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メコン河開発メールニュース2009年7月31日
昨日(2009年7月30日)、日本政府・外務省はカンボジア政府との間で、国道1号線改修事業第3期についての交換公文を締結しました。本事業においてNGOが指摘してきた住民移転に伴う諸問題はいまだ解決されておらず、事前に提出した疑問や懸念に対してなんら回答のないまま、今回の決定となりました。75億円(累計)という、無償資金協力としてはけた外れに大規模な事業において、外務省/国際協力機構(JICA)が移転住民の貧困化のリスク回避に説明責任を果たしたとは到底言えません。
本事業は、カンボジアの首都プノンペンとベトナムのホーチミン市を結ぶ国道のうち、プノンペンからメコン河渡河地点まで約56kmの改修事業で、1800世帯以上の住民移転を伴います。これは単一事業としてはカンボジア最大の規模の住民移転です。
メコン・ウォッチは、この事業で移転させられる住民の多くが貧困化のリスクにさらされていること、また住民移転計画等の重要な文書の公開が十分行われておらず、本事業において日本政府のアカウンタビリティが果たされていないことを指摘し、これらの問題が解決されるまで第3期の無償資金協力を供与すべきでないと主張し続けてきました。市場価格による補償の支払い決定など、改善がみられた点はあるものの、問題解決には多くの課題を残しています。
6月23日にJICAは、本件に関して、環境社会配慮審査会の開催前の非公式会合に関係者を召集し、下記のように説明を行いました。
(1)本事業に関して、アジア開発銀行(ADB)の融資区間(メコン河渡河地点以東)にならい、「再取得価格」による補償を実施することとなった。すでに補償した世帯については、差額の追加支払を行った。
(2)住民移転計画や補償単価の根拠を示す調査に関しては、現地のコミューン事務所で公開している。(注)
この会合で多くの不明点が残されたため、メコン・ウォッチは7月1日付文書で第1期および第2期において指摘してきた問題の解決が確認できるまで、第3期の資金協力を決定すべきではないことを改めて要請するとともに、説明の根拠となる文書の公開要請および質問を外務省およびJICA宛てに提出しました。しかし、これに対する回答はありません。
7月30日、住民移転に関する重要な情報が非公開のまま、本事業に関する交換公文が締結されました。
このような対応を見る限り、6月23日の会合は、問題提起を行っていたNGOへ「説明した」という既成事実を作る形式であったと言わざるを得ません。
私たちは、本日、このような外務省/JICAの対応に関して抗議するとともに、移転住民の生計への影響の調査と支援策の立案・実施、住民移転計画、市場価格調査結果などの情報公開などを求めるレターを日本政府、JICA宛てに提出しました。
レター(PDF)の内容はこちら。
(注)7月中旬、メコン・ウォッチが現地を訪ねたところ、訪問した2か所のコミューン事務所では、住民移転計画や市場調査報告書を公開しているどころか、文書の存在すら知らず、また、多くの住民が移転後に生計が悪化したとしているのに、生計に関する調査が実施された形跡はなく、生計回復の計画も示されていないことが明らかになった。