ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ発電公社民営化>民営化関連の政令は違法
メコン河開発メールニュース 2006年3月29日
ラオスやビルマにおける巨大水力発電ダム開発の牽引者となっているタイ発電公社(EGAT)の民営化問題の続報です。最高行政裁判所が、民営化のための政令は違法だとする判決を出しました。
EGATの民営化は、過去のダムや火力発電所が引き起こした被害や環境破壊に対する公的な責任を放棄することにつながると反対してきたタイの市民グループや研究者は、民営化を事実上白紙に戻す一連の司法判断を歓迎しています。
以下、メコン・ウォッチの木口由香の解説とタイ字新聞の報道をまとめたニュースです。
2005年11月15日、翌日に予定されていたEGATの株式購入予約が、最高行政裁判所の命令で無期延期となったことは以前お伝えしました。
タイ消費者連盟と11人の代表の首相らに対する提訴を受けてのもので、公社を解散し民営化するための2つの政令(タイ語でphraratcha kritsadika、勅諭と訳す場合もある。法で定められた特殊な場合において、国会ではなく内閣が制定し、国王が署名した法)が憲法に抵触しており、民営化の根拠となるこの政令を廃止すべき、と訴えたためです。このとき、裁判所は審議を行うために株式の予約・販売を無期延期とする命令を出しました。
今回、2006年3月24日に最高行政裁判所が出した判決では、2つの政令が違憲かどうかの判断は避けたものの、法律に違反していると結論付けました。
以下はマネージャー紙の2006年3月23日の報道からのまとめです。
1999年に施行された公社資産法では、民営化を段階ごとに進めるための委員を選定することと定められていました。政府は委員の一人にオラート・チャイプラワット氏を任命していましたが、氏は首相が実質の経営者であった通信大手シン・コーポレーション社のボードメンバーで同じく系列の携帯電話事業を行うアドヴァンス・インフォ社の主要株主でした。EGATは最近になって通信関係の子会社を立ち上げましたが、これは、EGATの資産である光ファイバー網を活用したものでした。これは、EGATの民営化と氏の個人的な営利活動が非常に密接な関係を持つことを意味します。それだけでなく、氏は最近民営化されたばかりのタイペトロリアム社(PTT)のボードメンバーでもあります。PTTは、天然ガスが発電の主流を占めるタイにおいて、EGATに天然ガスを販売する立場にあります。このようなことから、氏が委員としてふさわしい中立な立場の人物であるという要素を著しく欠いている、ということが指摘されました。これは、1996年施行の公務員関連の法律に違反している、という判断です。
また、違法と判断された政令には、公的機関には認められている土地収用の権限が明確に定められていません。民間会社となったEGATは送電線を引く際の土地収用や建物の取り壊しの権限が明確ではないわけです。
その上、1968年に定められたEGAT関連法や憲法では、公共の利益のため民間の土地の上に送電線などの設置を認めています。判決では、バンパコン・タンボン行政区のガス分離施設と送電線がこのように設置されており、これを民間会社であるEGATに移譲するのは民商法(日本の民法と商法はタイでは一つ)など複数の条項に違反するとのことです。
最高行政裁判所は、これらのほかにもいくつかの違反を指摘、3月24日をもって、EGAT民営化に関する2つの政令を違法であると判断し、その取り消しを命じました。