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メコン電力網>雲南からの視点1

メコン河開発メールニュース 2006年5月18日

30年近く前、社会主義の兄弟げんかと呼ばれた中越紛争で戦った中国とベトナムは、今日では国際的な電力網を通じて経済関係を強めています。

中国の送電網会社が、雲南などで少数民族の暮らしを脅かして建設された水力発電ダムからの電力を安く買い、ベトナムに高く売っています。一時電力不足が大きな社会問題となった中国では、まもなく供給過剰が予測され、その行き先としてベトナムを始めとする東南アジアに白羽の矢が立っています。

メコン河流域国の巨大ダムなどの電源開発に伴う問題は、ますます一国だけでは考えられなくなっています。

以下、メコン・ウォッチの大澤香織による翻訳記事です。

南方電網、ベトナムに売電 電力供給過剰のきざし

2006年3月19日、経済観察報

ビジネスに国境はない。電力も同じだ。中国の「電力不足」は解決されていないものの、2大国有電力網会社のひとつ南方電網公司【訳注1】はすでに東南アジア隣国に電力を売り始めている。これらの国は中国の正式な電力振興市場となる。

3月、南方電網公司とベトナム国家電力公司は中越間の主要高レベル電力ルート――220キロボルトの中越電力網連結プロジェクトの協議を結んだ。これは現在、中国最大の国外送電事業だ。このルートは2006年10月に開通し、南方電力網は毎年13億キロワット時の電力量を送電する。契約金は総額約5億米ドルだ。

南方電力網は2006年中に中越500キロボルトの送電網事業を初め、BOT(建設―運営―移譲)方式によりベトナム宜山で、3期2×600メガワットの火力発電事業に着手する。

また南方電網とラオス、ビルマ、タイなどとの電力協力プロジェクトも動き始めており、中国ーベトナム間の「送電網送電+発電所建設」協力モデルはこれらの国においても大規模な実施が考えられる。電力は、水、陸、空の交通網整備後、まさに中国と東南アジア諸国を結びつける「第4のルート」となりつつある。

ベトナムへの売電

南方電網によるベトナム電力市場発掘の歩みは2年前に始まった。

2004年3月、中国の大メコン圏(GMS)電力協力部門参加にあたり南方電網とベトナム国家電力会社は全面的協力にむけ協議をした。2004年9月から、南方電網は雲南の河口からベトナムのラオカイ、雲南の文山からベトナムのハザン、広西の東興からベトナム広寧ラオカイという3本の110キロボルト送電ルートを開通した。

『ベトナム経済時報』報道では3本のルートを通じ、南方電網からベトナムへの売電は累計4億4500キロワット時で、2000万米ドル以上の利益をあげたという。

エネルギー源専門家である北京長貿コンサルティング社長の紹介によると、近年ベトナム経済は外国からの投資で急速に発展、電力需要も急増している。しかし長年にわたる戦争でベトナムの発電所内部のインフラ施設はたいへん弱く、発電 、送電技術も未発達で、電力供給に大きな不足が生じている。こうした背景のもとベトナムは近隣の中国から直接電力を買い、電力の偏りを打破する方策のひとつとしており中越電力協力プロジェクトも、ここから生まれた。

プロジェクトは政治的色彩を強く帯びているが、中国政府が権利を与えた具体的執行単位である南方電網自身も、期待通りの利益を得ることができる。ベトナムから中国に売電をする際の電力価格は初め4.3米セント/キロワット時だが現在では4.5米セント/キロワット時で、中国エネルギー網執行副総裁情報総監督によると、この値段は国内の一部の売電価格よりも高い。南方電網のベトナム向け電力は雲南、広西の水力発電からきており、南方電網が、多数の水力発電所から電力を買った場合、キロワット時あたりの電力価格はわずか数分元【訳注2】であった。

味をしめた南方電網は、将来さらなる電力をベトナムに売るつもりだ。中越の220キロボルトの電力事業は今年10月の送電開始後、毎年ベトナムに向けて13億キロワット時を売る。その後、南方電網はさらに中越の2本の220キロボルト送電ルートを建設し2007年4月30日から送電を開始する。送電期限は10年の予定だ。

また南方電網はすでに中越500キロボルトの電力網事業の準備作業を始め、ベトナムにおける火力発電所と水力発電所建設に着手している。投資総額は10億元【訳注3】に上る。

電力過剰供給に対応

経済的追求の他、南方電網は次々にベトナムやその他東南アジア諸国に投資しており、さらに多くの計画がある。

現在、業界では2006年の中国電力市場の急増を見越している。連続数年にわたる大規模な発電所建設が国内の電力供給を急増させ、電力増加の需給幅は国のマク ロ調整によるコントロールによって徐々に落ち着いている。2002年の深刻な電力不足は2006年には大幅に緩和された。さらに専門家の予測では2006年から中国の電力市場は5年ほどの深刻な供給過剰になると見られている。

「電力需給の情況は逆転している。電力網会社であろうと発電会社であろうと、余剰電力を売る先について考えなくてはならない」中国電力企業連合専門家コンサルタントのひとりはそう語る。

南方電網のデータによれば、今年、南方電網の供給により「上半期は需給バランスが逼迫するものの、下半期にこれは緩和される」という。広西における通年平均電力不足の他、さらに各省の供給情況は昨年に比べ今年は好転した。全電力網の上半期の電力需給は依然として需要過剰で、最大で供給不足は5400メガワットに上る。下半期の需給形勢は徐々に緩和し、それぞれの地域で過剰が生じている。

中越220キロボルトの送電線により送電が開始されるのは今年10月1日でこの頃には南方電網の電力も余りがでる。この過剰電力はベトナムへの送電にまわされる 。

「南方電網は電力が不足時にベトナムを含む東南アジア著国および香港、アモイへの送電に着手したが、これも未来の電力供給過剰の解決策である」。中国エネルギー網の情報によれば、東南アジアの隣国はここ数年、絶え間なく電力不足に悩まされ、中国からの電力移転に巨大な空間を提供している。

また南方電網が東南アジア市場に開拓するのは、この企業の国際資本市場上陸の敷設だという見方もある。現在、南方電網は海外での上場の準備をしており、東南アジア電力市場によって足場を固めた後、南方電網の市場価値とリスクヘッジ 能力は上昇し、上昇の際さらに多くの資金を集めるのに役立ち、「国内トップ、 国際的に著名に」というこの企業の青写真が実現可能となる。

 

【訳注1】南方電網(Southern Power Grid Co.) 2002年
12月に民営化の流れのなかで設立された中国の二大電力網会社のひとつ。

【訳注2】分は貨幣の単位で1元の100分の一。

【訳注3】10億元はおよそ140億円。

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