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メコン河開発メールニュース 2006年10月25日
タイのサムットプラカン県汚水処理場は、アジア開発銀行(ADB)の融資と日本の円借款ODAを受けて建設されたものの、95パーセント完成した2003年2月から、汚職とプロジェクトの不備により建設が中断されています。タクシン政権がクーデターによって追放された今、この案件をめぐって新たな汚職が指摘されています。
以下、メコン・ウォッチの木口由香による解説とタイ字新聞の翻訳記事です。
このプロジェクトはADBの強い後押しでタイ政府が進めてきたものの、土地取得をめぐる汚職や環境問題から地元住民の強い反発を招き、2003年2月にタイ政府が工事中止を決めています。中止決定の直接の原因となったのが、共同企業体との契約における不正です。工事を請け負った企業体は、汚水処理場の運用を行う企業が企業体から脱退したのに、それを知らせずに契約を行っていました。
しかし、数年たった今も法的な手続きによって不正が明らかになるどころ、未だにプロジェクトを推進する動きがあることが住民らの調査で明らかとなりました。プロジェクトへの融資を行った日本の国際協力銀行(JBIC)やADBは、環境影響について十分検討しなかっただけでなく、入札・契約についても十分にチェックすることができませんでした。そのため、住民は未だにこのプロジェクトへの不安を抱えたままの生活を強いられています。住民代表のダワン・チャンタラハッサディさんは、「住民は、裁判を続けて不正を明らかにすること、また施設を水産試験場などに転用することを求めている」と話しています。
以下は住民グループらが10月8日に行った記者会見を報じたタイ字新聞の記事を翻訳したものです。
この問題については、以下のメコン・ウォッチのWebサイトをご覧ください。
サムットプラカン汚水処理プロジェクト
マティチョン紙 2006年10月9日
10月8日タイ記者クラブで、クロンダン地域保全グループ(ダワン・チャンタラハサディ住民代表)とサムットプラカン県のクロンダン汚水処理場建設にまつわる汚職問題を追跡してきた研究者グループ(スッカラーン・ローンヂョンパイウォン代表)が、タクシン第1・2政権における汚職の重複の調査について新しい問題点を提示した。
スッカラーン氏は、次のように語った。
「プロジェクトが始まってから、数多くの政治家、官僚が汚職に関わったことが明らかとなった。その上、最新の情報によると、別の方法で汚職が起こっているとみられる。タクシン政権は当初、この問題に真剣に取り組むそぶりを見せていた。だが、全く(汚職取締りに)進展はなかったうえに、次の2点から、汚職調査において再び汚職が起きていると推測される」。
「1.スウィット・クンキティ氏が天然資源環境相に就任した後、公害管理局に対し6500万バーツの予算を許可し、公害管理局はブレクエンウィット・タイインフラストラクチャー社、プログレス・テクノロジー・コンサルタント社と契約して工事後の価格とオルタナティブを検討させていた。2005年3月に最終報告がまとめられ、施設を有効活用するために事業を推進することがベストという結果が出されている」。
「2.第2次タクシン政権時、このプロジェクトに関して政治的な動きがあった可能性がある。なぜなら、特別捜査局(DSI)の報告でこの汚職に関わっていた疑いが示されているスワット・リップパンロップ氏が、法務大臣として復帰したからである。これにより、汚職撲滅と反する動きがあった。2005年9月に民間から(局が)施設を受け継ぐためとして、同じ会社に更に10の点について調査依頼がなされているのである。その後、2005年10月にはアピチャイ・チュアチャルーンパン公害管理局長からサムットプラカン県知事に対し、クロンダンの事業に利用するため運河の公共地指定を解除し、チャノート(土地権利書)を発行するように依頼する文書が出されている【訳注:事業の問題が明らかになった後、不正に発行されていたと見られる事業地の土地権は取り消されていた】。問題のある土地ころがしとしてチャノートが取り消された場所を、前と同じように利用することが可能なのか疑わしい。この決断は、閣議も経ていないのである」。
またスッカラーン氏は、「公害管理局長は、2006年10月1日だった調停の審理を延期するよう要請した【訳注:民間企業が公害管理局を訴えている裁判】。その5日後に調査を請け負っていた民間会社は、公害管理局に対し8つの提言をしている。重要な点は、すでに建設の終わった施設を公害管理局に移管し、チャノートの取り消された土地の有効利用のための法の制定を提言していることだ。これは、公害管理局がすでに実施していることと重なっている。最高検察官は、公害管理局に対し、この交渉は多くの部署に関わり非常に大きなものなので政府レベルでの決定を求めるべきだと提言している。しかし、今になってもこの件は閣議にかかっていない。9月6日、モンティップ・シラタナーターブーガノン公害管理局臨時局長は、調停法廷での証言延期を求め、11月1日までの延期が許可された。一方、公害管理局が民間会社の19名を訴えている刑事事件でモンティップ氏は、9月28日に弁護人の変更と審理の6ヶ月延期という2点を要請している。これでは遅れていた審議が止められたも同然だ」と述べた。
(住民代表の)ダワン氏は、「モンティップ氏が刑事事件において、弁護人の変更と審理の延期を求めているが、彼女は臨時局長である。どのような権限でこれを行っているのか?はっきり言って、グルなのか誰が駒を配置して仕組んでいるのか聞きたい。このような行為は時間の引き延ばしにならないのか?それとも、公害管理局は裁判に勝ちたくないのだろうか?1998年からクロンダンの問題を追いかけているが、この問題に真剣に取り組む人にあったことがない」と語っている。