メニューを飛ばして本文へ移動。

    English site

[メコン・ウォッチ]

ホーム | お問い合わせ | メールニュース登録 | ご支援のお願い


イベント | メコン河とは? | 活動紹介 | 追跡事業一覧 | 資料・出版物 | ギャラリー | メコン・ウォッチについて

ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ・ゲンコイ第2複合火力発電所>住民がJBIC前で抗議行動2

タイ・ゲンコイ火発>住民がJBIC前で抗議行動2

メコン河開発メールニュース 2006年1月17日

2005年11月に国際協力銀行(JBIC)が融資決定をした、タイのゲンコイ2複合火力発電所(1468MW=建設中)に関するニュースの第6弾です。

JBICが反対派住民の声を聞かずに融資を決定したことに憤慨した住民グループは、2005年12月9日、日本語の横断幕を掲げて、JBICバンコク駐在員事務所前で抗議行動を行いました。

JBICが上限840億円もの融資をするのは、事業に日本企業が関係しているからです。このプロジェクトには電源開発(J-Power)と三井物産が建設に関与し、みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が協調融資をしています。いずれも大企業ばかりです。現在大きな政治課題となっている政府系金融機関改革で批判の対象となっているように、民だけでできることに官が入っているとの印象はぬぐえません。

以下は、メコン・ウォッチの土井利幸(バンコク駐在)による、抗議行動に関する解説と現地NGOの報告の抄訳版です。


2005年11月11日のJBICの融資決定に対して、発電所建設に反対する地元住民組織「ゲンコイ環境保全クラブ」が12月9日、JBICバンコク事務所前で抗議行動を行ったことは、すでに先のメールニュースでお伝えしましたが、今回のメールニュースでは、抗議行動の様子をさらに詳しく、タイのNGOが管理・運営するウェブサイト「ThaiNGO.org」に掲載された報告の日本語要約で紹介します。とりわけ、抗議行動当日の住民代表の発言が詳しく報告されています。

この住民代表も指摘している通り、この発電所には、激しい反対運動のために当初の予定地(タイ南部プラチュアップキリカン県ボーノーク)での建設を断念したという前史があります。その時にも、JBICの関与に批判の声があがりました。現地住民から、再びこのような抗議行動を受けるとは、いったいどういうことなのでしょうか。しかも、JBICには、ボーノーク時代よりも進んだ新環境社会ガイドラインがあります。ゲンコイ第2発電所の環境社会配慮は、新ガイドラインにしたがってきちんと確認されたのでしょうか。

私たちは、今度ともJBICに対して、こうした問いかけを行っていくつもりです。

ゲンコイ保全クラブ、JBICの融資承認に対して抗議書簡を手渡す(*)

アティチャイ・シリ

ThaiNGO.org:草の根オルタナティブ通信2005年12月14日(要約)

2005年12月9日、バンコク市内ラチャダムリ通りにある国際協力銀行(JBIC)事務所前に、タイ中部サラブリ県ゲンコイ郡で活動する「ゲンコイ環境保全クラブ」のメンバー約50名が、バスをチャーターして乗りつけ、JBICのガルフパワージェネレーション社への融資決定に対する抗議書簡を手渡した。この融資は、ゲンコイ郡バンパー地区にゲンコイ第2天然ガス火力発電所を建設するためのものである。保全クラブはまた、灌漑局から入手したパサックダム(**)の水利用規定を説明する書類も提出した。保全クラブによると、ガルフ社は水利用申請を手続きに従って行っておらず、灌漑局も大量の水使用であるため申請を厳密に審査する必要があると明言している。つまり、水利用の許可はまだ下りていないとのことである。

また、保全クラブは、調査がされていても十分に議論されておらず、住民にもあまり知らされていない点として、ゲンコイ2火力発電所が出力1468メガワットの巨大発電所で、冷却に一日5万4000立方メートルもの水を使用し、使用後の温排水をパサック川に流すこと、また、9種類にのぼる化学物質を一日合計2万9246キログラムもパサック川に流すことをあげた。

発電所が出す水蒸気は5キロ平方メートルの範囲に及び、天然ガス燃焼時に出る気体も一日2億6000万立方メートル(720万リットル)に達する。大気中には、ゲンコイ郡にすでに存在する100ヶ所もの工場や日産100万トンの5ヶ所のセメント工場が出す有毒な気体や粉塵も漂っている。セメントの粉塵が、もし火力発電所から出る水蒸気と混ざれば、セメントの海や酸性雨となり、すでに危機的な状態にあるパサック川に流れ込む。

