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メコン河開発メールニュース 2004年9月17日
配信を失念しておりましたため3か月遅れとなってしまいましたが、今年6月に起きたタイの運動家暗殺事件についてのニュースです。殺されたチャルンさんは、日本企業と国際協力銀行(旧日本輸出入銀行)が強引に推進して頓挫したプラチュアップキリカン県の石炭火力発電所に反対する運動の中心的存在でした。
以下、メコン・ウォッチの木口由香の報告です。
プラチュアップキリカン県ボーノックに建設計画のあった石炭火力発電所に反対していたチャルン・アクソンさんが6月21日、地元で暗殺されました。チャルンさんは上院社会開発人権保障委員会で地元の共有地不正取得疑惑について証言し、戻ってきたところ何者かに狙撃され、事件があったバスターミナルから病院に運ばれる途中になくなりました。
地元警察は6月29日、実行犯とされる容疑者2人を逮捕。調べに対して2人は犯行を認めており、元区長から殺害を頼まれたと供述しています。チャルン氏はガルフ・エレクトリック社が建設を請け負った発電所計画に反対していたのですが、容疑者2名は過去に同社と雇用関係にありました。
チャルンさんは最近、地元有力者が政府職員を抱き込んで53ライ(1ライは1600平方メートル)の共有地を不正に取得しようとしている事実を暴こうとしていたといいます。遺族はこの件が暗殺の直接の引き金となったと見ています。しかし、関係者らは、その根本の原因が石炭発電所建設を巡る対立と考えています。
このような背景から、環境保護運動に長年携わってきたチャルンさんが殺害されたことを重大視した上院では、社会開発人権保護、外交、環境、法務の4委員会が協力して事件の事実関係解明に当たることで合意しています。
また、この事件に関して、グリンピース東南アジアなどNGO67団体は共同で声明を発表しました。(以下の記事参照)
7月14日カオソット紙(一部分要約)
6月5日に開催された「仏暦47年(西暦2004年)環境管理委員会」委員長のトンチャイさんは、環境問題に取り組む67の団体を代表し次のようにコメントしている。「全国で環境問題に取りくみ、地元の実力者の利権と衝突していた活動家が今年になってから5名も暗殺され、そのうち3名が銃で狙撃されている。この問題を取り上げてからたった2週後、更にチャルンさんが暗殺されたのである。タイ社会は、暗黒の時代に逆戻りしているのだろうか?」
「67団体は、地域マフィアの撲滅を掲げる政府が暗殺者とその背後にいる人物を逮捕できなければ、自動的にこれらの勢力を助長させる、と考える。また政府は、全国の公共地の不正利用に対する明確な政策を打ち立て、住民が地域資源の管理に参加できるよう方向性を示すべきだ」と提言を行った。
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