ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ベトナム・アーヴォン水力発電ダム>こんなひどい事業にJBICは融資するのか?
メコン河開発メールニュース 2006年5月10日
日本の国際協力銀行(JBIC)が、ベトナムでとんでもないダムに融資を検討しています。
ベトナム中部のクアンナム省に建設が進められているアーヴォン水力発電ダムは、なんとベトナム政府が環境アセスメント報告書を作成・承認する1年も前に着工されました。環境アセスメントは『事前に』影響を予測・評価し、代替案や緩和策を検討するものですので、着工後に作成・承認されたものを環境アセスメントと呼ぶことはできないはずです。
当然、JBICが環境社会配慮ガイドラインで定めているような事前の環境アセスメ ント報告書の公開はおろか、住民との事前の協議すら行われていません。
このダムによって、330世帯の住民(主に少数民族のカトゥ族)が立ち退きを余儀なくされます。再定住先は、土壌のよくない農業に不適な狭い斜面で、放牧地も十分用意されていません。JBICが環境社会配慮ガイドラインで要件としてあげている「移転前の生活水準の回復」は困難だと考えられます。再定住地の問題は、共産党系の現地の新聞でもたびたび報道されているほか、アジア開発銀行(ADB)からも厳しく指摘されています。
環境アセスメント報告書によれば、20世紀に「発見された」数少ない大型哺乳動物のサオラ(Vu Quang Ox)の目撃記録があるなど、周辺地域は豊かな自然環境に恵まれています。しかし、それに対する影響緩和策は環境アセスメント報告書に含まれていません。アーヴォン川は発電のために転流されるため、ダムの下流13kmは水が流れない『死の川』になってしまいます。
これほど多くの問題を抱えていながら、日本の国際協力銀行(JBIC)は、このダムへの融資を検討しています。現状ではJBICの環境社会配慮ガイドラインを満たしているとはとても考えられません。もしJBICがこのような事業への融資を決めれば、様々なステークホルダーが2年近くかけて策定に尽力した環境社会配慮ガイドラインが空文化することになるでしょう。
メコン・ウォッチはアーヴォン水力発電ダムの問題点と、JBICの環境社会配慮ガイドラインと照らし合わせた疑問点をホームページにまとめました。
JBICの良識ある判断を促すためにも、多くの方々にこの事業の問題点に目を向けて頂き、JBICに対して融資を思いとどまるように働きかけをお願いします。