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メコン河開発メールニュース 2006年1月15日
2005年11月に国際協力銀行(JBIC)が融資決定をした、タイのゲンコイ2複合火力発電所に関するニュースの第4弾です。
JBICが反対派住民の声を聞かずに融資を決定したことに、住民グループは怒りを強め、2005年12月9日にJBICバンコク駐在員事務所で直接抗議行動を行い、11月21日付けの抗議文を渡しました。
以下は、メコン・ウォッチの土井利幸による解説と、抗議文(原文はタイ語)の翻訳です。
タイ中部サラブリ県ゲンコイ郡に建設中のゲンコイ第2複合火力発電所(出力1468MW、国際協力銀行(JBIC)融資、電源開発(J-Power)・三井物産・みずほコーポレート銀行・東京三菱銀行が関与)に反対する現地住民組織「ゲンコイ環境保全クラブ」のメンバー約50名が、2005年12月9日、2時間をかけてサラブリ県から首都バンコクを訪れ、JBICバンコク駐在員事務所前で約2時間にわたって抗議行動を行いました。住民は、たくさんの横断幕やプラカードを掲げ、その中には、「JBICのお金が私たちを苦しめる」という日本語の横断幕も見えました。
住民は、火力発電所が地元の環境に及ぼす悪影響を心配していますが、ゲンコイ郡を流れるパサック川で大量の取水・排水が行われることから、特にこの川の水量・水質への影響に懸念を示しています。また、そうした心配・懸念に対して、事業者(ガルフパワージェネレーション社)からきちんとして説明を受けていません。ところが、こうした問題点を残したまま、JBICは2005年11月11日、この火力発電所に対する上限840億円の協調融資契約をガルフ社と結びました。このJBICの行動は、環境社会配慮をうたったJBIC自らのガイドラインに違反する疑いがもたれます。
住民の抗議行動は、こうしたJBICの行動に対するもので、抗議の一環として、11月21日付で発した融資決定への抗議書簡をJBICの担当者に直接手渡しました。以下、抗議書簡の内容を日本語訳で紹介します。
なお、ゲンコイ第2複合火力発電所の問題点については、以下のページをご覧下さい。
また、この件は、新規開設の「JBICウォッチ:政府系金融機関の統廃合に被害住民の視点を!」にも掲載されています。あわせてご覧下さい。
仏暦2548(2005)年11月21日
ゲンコイ環境保全クラブ
ゲンコイ環境保全クラブは、国際協力銀行(JBIC)に対して、ガルフパワージェネレーション社がサラブリ県ゲンコイ郡バンパー地区に建設中のゲンコイ2火力発電所への融資決定に抗議する書簡を提出します。
ゲンコイ2火力発電所は、1468メガワットの規模を持ち、発電の際に一日5万4000立方メートルの水を使用し、一日約2万9246キログラムの化学物資9種類を処理工程のないまま、一日1万4000立方メートルの温排水とともにパサック川に流し、残りの4万立方メートルの水は水蒸気となって約5平方キロメートルの地域を覆います。このため、パサック川の水量は減少し、農業用水が不足します。パサック川の水質はレベル5で、飲用には適しません(**)。また、2億6000立方フィート(***)のガスを燃焼し、補助燃料として一日720万リットルのディーゼル油を使用しますが、排気は処理のないまま大気に放出されます。以下の点を示す資料を二種類添付します。
1)ゲンコイ郡の地形は、三方が山で囲まれており、汚染した大気が他の場所に移動せずゲンコイ郡周辺を覆う。
2)ゲンコイ郡には100ヶ所以上もの工場と、生産量一日100万トンの五つの大セメント工場が、至るところに10年以上も分布しており、ゲンコイ郡全体を覆う大量のセメント粉塵が発生している。一日4万立方メートルもの水蒸気と混ざれば、25年にわたってゲンコイ郡のあちこちにセメントの海ができてしまう。
3)ゲンコイ郡では呼吸器系疾患をわずらう住民が年間2万人以上にも及び、多額の治療費がかかっている。
4)パサック川の水質はレベル5で飲用には適さない。60万人の人びとの飲料水がなくなる。
5)こうした問題に対する解決策が未だに見出されていない。まず、これらの問題にきちんと対処すべきである。
以上、融資決定に対して抗議します。
敬具
*原文はタイ語。翻訳は本文のみで、宛先住所・差出人名・添付資料は省略。
**住民が入手したデータ(サラブリ県第7環境事務所調査結果)によると、2003年3月から05年3月に県内48ヶ所で行われたパサック川の水質調査で、31ヶ所の水質がレベル5(「飲料に適さない」)と判定されている。ゲンコイ環境保全クラブの主張は、火力発電所によるパサック川のこれ以上の水質汚染は甘受できないということ。列挙されている3)や4)の論点も同様。
***1フィートは約30センチメートル。