ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ汚水処理 > 汚職疑惑の政治家、判決前に逃亡
メコン河開発メールニュース2008年7月14日
2000年から2003年にかけてタイで大きな論争を起こしたサムットプラカン汚水処理場建設事業に関するニュースです。同事業は、国際協力銀行による円借款とアジア開発銀行からの融資により300億円以上の支援を受けていましたが、住民の強い反対と、政治家や関係機関職員の汚職の疑いによって事実上中止に追い込まれたました。
事業予定地は海沿いで本来、即時売買可能な土地権のつけられる場所ではありませんが、内務副大臣在任中にサムットプラカン県の有力者でもあるワタナー氏が職権を乱用して土地権を発行した疑いがもたれています。同氏が汚職事件の判決直前に逃亡したとの報道です。
詳しくはサムットプラカン汚水処理プロジェクトのページをご覧ください。
マティチョン紙2008年7月10日1面 (抄訳)
7月9日14:30、最高裁は政治家を対象とした訴訟、最高検察庁事件番号AM2/2550年のワタナー・アサワヘーム被告の判決を言い渡す予定であった。被告は元内務副大臣でプアペンディン党の党首である。罪状は、地位を利用して他を脅迫、または便宜を図る、もしくは利益を提供する、自分や他に利益を誘導し、他に不利益を与えた、といった点であった。有罪となれば5年から20年の懲役と2千から4万バーツの罰金が科せられる。ワタナー被告はクロンダン汚水処理事業において、共有地である1900ライの土地に不当に個人所有の可能な土地権(チャノート)を発行し、その土地を公害管理局に売却した疑いがもたれている。
ワタナー被告は判決時に裁判所に現れず、代理人の弁護士によると、今日は本人と連絡が取れず行方が知れないと述べた。裁判所は被告が故意に出廷しなかったと判断、保釈金を没収し8月18日に再度出廷させるため、勾引状を発布した。
保釈金は220万バーツであった。ワタナー被告は5月8日に法廷で無実を訴え、記者団に対しても逃亡はありえないと豪語していたが、判決当日姿をくらました。
またワタナー被告は、脳の病で短期的記憶障害が出るとして、4回尋問を延期している。裁判所は多数の関係者から事情を聴いているが、他にもウィサヌ・クルアガーム元副首相・内閣官房、バンハーン・シラパアチャー元首相(チャートタイ党党首)などを尋問している。
入国管理警察ではまだ裁判所の命令を受け取っておらず、ワタナー被告は出入国のチェックを受けていないという。しかし、命令が届き次第、発見後はすみやかに身柄を拘束すると関係者は述べた。
ワタナー被告の子息チョンサワット氏は記者の電話インタビューで、まだ(勾引状が出たという)事情を知らないと語り電話を切った。
一方、ワタナー被告と親しいマン・パットノータイ技術通信大臣は、同被告が75歳であることから受刑を恐れて逃亡したのでは、と語った。ワタナー被告はマン氏に、土地は10年前に売買したもので潔白だが裁判所が信じるかどうかわからない、と訴えていたという。マン氏は記者に対し「誰が15年も刑務所に入りたいものか」などと述べ、ワタナー被告に同情的であった。また、同被告の現在の党との関わりは資金援助のみで、運営には関与していないため、党の政治活動には影響はないと述べている。
(文責・翻訳 木口由香/メコン・ウォッチ)