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メコン河開発メールニュース2009年2月3日
ビルマ(ミャンマー)北部カチン州、イワラジ(エーヤワディー)川の上流の町チブウェ周辺で、中国企業とビルマ軍政の息がかかった企業が共同で水力発電所建設を進めているという情報をお伝えします。ダム自体による自然環境や住民生活への影響も大きな懸念材料ではありますが、以下の翻訳記事をお読みいただくと、爆破作業が軍の監視下で実施される、企業が地元の商店に建設資材を無料で提供させる、挙句の果てには作業員たちが地元の食堂で何ヶ月も無銭飲食のし放題と、ビルマが軍政下にあることで、ダム建設にともなうさまざまな問題が先鋭化して現れることが改めてお分かりいただけるかと思います。
なお、最近、ビルマ河川ネットワーク(Burma Rivers Network)がウェブサイトを改訂し、メコン河をはじめ、イラワジ川、サルウィン川など、ビルマ国内の主な河川とその支流でのダム建設に関する情報が容易に閲覧できるようになりました。ダム自体の情報だけにとどまらず、中国、タイ、インド、日本など、建設事業への出資者に関する情報も掲載されています。現在、英語とビルマ語での閲覧が可能ですが、今後は中国語での閲覧も可能になるとのことです。以下の記事にあるチブウェ水力発電所建設計画も地図上で確認することができます。ぜひ一度、ご覧になって下さい。
http://www.burmariversnetwork.org
イラワディ・オンライン
2008年12月8日
ウィリアム・ブート
ビルマ北部カチン州を流れる河川に建設中の水力発電所によって、数多くの人びとが住居を失い、保護を必要とする生態系が破壊される危機に直面している。
ビルマ軍事政権は、中国電力投資公司(CPI)および軍事政権を支持するビルマのアジアワールド社(AWC)と共同で、マリカ(Mali)とンマイカ(Nmai)(メーカ)の両河川の少なくとも7ヶ所に水力発電所を建設しようとしており、発電した電力は中国雲南省の電力網を経由して中国西部あるいは東部臨海地域に供給される。
軍事政権が電力の販売によって中国から得る収入は年間約5億ドルにのぼる可能性があるが、ビルマ国内の電力網が改善されることはない。
タイを拠点とするカチン開発ネットワークグループ(KDNG)によると、軍事政権の第1電力省とCPIは、少なくとも3600メガワット(MW)をこれらの水力発電所によって発電することで合意している。
現地での目撃談によると、建設工事はすでに始まっており、掘削機やブルドーザーを使って道路も建設中で、AWCが地質学者を送り込み、ンマイカ川沿いのチブウェ(Chibwe)−ソロ(Sawlaw)間の3ヵ所で調査を開始している。
住民の証言では、ビルマ軍第121歩兵大隊が見守る中、1000人を超えるAWCの作業員が現地に仮の宿舎を建設し、この2ヶ月間は河床でダイナマイトを爆発する音が響く回数も増えてきている。
KDNGの予測では、ダムによって消滅する村が47ヶ所にのぼり、広大な原生林が水没するため、河川の生物多様性と植生に多大な影響が生じる。
原文(英語)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.irrawaddy.org/article.php?art_id=14764
カチン・ニュース・グループ(KNG)
2009年1月13日(火)
現地からの情報によると、ビルマ北部カチン州のチブウェを流れるンマイカ(メーカ)川での水力発電所建設計画を進めるために、昨年(2008年)12月下旬以降、1000人もの中国人作業員が現地に派遣されている。
チブウェの住民によると、これらの中国人作業員は中国電力投資公司(CPI)の従業員で、かつての麻薬王ロー・シン・ハンが所有するビルマのアジアワールド社(AWC)のビルマ人従業員約300人とともに作業に従事している。
チブウェ水力発電所の建設現場で働く中国人作業員の数は、昨年12月初旬の300人前後と比べると格段に増え、1000人ほどにもなっているとのことである。
現在2社の作業員は二つの作業を行っており、一つはチブウェ近郊を流れるカチン州第2の河川ンマイカ川で調査を実施すること、いま一つは同地点に水力発電所を建設するのに必要な電力を供給する小型水力発電所をンマイカ川と合流するチブウェ川に建設することであるという。
ビルマ−中国国境を拠点にダムに反対する活動を続けているカチン開発ネットワークグループ(KDNG)のオンワ(Awng Wa)代表は、KNGの取材に答えて、「CPIの下でチブウェ水力発電所事業に関わっている中国企業は、水力発電事業を進めながら同時に貴重な鉱山資源を現地から中国に運び去っている」と述べた。
チブウェの住民やビルマ−中国国境の貿易業者らによれば、付近では鉱石、銀、アルミニウム、鉛、黒鉛などの鉱山資源が見つかり、中国に持ち込むと高値で売れる。
また、AWCは、2008年10月、軍のヘリコプターが発着できる場所を3ヵ所設けるために軍事政権が没収したチブウェサッカー場に、300×50フィート(訳注:1394平方メートル)の面積の建物を建設している。同社に近い筋の話では、この建物はチブウェ水力発電所計画の総務事務所として使われる予定で、会議室、事務職員室、駐車場などを完備している。
チブウェで食堂を営む人びとは、この6ヵ月から1年間というもの、AWCの作業員が連日無銭飲食をするため困り果てており、閉店に追込まれようとしている。ま
た、建築材を販売する店も、AWCの要求にしたがって長期間無料で資材を提供しなければならない。
CPIやAWCには軍事政権の強力な後ろ盾があるため、文句を言うこともかなわない、と現地の住民は語った。
チブウェ水力発電所事業は、2006年以来、中国のCPIと軍政のAWCがカチン州を流れるマリカ川とンマイカ川で建設する計7ヶ所の水力発電所の一つである。チブウェ水力発電所の総発電容量は2000MWにのぼる。
2社の情報筋によると、チブウェ水力発電所事業の実施期間は20年間である。
原文(英語)は以下のサイトで閲覧可能
http://www.kachinnews.com/index.php?option=com_content&task=view&id=699&Itemid=50
訳注:マリカ川とンマイカ川とが合流してイラワジ川となる。地元住民が聖地とみなすこの合流地点(ミッソン)にも大型水力発電事業が計画されている。
(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ、協力 秋元由紀/メコン・ウォッチ)