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メコン河開発ニュース2010年2月12日
中国雲南省にあるメコン河の上流、瀾滄江では、下流の流域国4カ国までの航路の開発・整備が中国主導で積極的に推進されていますが、最近、中国の国営新華社通信系ニュースや水運・物流業界向けサイトに相次いで、この航路の発展及び現状に関するニュースが流れました。
これは中国雲南省からラオスのルアンパバーンまでの航路における大型商業船の航行を推進する一大プロジェクトですが、早瀬や岩礁の爆破、浅瀬の浚渫などにより、生態系及び流域の人々の生活への影響が懸念されています。今後、この影響について下流国側も含めて新たな情報を集めたいと考えています(これまでの情報については、メコン・ウォッチのサイトをご覧下さい)。
2010年1月7日
新華網雲南チャンネル(原文中国語)
http://www.yn.xinhuanet.com/newscenter/2010-01/07/content_18708165.htm
何本もの国際河川が流れる雲南省は東南アジアにつながる国際水路の建設を推し進めている。今や、「一江連六国(6カ国を一本の河でつなぐ)」である瀾滄江−メコン河は流域各国にとって「黄金水路」となった。中国−ベトナム間を流れる紅河水路の雲南省側と、中国−ミャンマー(ビルマ)【訳注】間のイラワジ河内陸水路は現在積極的に建設が進められている。
雲南省内には大小合わせて600以上の河川があり、その多くは海に流れ込む河川の上流である。そのうち瀾滄江、怒江、紅河、独龍河、大盈河はそれぞれ東南アジアの重要水系であるメコン河やサルウィン河、紅河、イラワジ川の上流である。
長年の努力により、千百年もの間黙々と流れる瀾滄江−メコン河の航行条件は日増しに改善されている。2001年6月には、中国、ラオス、ミャンマー、タイの4カ国が正式に瀾滄江−メコン河の商業航行を開始し、その後中国政府とラオス、ミャンマー、タイの3カ国は共同でメコン河上流航路整備事業を実施、瀾滄江−メコン河の通年航行を実現させた。
雲南省交通庁によれば、今のところ、瀾滄江−メコン河の雲南省景洪からタイのチェンセンまで、年間の通航期間は2001年の6カ月から11カ月までに拡大され、輸送船舶はますます大型化し、輸送物資の種類も従来の単一の雑貨から定期旅客輸送及び生鮮商品の冷蔵コンテナに発展している。水路の整備により船舶の座礁や衝突等の事故の発生は大幅に減少し、輸送コストも約30%削減された。現在、頻繁に往来する瀾滄江−メコン河上の国際水運事業に従事する中国籍の船舶はすでに100隻近く、総輸送力は一億トンを超え、1隻の最大積載重量も380トンに達している。
4カ国の共同水運事業の推進に伴い、流域各国ではインフラ建設がさらに進み、ラオスのシェンコックやミャンマーのスオレイ、中国雲南省の関累など、以前は交通が不便であった流域の村は今では重要な港町となっている。
これと同時に、中国−ベトナム間をつなぐ紅河水路は現在積極的に建設が進められている。雲南省交通庁によれば、雲南省内の紅河河口からベトナムのハイフォン港までの航程はわずか486qである。現在、紅河は雲南省側では20トン級の船舶が通行でき、さらに国境を越えたベトナム側は50トンから70トン級の船舶が通行可能である。
関係者は、紅河における水上輸送事業の開通は、将来、中越両国にとって経済上の重要路線が貫通することになると見ている。中越貿易は現在急速に発展しており、中越共同事業がさらに促進されるためには、両国の交通網が完全につながることが必要であり、紅河の水上輸送事業の開発条件はすでに整っていると言えよう。
この他、中国の昆明、瑞麗、ミャンマーのバーモ港、ヤンゴン(ラングーン)港の間では、中国の国道320号線とミャンマーのイラワジ河が水上輸送でつながり、道路、水路、港の中枢システム、水陸の連絡輸送乗り換えシステムが構築され、中国−ミャンマーのイラワジ河陸水連絡輸送水路に関連する前期事業は目下進行中である。中国龍陵県−瑞麗間の道路を高速道路にする計画があるが、国道320号線上の昆明から中国−ミャンマー国境の瑞麗まではすでに全線が高速道路となっている。
2010年1月12日
中国物流企業網(原文中国語)
http://info.02156.cn/ShowNews9170.html
