ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ADB>アジア開発銀行は本当に必要なのか?
メコン河開発メールニュース2007年5月5日
アジア開発銀行(ADB)は、日本が最大の資金供与(出資と拠出)をしている国際開発機関です。創設以来10年ごとの節目の年に日本で年次総会を開催しています。40周年を迎える今年は5月4日(金)から7日(月)にかけて、京都に加盟国の財務大臣などが一同に集まって年次総会が開かれています。
過去15年近く、ADBの政策や支援事業のモニタリングを行ってきたNGOとして、私たちメコン・ウォッチはこの機会に『ADBは本当に必要なのか』と問いたいと思います。
ADBの最上位目標は貧困削減です。しかし、ADBの融資のほとんどは金融市場から資金を調達して、中国やインドなど中所得国の事業に回しています。こうした国々は、貧困層の数が多いとは言え、自国の資金源も潤沢ですし国際金融市場などへのアクセスも容易です。中国はアジアのあちこちの国の開発事業に融資していますし、ベトナムもインフラ整備のための多額の資金を債券市場から調達できるようになりました。貧困削減を至上目標に掲げるADBがこうした国々のインフラ事業への融資を中心に据えることにどれほどの意味があるのでしょうか?
一方で、貧困国と呼ばれる国々への貸付には、日本などがADBに拠出した税金が使われていますが、その規模は中所得国への融資の5分の1程度で、貧困削減特別基金は更に一桁小さい額です。しかも、貧困国向けの少なからぬ事業で、自然環境や住民生活に多大な悪影響を与えています。例えばラオスのトゥンヒンブンダムでは、発電後の大量の水が転流される2つの川沿いでは浸食と堆砂が深刻化し、 その結果洪水が悪化しています。『第2東西回廊』として有名なカンボジア国道一号線改修事業では、住民の立ち退きが本格化して6年以上が経過した現在も、少なくとも300世帯以上が適切な補償を受け取っていないと抗議をしています。
資金調達の手段が増えているアジアのインフラ支援を事業の中心に据えながら、貧困国への事業では深刻な環境社会影響を出し続けているのであれば、ADBの存在意義が問われるのは当然の帰結ではないでしょうか?ADBは貧困削減という自らのミッションに即した資金配分を再検討すると同時に、環境社会面での悪影響を回避するための実効性のある真剣な取り組みを行うべきです。それなくして、ADBの生き残りはないはずです。創立40周年を暢気に祝っている場合ではなく、ADBはまさに存続の危機にあるのです。
詳しくは第40回アジア開発銀行(ADB)総会をご覧下さい