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メコン河開発メールニュース2007年3月30日
過去10年以上にわたって東南アジアで最も論議を生んだラオスのナムトゥン2ダム。世界銀行やアジア開発銀行が融資を決めて2年が経とうとしています。
建設が急ピッチで進む一方で、影響を受ける住民たちは生計手段の大転換や、自立に向けた補助金カット、準備不足のままの移転等、様々な困難に向き合い始めています。こうした実情については、以下の記事からメコン・ウォッチ及び国際河川ネットワーク(米国)の現地報告を読むことができます。
ナムトゥン2水力発電プロジェクト現地訪問(2006年12月)報告( MekongWatch)
NAM THEUN
2 DAM:RISKY BUSINESS FOR LAOS(2007年2月 International Rivers Network)
しかし、世界銀行はそうした問題を知りながらも、「全体的には進歩」と判断していると現地の新聞は報じています。
以下、メコン・ウォッチの東智美の翻訳です。
ビエンチャン・タイムズ
2007年3月9日
国際金融機関の代表団は、プロジェクトサイトの訪問を終え、ナムトゥン2プロジェクトの進捗に満足しているとの声明を発表した。
この声明は、世界銀行のアジア太平洋地域担当局長Ian Porter氏を筆頭とする代表団が、昨日、Somsavat Lengsavad副首相を訪ねた際に出された。この訪問は、3月4〜9日の6日間の代表団によるラオス訪問の一環として行われた。
代表団は、アジア開発銀行、フランス開発庁、ヨーロッパ投資銀行からの代表で構成されていた。
Porter氏は、各種の改革プログラムとプロジェクトの歳入を活用するための将来の計画などについて、「全体的に進歩が見られ、うれしく思っている」と述べた。
彼によれば、単に建設面だけではなく、社会環境影響面についても進歩が見られたという。
彼は、プロジェクトサイト近くに住む人々への移転プログラムは遅れて始まったが、今は前進していると強調した。
しかし、前進を維持し、地域のコミュニティへの影響をより良いものにするためには、まだ様々な事業を実施する必要がある。
Porter氏は、土地の損失に対する補償はまだ課題が残っていると指摘した。プロジェクトのスタッフは補償システムについて混乱していて、影響を受けるコミュニティの住民との間にコミュニケーションの齟齬があり、住民は自分たちの権利についてよく分かっていないままであるという。
混乱の1つの原因は、近くで8B道路の建設プロジェクトが実施されており、このプロジェクトでも影響住民に対する補償があった点である。
これらの道路建設事業は、まだ水準を満たしておらず、プロジェクトと建設企業との話し合いの場が今日設けられることになった。
Porter氏は、(影響住民の)生計、流域管理、そして環境問題を優先する必要があると強調した。また、ラオス政府は違法な伐採、野生生物の取引、金の採掘などについて更なる調査が必要だとも提案した。
Somsavat副首相は、ナムトゥン2プロジェクトが世界中のほかの水力発電プロジェクトのモデルとなるように、ラオス政府は世界銀行と密接に連携していくと再度確約した。
またSomsavat副首相は、すでに多くの県知事に対して、ナムトゥン2プロジェクトの歳入を使って、貧困削減を行うための予算要求の明確な計画を作るよう促していると、訪れた代表団に報告した。プロジェクトの歳入は、2009年末から入ってくることになっている。