パサック川の水質はレベル5で、飲用には不適切な点が調査でも裏付けられている。(これ以上汚染が進行すれば)パサック川に依存する60万人以上もの人びとが、水不足に見舞われる。ゲンコイ郡では、年間2万人もの住民に呼吸器系疾患が現れているが、これはゲンコイ郡の地形が三方を山に囲まれた盆地で、そのため大気の貫流が妨げられ、住民の健康に影響を及ぼしている。さらに深刻な問題として、将来的にはパサック川をめぐる「水の争奪戦」に発展しかねない。

その場にいた住民リーダーの一人は、激しい口調で以下のように語った。

「発電所を建設する者たちは、私たちを取るに足らないものとして無視しようとしている。だから、ここに来て、ひとこと言いたかった。私たちは苦しんでいる。それを理解してほしい。

「JBICは金を貸し、利子を取ることが目的なのかも知れないが、ひとこと言いたい。現地に行って住民にきいてみるがいい。住民がどんな被害を受けているか見てみるがいい。この火力発電所は、もともとボーノークに建設されるはずだった。しかし、ボーノークには海もあり、地元住民が猛反対した。結局、ボーノークよりも巨大な1468メガワットの火力発電所が、私たちのところにやってきた(***)」。

「私たちの土地や家は、火力発電所の目と鼻の先にある。ガスパイプラインも敷設されようとしている。私たちは、タイ南部でガスパイプライン敷設に反対する兄弟姉妹たちと同じ立場におかれている(****)。私たちもタイ南部の兄弟姉妹たちのように闘っていく」。

「強大な力を持っているあなたちに、ひとこと言ってやりたい。私たちは、火力発電所など絶対に要らない。この国には電気が余っている。融資をするあなたたち、建設を承認するあなたたち、私たちは苦しんでいるのだ」。

「私たちは今日、書簡と資料を携えてここにやってきた。ゲンコイの住民がどんな目に遭うかを知ってもらうためである。パサック川は住民が行事を行う大切な川だが、最近では水が不足している。この上、火力発電所が一日5万4000立方メートルもの水を使ったのでは、問題はますます大きくなる。一日1万4000立方メートルにおよぶ排水には、ニッケルや亜鉛などの重金属も含まれている。農業に必要な水も、発電所の排水口に近いところでは化学物質で汚染されるので使えない」。

「今日ここに来たのは、JBICに環境影響評価(EIA)を再検討してもらうためだ。住民がどのような被害に遭って苦しんでいるかを知ってもらい、タイ人が持つ日本のイメージが損なわれないようにしてもらうためだ。JBICには融資を見直してほしい。そして、私は死ぬまで闘う」。

保全クラブは、JBICに書簡と資料を手渡し、ぜひ現地に来て調査をしてほしいと要請した。JBICの担当者は、「私は代表としてここに来ているだけで、今ここで中止する、しないの回答はできない。中止の決定には様々な手続きを踏み、総意として結論を出さなければいけないからだ」と答えた。

また、JBICの担当者は、保全クラブに対して、JBICには、もしプロジェクトが住民の権利を侵害するようなことがあれば、融資を中止するといった趣旨の原則があること、提出してもらった書簡に関して進展があれば連絡することを明言した。

【訳注】

*原文はタイ語。

**ゲンコイ郡を流れるパサック川上流にあるダム。ゲンコイ2火力発電所の運転に必要な取水・排水はパサック川で行われる。

***当初、タイ南部プラチュアップキリカン県ボーノークに石炭火力発電所として建設が計画されたが、現地での激しい反対運動に加えてタイ政府のエネルギー政策の見直しもあり、ボーノークでの建設が断念された。1468MWの規模で計画されたが、当時確定していたのは、734MWだった。ボーノーク火力発電所については、メコン・ウォッチ・ファクトシート:タイの2つの火力発電所計画と国際協力銀行を参照。

****タイ南部ソンクラー県に建設されたタイとマレーシアを結ぶガスパイプライン。04年に完成し、05年から稼動しているが、地元の反対運動は続いている。

このページの先頭へ

サイトマップ
特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F(地図
電話:03-3832-5034 Fax:03-3832-5039 
info@mekongwatch.org
© Mekong Watch. All rights reserved.