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アーヴォン水力発電ダム

アーヴォン水力発電ダム事業は、ベトナム中部のクアンナム省で進められています。事業地周辺は、20世紀に初めて確認されたサオラ(ベトナム・レイヨウ)等の希少動物も見つかっている山岳森林地帯で、多くの自然林が残されています。

本事業の環境アセスメント報告書(EIA)が承認されたのは、着工後1年もたってからのことでした。これでは環境アセスメントと言えません。ベトナムの国内法にも抵触し、国際協力銀行(JBIC)の環境社会配慮ガイドラインにも反していると考えられます。

また、ダムで川をせき止めたあと、発電所までの十数kmはいっさい水が流れない設計になっています。生態系への影響を最小化するため国際的には常識となっている「維持流量」すら考えていません。

更に、本事業によって330世帯(約1,600人)の少数民族が立ち退きを強いられています。3か所の再定住地が建設されていますが、割り当てられる農地が狭くて耕作不可能である、斜面の多い不利な地形である等の懸念があがっています。

環境アセスメントの手続き上の致命的な問題、自然・社会環境面での深刻な悪影響を抱えているにもかかわらず、JBICは本事業への融資を前向きに検討しています。

プロジェクト名
アーヴォン水力発電所建設事業(A Vuong Hydropower Project)
所在地
ベトナム・クアンナム省 ドンザン県(旧ヒエン県)
実施機関
ベトナム電力(EVN)第3水力管理班(PMU3)。
日本企業の関与
住友商事がPower Machinesと企業連合体を作りターンキー契約で落札。住友商事は発電機(105MW×2)を受注。
資金供与
ベトナム投資開発銀行が1兆7000億ドン(約122億円)を融資決定。日本の国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中。
状況
2003年8月に着工。その1年後の2004年8月にベトナム天然資源環境省が環境アセスメント報告書(EIA)を承認。2008年完成予定。

アーヴォン水力発電ダム建設事業とは

アーヴォン水力発電ダム所在地

ベトナム中部のクアンナム省に建設中の210MWの水力発電用ダムです。総事業費は2億5000万ドル。ブン川支流のアーヴォン川に、高さ84mのダムを建設。ここから取水して、アーヴォン川とブン川の合流点の下流に建設する発電所まで導水するという事業です。導水菅の長さは5.3km、ダム貯水池の湛水面積は約9平方キロ(909ヘクタール)です。

本事業は、大規模水力発電事業であり、影響を及ぼしやすい地域に立地する(自然林、及び非自発的住民移転の発生)ことから、JBICの環境社会配慮ガイドライン上、カテゴリAに分類されます。

アーヴォン水力発電ダム周辺の森林被覆

周辺には自然林が広がり、環境アセスメント報告(EIA)によれば、20世紀に「発見された」大型哺乳動物のサオラ(ベトナム・レイヨウ)が確認されたとの記録もあり、野生生物の宝庫です。

(地図出典:ADB TA 4475-VIE: PPTA Phase Iをもとに作成)

環境アセスメント報告(EIA)承認前に着工!!

EIAが作成されたのは2004年3月で、天然資源環境省の許認可の日付は2004年8月です。しかし、工事が始まったのはその1年も前の2003年8月、すなわち、本事業はEIAの作成・承認前に着工されたことになります。環境アセスメントの定義は「事前に予測と評価を行う」(島津康男『環境アセスメント』NHKブックス)ことを考えれば、これは環境アセスメントと認められません。事業の環境影響を前もって調査・評価・予測・緩和策を検討し、回避・緩和・代償するというEIAの目的をないがしろにしています。

ベトナム国内手続き(環境保護法、同施行令など)に抵触しているばかりか、日本の国際協力銀行(JBIC)の環境社会配慮ガイドラインを遵守しているとは言えません。JBICの環境社会配慮ガイドラインには以下のような既述があります。

プロジェクトを実施するにあたっては、その計画段階で、プロジェクトがもたらす環境への影響について、できる限り早期から、調査・検討を行い、これを回避・最小化するような代替案や緩和策を検討し、その結果をプロジェクト計画に反映しなければならない。

アーヴォン水力発電ダム事業のEIAにおいて、どのような分析がなされ、どのような勧告がおこなわれようとも、あるいはEIAの公開・協議中にどのような意見が寄せられようとも、建設が始まっていれば、事業にそれらの懸念を十分反映することはできません。何よりも、「事業を実施しない」という選択肢を含めた、適切な代替案の検討を行うことは不可能です。

例えば、EIAにおいては、「河川生態系の維持のためには毎秒4.16立方メートルの放流が必要」としています。しかし、下流に放水しない設計で着工してしまった以上、EIAに書かれた勧告は何の役にも立ちません。あるいは、下流において漁業を生計の足しにしている人々にとっては、河川生態系の破壊は死活問題につながりますが、この人たちがEIAを通じて事業が自分たちの生活に及ぼす影響を知り、意見表明をしても対策を取ることはできません。本事業のような大規模事業において、こうしたEIA手続き上の問題は、環境社会配慮の上で大きなリスクを伴います。

緩和策が皆無−希少な生物種への影響

EIAによれば、この地域の植生は主として自然林であり、森林被覆率は43%、植物種は1,200種、動物種は367種を数えます。また、EIAには49種の希少植物、58種の希少動物が記載されています。20世紀に「発見された」大型哺乳動物のサオラ(ベトナム・レイヨウ)、ヒマラヤグマ、クロテナガザル、オオマメジカ、ブチリンサン、ホエジカなどが記録されており、当該地域が保護価値の高い、生物多様性に富む地域であることがわかります。また、記載されている種は多くがIUCNのレッドリスト及びベトナム・レッドデータブック記載種であり、国内的にも国際的にも保護が求められる種です。

