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メコン河開発メールニュース2007年9月19日
9月16日のメールニュースでお知らせしたとおり、ビルマ国内のサルウィン川ダム建設現場で何者かが宿泊所に手りゅう弾を投げ込み、タイ発電公社(EGAT)の職員が死亡するという事件が起きました。ダム建設を進めているEGATは事件直後には「建設準備を中断する」としていたものの、すぐに一転して「現地で安全が確保されしだい、建設準備を再開する」と発表しました。
以下、バンコク・ポスト紙とAFP通信の記事2本をご紹介します。
バンコク・ポスト
2007年9月5日
タイ発電公社(EGAT)は9月4日、ビルマ軍政が現地の安全を確保するまでサルウィン川に建設予定のハッジー水力発電ダムの開発調査を延期すると決定した。ただし延期によりタイのエネルギー事情が影響を受けることはないと主張した。
EGATのクライシ総裁は、9月2日にハッジーダム建設現場(訳注:ビルマ・カレン州南部)で何者かの攻撃によってEGAT職員のサーマン・カンタムーン氏が死亡したのを受け、同ダム建設を無期限に中断すると述べた。
ハッジーダム建設現場近くでは2006年5月にもEGATの地質学者が地雷を踏み、後に死亡する事故があった。このためサマーン氏は2人目の犠牲者となる。今回の事件を受け、EGAT職員47人はビルマ国内の安全な場所に移り、EGATが準備した飛行機でタイに戻る予定だ。
建設関係者用の宿舎を攻撃したのは反政府武装勢力のカレン民族連合(KNU)だという非難に対し、KNUのマンシャ書記長はKNUの事件への関与を否定した。また、現場周辺にはビルマ軍と民主カイン仏教徒軍(DKBA)が展開していると指摘した。
タイのピヤサワット・エネルギー大臣は、ダム建設はタイ・ビルマの協力事業だとはいえタイ人職員の安全は優先事項であるとし、ビルマでのダム開発の見通しが立たない場合にはラオスでの電力開発を速めるよう関係当局に命じた。
出典:Thai Dam Project in Burma Suspended, Bangkok Post, September 5, 2007
翻訳:秋元由紀、協力:大垣俊朗
AFP通信
2007年9月5日
タイ発電公社(EGAT)は9月5日、ミャンマー東部のダム建設計画(予定出力1200メガワット、総費用約10億ドル)を継続する意向を表明した。同ダム建設現場では9月2日に反ミャンマー政府民族武装勢力によるとされる攻撃でEGAT職員が死亡した。
ミャンマー国営報道機関は、カレン民族の武装勢力がサルウィン川のダム建設予定地を調査していたタイ人技術者を殺害した、と報じた。
EGATは事件の直後に職員42人を現地から撤退させ、建設計画を延期すると発表していた。しかし9月5日になって、ミャンマー政府が現場の安全体制を強化し次第、職員を現地にに送り戻す予定だと発表した。
EGATのアピチャート・ディロックソーポン氏は「ミャンマー政府がEGAT職員の安全を確保するために警備を強化すると約束したので、ダム建設を続行する。建設はタイとミャンマー間の協力事業であり、リスクを差し置いても推進せねばならない」と述べた。アピチャート氏はまた、EGATはミャンマーでの作業の安全性について職員を説得する間、ミャンマーは自国の技術者を使って調査作業を終わらせることができるとした。
同ダム建設現場では2006年にもEGATの地質学者が地雷を踏み死亡している。
タイはエネルギー需要の増大に対応するためミャンマー軍政への依存を強めており、同国での水力発電ダム建設計画を進めているほか、天然ガスも輸入している。タイが進めるダム建設によってカレン民族住民が移住を余儀なくされる上、ダムができても地域住民はほとんど恩恵を受けない、という批判が出ている。
出典:Thai firm says attack won’t stop Myanmar dam, Agence France Presse, September 5, 2007
翻訳:秋元由紀、協力:大垣俊朗
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