

計画の中には、発電所運転の変更による影響を把握するための河川状況に関する広範なモニタリングや、もしマイナスの影響が生じた場合にそれを緩和するための資金が含まれている。最終的には行政委員会が設置され、そこがモニタリングや影響緩和策を監督し、異常事態に遭遇した場合の管理者としての意思決定を行うのである。

ほとんどの事例において、発電所の運転方法の変更は意見の一致(コンセンサス)によって合意され、魚の棲息地や水質、洪水抑制、それに文化的な資源の改善というように広範な便益の創出が期待されている。BCハイドロの職員が表現しているように、このプログラムは、議論の余地がある不安定な状況を、(依然として緊張関係はあるものの)生産的な協同関係に換えてきた。

このプログラムの生態面での効果を評価するにはまだ時期尚早だが、発電所の運転計画やそれに対する人々の合意を得るという点で試金石と言える。BCハイドロが、自らの発電施設における水管理を、開かれたプロセスで行ったのはこれが初めてである。BCハイドロで持続可能性を担当するマネージャーであるDarylFields氏は、このプロセスは4つの重要な原則ー全てを含んでいること、構造化されたプロセスであること、情報とデータ、そして時間という点で弾力的であることーに基づいていると言う。彼の説明では、「全てを含むこと」によって、あらゆる関係者が、他の関係者にとっての有効な社会的な必要性も鑑みた上で、自らの利害を正当化し、恐らくは折衷点を見つけることを強く求めることになる。

それぞれの集水域について、プロセスが完全に終了するのに平均で1、2年を要している。場合によっては、魚が産卵する季節はピーク時発電を少なくするように、BCハイドロが命じられることもあった。その間の売電収入を失うことを意味したのである。また別のケースでは、下流での他の優先事項と調和を取りながら、発電所が売電収入を増やすことができたものもあった。

BCハイドロの職員たちがすばやく指摘するのは、このプログラムが水利用をめぐる紛争を抑止したり減少させたりしてはいないという点である。Charlotte Bernister氏が説明するように、「このプログラムは、ブリティッシュ・コロンビア州の人々に対して、信頼でき競争に基づいた価格の電力を供給することと、重要な水資源としての優先順位を水力発電所の運転に関わる意思決定や保守業務に取り入れることとの間で、どの程度ならば受け入れられるバランスなのかを見つけるためのツール(道具)を提供している」のである。

ダムが建設された河川の管理に対して、このような実践的なアプローチを導入することは、新しいメコン河委員会事務局長(CEO)にとって、2004年の最優先の課題に違いない。

執筆したグラニア・ライダー氏は、海外援助の影響を調査するカナダの市民グループであるProbe Internationalの政策担当責任者である。

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