しかし本事業においては、これらの種及び生存する森林生態系への影響の回避・緩和策が計画されていません。さらに、回遊性の魚類がいるのにも関わらず、ダムの建設による河川の分断、断水域の出現などによる水生生物への影響評価、緩和策の検討が行われていません。

下流域は「死の川」になる

アーヴォン水力発電ダムとソンブン4水力発電ダムの位置関係
アーヴォンとソンブン4の両水力発電事業の位置関係

ダムの下流域の生態系を守るために必要な流量(いわゆる維持流量)が確保されていないため、EIAには、ダムから発電所までの13kmは乾季には水が流れない「死の川」と化すと記されています。

また、ダム建設に伴う土砂や栄養分のせき止めにより、下流域において河岸や河床の浸食、堆積土砂の減少、生態系への悪影響、農地の生産力の低下などが指摘されています。EIAにおいて他の水力発電事業についての経験値が記述されていますが、それによれば下流への土砂供給は90-95%減少しています。

さらに、ブン川においては、現在、高さ120mのダムの建設が計画されており(ソンブン4水力発電所建設事業)、アジア開発銀行(ADB)が技術支援を行っています。周辺の自然環境、河川生態系、下流域の水量変化などに関する、両事業の累積的影響は避けられません。しかし、アーヴォン水力発電ダム事業では、累積的影響は全く考慮されていません。

少数民族の受難:狭い家屋、狭い再定住地、過酷な環境、事故や土砂災害の危機も
ADBや現地新聞報道も強い懸念を表明!!

アーヴォン水力発電ダム再定住地

本事業に伴い、330世帯(1,572人)の住民が移転を強いられ、その大半がカトゥ族と呼ばれる山岳少数民族です。本事業実施により、これらの住民は3箇所の再定住地に移転させられますが、再定住地の劣悪な環境への懸念が報告されています。

例えば、現地を訪れたADBのコンサルタントは以下のように報告しています。

現地の新聞の報道では、再定住地の周辺は急峻な崖があり、雨による土砂災害が心配されること、再定住地の農地は耕作ができない状態であること、再定住地において、汚水管の水漏れなどがあることなどが指摘されており、地方政府からも強い懸念の声が生じています。

下記は現地新聞報道の例です。


JBICは環境社会配慮ガイドラインを守るつもりなのか?:12の疑問

このように本事業には、多くの問題点があります。JBICの環境社会配慮ガイドラインに従えば、以下の12の疑問から、到底、JBICが融資できるとは考えられません。

プロジェクトは、プロジェクトの実施地における政府が定めている環境社会配慮に関する法令、基準を遵守しなければならない。

疑問1:EIAの作成・承認が着工の1年後だったことはこれに抵触しないのか?

プロジェクトを実施するにあたっては、その計画段階で、プロジェクトがもたらす環境への影響について、できる限り早期から、調査・検討を行い、これを回避・最小化するような代替案や緩和策を検討し、その結果をプロジェクト計画に反映しなければならない。

疑問2:EIA承認の1年前に着工している以上、計画段階で代替案や緩和策を検討し、プロジェクト計画に反映することは不可能ではないか?

疑問3:EIAにおいて周辺地域に生息するとされている、サオラ(ベトナム・レイヨウ)、ヒマラヤグマ、クロテナガザル、オオマメジカ、ブチリンサン、ホエジカなどの野生生物への影響緩和策がない。

疑問4:回遊性魚種への影響緩和策がない。

疑問5:EIAにおいて「河川生態系の維持のためには毎秒4.16立方メートルの放流が必要」としているのに下流へ維持流量を放水しないこととなっているのは、JBICガイドラインのこの規定を満たしていない。

疑問6:土砂がせき止められることによる影響を評価・緩和していない。

環境アセスメント報告書の作成に当たり、事前に十分な情報が公開されたうえで、地域住民等のステークホルダーと協議が行われ、協議記録等が作成されていなければならない。

疑問7:EIA完成前に着工していること、またEIAの中に協議記録がないことなどから、事前に十分な情報を公開して協議を行ったとは考えにくい。

環境アセスメント報告書には以下の項目が含まれるべきである(中略)代替案の分析 ― プロジェクトの立地、技術、設計、運営についての有効な代替案(「プロジェクトを実施しない」案を含む)を、それぞれの代替案が環境に与えうる影響、その影響の緩和可能性、初期及び経常経費、地域状況への適合性、及び必要となる制度整備・研修・モニタリングの観点から、系統的に比較する。

疑問8:EIAには、JBIC環境社会配慮ガイドラインに定められたような代替案分析が含まれていない。

プロジェクト実施主体者等は、移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善または少なくとも回復できるように努めなければならない。

疑問9:再定住地に、十分な広さと農業適地がなく、また十分な居住空間が確保されていない。

疑問10:再定住地は、急斜面に位置し、事故・災害の危険がある。

疑問11:移転対象住民の生活様式に欠かせない放牧のスペースが再定住地には十分ない。

調査・検討すべき影響は(中略)合理的と考えられる範囲内で、派生的・二次的な影響、累積的影響も含む。

疑問12:ブン川へのソンブン4水力発電事業との累積的影響を検討していない。

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