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メコン河開発メールニュース2009年1月23日
2006年以来、メコン河本流の中下流域(ラオス、タイ、カンボジア)でのダム建設計画が勢いを増していることは、これまでにもお知らせしてきた通りです。以下のVOAの報道によりますと、ダム建設計画は11ヶ所にものぼっています。
本流ダム建設問題に対する取り組みは、今年のメコン・ウォッチの活動にも入っています。特に2月の末には、以下の報道でも紹介されている、米国のNGO「国際河川」(IR)からカール・ミドルトン氏をお招きして、この問題に対する理解を深めたいと考えています。詳細については、今後のご案内をご覧下さい。
なお、この問題については、メコン・ウォッチのサイト「メコン河下流本流ダム」もあわせてご覧下さい。
「 メコン河下流本流ダム」
パイサン・ウォラチャック
VOA
2008年12月19日
全長5,000キロを誇るメコン河は、チベット高原に源流を発し、中国、ビルマ、ラオス、タイ、カンボジアの諸国を経て、ベトナムのデルタで南シナ海に到達する。これまでのところ、メコン河本流(中国国内名「瀾滄江」)にダムを建設したのは中国だけで、メコン河下流諸国のダム建設は支流に限定されていた。
しかし、2006年中頃からラオス、タイ、カンボジア各国政府が中国、タイ、マレーシア、ロシア、ベトナムの企業に許可を出して、メコン河本流の少なくとも11ヶ所で、ダム建設のための実施可能性調査を行っている。ラオス国内では、パクベン、ルアンパバーン、サイヤブリ、パクライ、サナカム、ラットスア、ドンサホン、タイとラオスが向かい合うところでは、バーンクムとパクチョム、カンボジア国
内では、ストゥントレンとサンボーの各ダムである。
アジア最貧国の一つラオスは、水力発電の潜在的能力を活用して「東アジアの発電機」として、タイやベトナムといった近隣で経済成長を遂げている国に電力を売ろうとしている。
米国に本部を置く「国際河川」(IR)などの環境保全団体は、こうしたダム建設事業が、何百万人もの住民の生活を支える豊かな漁業資源など河川の生態系を乱し、住民の生計を脅かすとして、建設に異議を唱えている。
国際河川のメコンプログラム担当であるカール・ミドルトン博士は、最近ラオスの首都ビエンチャンで開催されたメコン河委員会(MRC)水力発電プログラムの公式協議会の席で、MRCに関わる政府と援助国の代表者に対して88ページの報告書を提示し、水力発電所に代わる経済活性手段を追求するよう提言したと述べた。【訳注1)】
環境保全団体によれば、メコン河本流で計画中の11ヶ所のダムは、何千人もの地域住民を移転させ、メコン大ナマズ(「パーブック」)やイラワディ川イルカ(「パーカー」)など何百種類もの生物を脅かす恐れがある。【訳注2)】
一方、ラオス政府関係者は、一連のダム事業が単に実施可能性調査の段階にある点を強調する。ラオス政府外務省のヨン・チャンタランシー(YongChanthalangsy)報道官は、ラオス政府が調査の結果を十分に検討し、環境や社会に対して壊滅的な影響を与えることが必至の事業は許可しないと語った。
【訳注】
1)この英文報告書(”Power Surge: The Impacts of Rapid Dam Developmentin Laos”)は以下のサイトで閲覧可能
http://internationalrivers.org/en/node/3343
2)「パーブック」、「パーカー」はそれぞれラオスで使用されている呼称。メコン圏各国で呼び名は異なる。
原文(英語)とサイヤブリ、バーンクム両ダムの画像は以下のサイトで閲覧可能
http://www.voanews.com/lao/2008-12-19-voa2.cfm
(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)