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タイ・パクムンダム>政権代われど問題変わらず

メコン河開発メールニュース2007年6月15日

世界銀行の融資で完成して13年が経過したタイのパクムンダム。政権交代とは関係なく、ムン川沿いで漁業を営む住民たちは、ダムとそれを管理するタイ発電公社(EGAT)に翻弄され続ける日々が続いています。

以下、最近の情勢について、メコン・ウォッチの木口由香の解説と翻訳記事です。

なおパクムンダムのこれまでの経緯については、パクムンダムのサイト をご一読下さい。


クーデターによる首相追放後、政治的混乱が続くタイは、タクシン首相の作り上げたタイラックタイ党(タイ愛国党)を解党する判決が5月末に憲法裁判所から出されました。これから選挙に向かい、事態収拾を目指した一歩を踏み出すことが期待されます(もちろん、これで混乱が収束するという保障はありませんが)。

政治的な混乱は、様々な影響を国民生活に及ぼしています。パクムンダムの建設により被害を受けた住民たちも例外ではありません。タクシン政権時代の2003年に、漁業資源への配慮で年間水門開放4ヶ月が閣議で決まりましたが、今年はそれが理由無く延期されました。以下の記事にあるように、住民の強い抗議の結果、水門は1ヶ月半遅れの6月17日に完全開放されます。本来、この決定も水門の通年開放を求める住民にとっては不十分なものでした。しかし、それすらも守られていないのです。住民グループのネットワーク、ASSEMBLY OF THE POOR(貧民会議)はダムを管理するタイ発電公社(EGAT)が「閣議決定を遵守せずタイ国内で独立政府のように振舞っている」と強く非難する声明を出しています。

一部の政府機関がいう水門開放延期の理由は、ダムの水門を開けると水不足に悩む住民が出るというものです。しかし、同ダムの水は発電以外の用途にはほとんど使用されておらず、ダム上流での魚の養殖も自然の水位で可能なことが地元大学の調査で分かっています。4月中旬、ダムの水門を開放しないよう求める村人が、ダムのあるウボンラチャタニ県庁前で集会を開き、3000名の署名を提出した、とタイ国内各紙は報じています(マティチョン、マネージャー、デイリーニュース、Bangkok Post、4月6日付け)。しかし、地元の住民は 「かんがい路の整備の請願署名にサインをしたら、それがダム水門閉鎖に転用されている」と困惑しています。

首相府前で抗議行動をしていた被害住民は、政府が一定の話し合いに応じたこと、また、5月末の判決内容によって解党を命令された政党の支持勢力が街頭抗議行動を行い、首都が混乱する恐れがあると判断し、現在は地元に戻っています。

2003年から行われたダムの4ヶ月水門開放は、限定的ながら漁業資源の回復をもたらしたと被害住民は見ています。しかし、今年は、5月から6月の間にピークが来るメコン河からムン川への魚の回遊の一部を逃してしまうことなる可能性があります。何よりも、住民がバンコクまで抗議に出なければ閣議決定が実施されない、という現状に被害住民は疲弊感を訴えています。世界銀行が「非自発的な移住では成功例」としたダム開発は、完成から13年たっても人々の生活を圧迫し、ダムを巡って地域を分断しているのです。

貧民会議(ASSEMBLY OF THE POOR)
パクムンダム、1000名の影響住民が首相府で抗議

APINYA WIPATAYOTIN 記者
バンコクポスト紙 2007年5月25日

貧民会議のメンバーである約1000名の村人が、昨日から首相府で長期の抗議行動を始めた。理由は、スラユット・チュラノン首相が、パクムンダムの水門を開くという住民の要求を無視しているためだという。村人はスラユット首相が、先月(ダムのある)ウボンラチャタニ県パクムンダム影響住民と会談した際の約束を破ったと酷評している。

首相は今週、ダムの水門開放と貧民会議の代表と公式な交渉を持つことについて、大臣らと議論すると約束した。しかし、何も起きなかった、と人々は述べている。

貧民会議は、政府の政策や事業によって影響を受けた草の根のグループのネットワークで、パクムンダムもそのうちの一つである。

パクムンダム影響住民を代表してソムパーン・クーンディは「スラユット政権は、村人の問題を早急に解決するとした約束に不誠実だ」という。

2004年の閣議決定【訳注】は、ダムの運営者であるタイ発電公社(EGAT)に、メコン河から回遊する魚のムン川での産卵を可能にし、漁業資源を増加させるため、雨季の間水門を開くことを指示している。

通常は、5月初旬に開放することになっており、すでに1ヶ月遅れている。

EGATを監督するエネルギー大臣は、先週、いつ再開すべきかの最終決断を行う前に更に情報が必要なので、少なくとも来月までは水門を閉じている必要があると語った。

(5月末に)予定されているタイラックタイ党とタイ民主党の解党を巡る憲法裁判所の判決時期に想定される混乱を懸念する治安当局は、貧民会議の集会は治安上の懸念の引き金となるという。

村人は、自分たちの集会は政治的なものではなく、政党解党については何もしないといっている。

貧民会議のアドバイザー、ナタチョート・チャイラットは公安職員に対し、村人の抗議は警察には何もしないので、運動を妨げるのをやめるよう呼びかけている。

彼によると、貧民会議のメンバーは、バンコクの集会に参加するために全国から集まっている。サケオ県の約80名の村人は、トラックが政府機関によってブロックされた後、バンコクまで歩いて移動することを決めた。

「我々は、来週水曜日の憲法裁判所の判決のために集まる政治的なグループとは行動を共にしない。だが、もし政府が続けて我々の苦しみを無視するなら、集会を解散しないだろう」と彼は述べている。

【訳注】
ダムの水門開放4ヶ月が閣議で決まったのは2002年で、実施は2003年からだったが、翌2004年、被害住民の要請で水門開放時期が7月から5月に早まっている。その際の閣議決定をさしていると思われる。

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