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東南アジアでダムのない川としては最長のサルウィン川(タンルウィン川)で、ビルマ(ミャンマー)と中国、タイの企業とが共同して複数の地点で大型水力発電を行う合意を結んでいます。建設予定のダムには武力紛争が続く地域に位置するものもあり、周辺住民に悪影響が及ぶことが懸念されます。
2013年2月末、ビルマの電力省が同国議会に対し、国内を流れるサルウィン川本流及び支流の6か所に水力ダムを建設する計画が承認されたと報告した。6つの設置出力は合計1万5,000メガワットで、中国企業5社、タイ発電公社(EGAT)、ビルマ企業3社が投資するとされる。
6つの地点は以下の通り。
【本流】
1.上サルウィン(クンロンとも)(シャン州北部)
・設置出力1,400メガワットのうち1,200メガワットを中国に輸出予定。
2.ノーンパ(シャン州北部)
3.タサン(マイトンとも)(シャン州南部)
・設置出力7,000メガワット。タイのEGATインターナショナルと中国の三峡集団が投資予定。
4.ユワティ(カレンニー(カヤー)州)
・中国の大唐集団の子会社「Datang (Yunnan) United Hydropower Developing Co.」が手がける。
5.ハッジー(カレン州)
【支流】
6.マンタウン
川岸の野菜畑で作業をするカレン人男性。
川岸の砂浜の多くにこのような畑が見られる。
(撮影:東南アジア河川ネットワーク)
今回水力開発が計画されている地点はシャン、カレンニー、 カレンなどの少数民族が多く住み、少数民族武装勢力とビルマ国軍それぞれの支配地域が入り組んでいるところにあります。 開発に伴い、建設現場の警備のために駐屯するビルマ国軍が増強され、 住民がダム建設によって家や農地などの生活基盤を失うだけでなく、ビルマ国軍によって強制労働をさせられるなどの侵害行為を受けることが強く懸念されます。
さらに、サルウィン川ダム建設についてこれまでに行われた調査の結果や、環境影響評価、 建設によって影響を受ける住民にどう対応するのかといった基本的な資料は 一切公開されていません。ダムの上流では広範な土地が水没し、下流では水質の悪化や魚が獲れなくなるなどの深刻な影響が出る恐れがありますが、こうした影響を受ける住民に対する事業の説明も行われていません。