「以前は一年にわずか5カ月しか通航できなかった。埠頭も皆、傾斜がきつく、航路もなく、早瀬は流れもカーブもきつい。出港するたびに戻ってこられるのか、心配だった」。任達11号の楊永進船長は10年前の瀾滄江の情景をいまだ忘れることはできない。「今では300トンの船が通航することができる。しかも雲南省の景洪からわずか11時間でタイのチェンセンまで行けるのだ」。
我が国の青蔵高原の唐古拉山を水源とし、ラオス、ミャンマー(ビルマ)、タイ、カンボジアそしてベトナムを流れる全長4,880kmの瀾滄江−メコン河は、アジア唯一の「一江連六国(6カ国を一本の流れでつなぐ)」の国際河川である。区域経済協力推進の下、2000年4月、中国、ラオス、ミャンマー、タイの4カ国の交通部長は合同で「瀾滄江−メコン河商業航行協定」を締結した。10年近くかけて水路の建設と整備を行い、当時未開発だった川は今や東南アジアの黄金水路となった。
瀾滄江―メコン河は全長4880km、そのうち2130kmは我が国領内を流れ、ラオス国内は777km、カンボジアは502km、ベトナムは230km、流域総面積は81万q2である。瀾滄江は雲南省の7つの州をまたぎ、西双版納で中国ラオス244号国境を越えると、「メコン川」と呼ばれ、「東方のドナウ川」と称えられている。
航行協定で規定されている国際通航水域は中国の思茅港からラオスのルアンパバーン港までの全長788kmである。1970年代から、雲南省交通運輸庁は中央および地方政府の支持の下、瀾滄江の水路改善のために相次いで数億元を投入した。その結果、今では年間の通行保証率は95%以上となり、国内航路は300トン級の船舶が通行できるようになった。
水路建設以外、港の建設も急ピッチで進められている。西双版納海事局の楊永林局長によると、中国、ラオス、ミャンマー、タイの4カ国は互いに14の港を開放している。そのうち中国は思茅港、景洪港、?罕、関累が含まれる。これらの港は瀾滄江の水運事業の発展による利益を受け、その経済力は一気に引き上げられた。
瀾滄江下流にある中国とミャンマーの国境の町、関累を例に見てみよう。関累とミャンマーのスオレイまではわずか78km、「ゴールデントライアングル」までは250kmしか離れていない。この町は瀾滄江における中国の入口であり、多くの中国及び外国の商人、投資家たちが商業活動をしている。特に、渇水期にはこの埠頭の使用率は最も多く、一日平均30艘の中国及び外国の商船が停泊して作業している。「関累は港の建設により利益を受け、100人にも満たない小さな村から国境の旅客・貨物輸送の集散地となった。毎年の関税収入は雲南省の中でもトップクラスだ」と楊局長は話す。
「水路が整備され、瀾滄江の年間の物資運搬量は500トンから50万トンまで100倍にも増えた。驚くほどの大変化だ!」と楊局長は話す。2001年に正式通航が始まって以来、瀾滄江を通航する船舶は8艘から160艘まで増加し、水運企業は2社から43社に増えた。水運業の急速な発展と共に、流域に暮らす7000万人以上もの人々が直接利益を受けられるようになったのである。流域の企業は瀾滄江の水路建設によって利益を受け、運輸コスト、特に大型設備の運輸コストが大幅に削減された。たとえば、景洪発電所の大型機械設備の場合、陸路では5億元以上のコストが必要だが、水路であればわずか2億元で済み、運輸コストは陸路の半分だ。
また、水路基準を引き上げたことにより農業の発展も促進された。瀾滄江の水路整備のための浚渫により土砂が沖積し、モンハン村の北岸7000ムー以上(1ムーは6667アール)の砂浜(川や海の泥砂が河口近くまたは海岸付近に沈積してできた砂浜)は豊かな田畑に変わった。そして流域の村の農民はその田畑を無償で使用することができ、新たな収入源となっている。
最近は、植物油、米、木材、ゴム等の貨物が川をさかのぼって中国へと輸入され、副農産品(果物や野菜)、日用雑貨、家電、建材、紡績品などの貨物は下流に運ばれ南アジア5カ国へと輸出される。瀾滄江の国際貨物の輸送量は1996年の6万9000トンから2009年には31万トンまで増加した。
さらに、水路の改善により旅行産業の発展も著しい。2007年に開設された旅客運輸路線は流域6カ国の文化交流を強化し、航路の年間の旅客輸送量は当初の100人強から8万3500人まで834倍も増加した。「流域6カ国は将来瀾滄江により地域協力の新たなチャンスを迎えるはずだ」と楊局長は話している。
【訳注】ビルマ(ミャンマー)の国名表記については、新華網雲南チャンネルの英語表記が圧倒的に「ミャンマー」なので、ここでは両記事とも本文はミャンマーで統一し、初出のみを併記とした。
(文責・翻訳 京極絵里)