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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ・ゲンコイ第2複合火力発電所>上院委員会が強い懸念

タイ・ゲンコイ火発>上院委員会が強い懸念

メコン河開発メールニュース 2007年1月27日

国際協力銀行(JBIC)が800億円余りの融資をしているタイのゲンコイ2複合火力発電所(1468MW=建設中)に関連して、2006年3月にタイ上院の『社会発展と人間の安全保障委員会』委員会の分科会が「直ちにゲンコイ2発電所の建設を中断し、同時に事業の見直しと新たな環境影響の分析調査報告を実施することを勧告すべきだ」という調査報告書を発表しました。しかし、昨年の軍によるクーデター後の政治的な混乱の中で、その扱いは宙に浮いた状態となっています。

このたびメコン・ウォッチの木口由香がこの報告書を入手して検討したところ、これまで住民が訴えていた懸念をほとんど認めた内容になっていることがわかりました。以下、木口による解説と調査報告書の要点です。


上院委員会、ゲンコイ第2複合火力発電所に懸念表明

ゲンコイ第2複合火力発電所は、タイ・サラブリ県で建設が進められている天然ガスを主な燃料とする複合火力発電所です。住宅地や農地に隣接するという立地で、周辺住民はその影響を懸念していますが、事業者は十分な情報公開と住民との協議を行わず建設を進めてきました。

この事業に対し、国際協力銀行は2005年11月、800億円以上もの融資を決定しています(国際協力銀行は同事業を「カエンコイU天然ガス焚き複合火力発電事業」と呼称)。実施機関はガルフ・パワー社で、同社の100%親会社であるガルフ・エレクトリック社に対しては、日本のJ-Power(旧電源開発株式会社)が49%、三井物産の関連会社Mitsiam社が1%を出資。また三井物産は、フルターンキー契約で発電所設備一式を設計・建設・試運転を含み約1000億円で受注しました。
詳しくは、ゲンコイ第2複合火力発電所のウェブサイトをご覧ください。

この事業に対し、住民は環境影響の再調査などを求め、タイ上院の『社会発展と人間の安全保障委員会』に請願していました。同委員会の『自然資源持続性分科会』はそれを受け、調査を実施、その結果を2006年3月に発表しました。報告はこの事業の住民参加が不十分であり、1997年憲法に抵触する恐れがあること、また、環境や住民の健康への影響調査が不十分であり、工事を中断し再調査を行うよう政府に提言すべきだ、としています。更に報告は、調査時にガルフ・パワー社が建設現場の見学を拒否したことを記しています。同社は、上院の委員会には民間企業を調査する権限がない、と主張しています。また、分科会の招集した現地での会議にも出席しませんでした。このような主張をする企業が、事業実施時に本当に住民参加型のプロセスを踏んだのか、懸念されるところです。

「請願についての検討 上院社会発展と人間の安全保障委員会、自然資源持続性分科会 2006年3月」と題された報告は、開発事業からの影響を懸念する住民から請願があった全国のケースを検討しています。その中で「サラブリ県ゲンコイ2発電所事業に関する請願の件」と題された部分で、分科会は各種報告書の文献調査と現地訪問と聞き取りを行っています。分科会は現地訪問の結果、地元の関係機関が発電所に関して十分な情報を持っておらず、住民の懸念に答えられていないこと、水不足や健康への影響についての住民の訴えは正当性があると認めています。

その結果、(1)ゲンコイ2発電所の水使用は、この地域での水不足を深刻化させる恐れ、(2)1997年制定憲法290条の定める地方自治体の事業開始時における参加の欠如により環境と地域住民の健康への影響が出る恐れ、(3)1997年制定憲法56条の定める個人やコミュニティの参加奨励の欠如、(4)環境影響調査の結果が、事業による水使用と排水、住民の健康への影響、住民への説明と情報提供、といった重要な点において不十分、という4点を挙げ、「分科会は、政府が直ちにゲンコイ2発電所の建設を中断し、同時に事業の見直しと新たな環境影響の分析調査報告を実施することを勧告すべきだという見解である」と結論しました。

委員会の勧告は政府に送られますが、勧告内容を政府に強制する法的な強制力はありません。またこの報告は、昨年のタイの政治的な混乱や上院の任期切れ、その後のクーデターによる憲法停止などによって宙に浮いている格好です。いずれにしても、選挙で選ばれた国民の代表である上院の委員会からこのような報告がなされていることは、完成を間近に控えたこの事業が、重大な負の影響を将来この地域にもたらす可能性を示唆しています。

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