ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > カンボジア > 森林 > WWFの産業植林支持に疑問
このところカンボジアの土地・森林に関わるニュースが多くなっています。以下、 違法伐採監視などで国際的に活動しているイギリスのNGOのグローバル・ウィッ トネスの報道発表をもとにした、メコン・ウォッチの後藤歩の解説と翻訳ニュー スです。
5月15日付けのメコン河開発メールニュースでもお伝えしましたとおり、現在、カンボジアでは森林セクターにおける世界銀行の関与をめぐり、現地住民が政策違反の申し立てを行い、インスペクションパネルによる本格調査が行われています。
この背景には、カンボジアに残る木材伐採権の全てに違法・破壊的な伐採の実績があり、森伐採権を持つ企業が監督されることがほとんどないにも関わらず、世界銀行が支援を継続してきたことがあります。
しかし、このような動きをよそに、国際的なNGOの世界自然保護基金(WWF)は、カンボジアでの産業伐採の開始を提言しました。WWFは最近、世界銀行とともに「2010年までに世界の森林破壊の割合を10%減らす」ことを目標として発表しています。
以下、この問題の監視に長く関わっているイギリスのNGOグローバル・ウットネスのプレスリリースです。
グローバル・ウィットネス プレスリリース
2005年5月27日
最近発表された「2010年までに世界の森林破壊の割合を10%減らす」というWWF・世界銀行の森林提携(注1)の目標は歓迎するが(注2)、カンボジアや他の国々における過去の事例を見ると、それを実行に移すだけの能力が世銀・WWF森林提携にあるのか、グローバル・ウィットネスは疑問を持っている (注3)。
グローバル・ウィットネスのPatrick Alleyは「森林保全団体が伐採企業に技術的ノウハウを提供するというのは一体どういうことなのか?貧困層に配慮するという世界銀行がなぜ貧しい人々が頼っている森林を破壊するような活動への資金提供を正当化できるのか?」と述べた。
10年間にわたって世界銀行はカンボジアにおいて森林伐採を増大し、森林に頼って暮らす人々の権利や生活、望みを害するような政策を続けた。カンボジアに残る木材伐採権の全ては、違法・破壊的伐採の長い実績がある。これらの企業が監督されることはほとんどなく、森林行政は汚職にまみれている。独立した森林モニターさえも、世界銀行によってその失敗が公に批判されている。カンボジアの森林セクターにおける世界銀行の活動は、現在内部のインスペクションパネルの調査対象となっている。
「カンボジアの産業伐採への世界銀行の支援は、この国での森林セクター改革を10年遅らせた。世銀・WWF森林提携はこの経験から教訓を得るべきだ」とグローバル・ウィットネスのJon Buckrellは言う。
しかし、2004年10月、WWFのコンサルタントは2週間の国際熱帯木材機関(ITTO)の調査ミッションに参加した(注4)。ITTOの最新のニュースレターTropical Forest Update(5)にまとめられている調査結果では、中でも産業伐採の再開が提言されている。これは、カンボジアにおける伐採システムを終わらせることを提言した、最近の独立森林セクター調査と完全に矛盾する。
「カンボジアにおける産業伐採へのWWF・ITTOの支援は信じ難い。『伐採者が問題である』ことのどの部分が彼らには理解できないのだろうか?」とAlleyは延べた。
グローバル・ウィットネスはWWFに対して、カンボジアの調査における特定の提言を撤回すること、世銀との森林提携が世界中の伐採企業を支援することを中止することを求めている。
【注】