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ラオス・ナムトゥン2ダム>世銀・ADBに要請書を提出

メコン河開発メールニュース2010年4月27日

先日お伝えしたように、ラオスのナムトゥン2ダムが、世界銀行のセーフガード政策や事業のコンセッション契約に規定された環境社会配慮上の要件を満たさな いまま、3月15日に商業運転を開始しました。

世界銀行・アジア開発銀行は、セーフガード政策に則って事業が実施されることを確約し、ナムトゥン2水力発電事業を支援してきました。しかし、セーフガー ド政策やコンセッション契約に違反したまま、商業運転が開始されたことは、事業の影響を受ける人びとに対する環境社会配慮がないがしろにされ、経済的利益 が優先されたことに他なりません。

また、同じく世界銀行が支援し、15年以上経つ今も甚大な環境社会影響が未解決のタイ・パクムンダムの教訓を活かしていません。

実際に、ダムからの水が放流されるセバンファイ川流域では、ダムの操業に伴って、清潔な生活用水へのアクセスの喪失、川岸の野菜畑の侵食などの問題が生じ ていますが、適切な緩和策や補償策が取られていません。貯水池の建設のため少数民族6,200人が移転させられたナカイ高原では、長期的な生計回復の道筋が見 えていないうえ、移転先で農業を行うために設置が約束された灌漑設備も完成していません。

こうした事態を受け、3月26日、メコン・ウォッチは、アメリカのNGOインターナショナル・リバースと共同で、世界銀行・アジア開発銀行の総裁に対し、同事業 に伴って生じている環境社会影響を指摘し、コンセッション契約と世界銀行の移転政策の要件を満たした適切な対策が取られるまでダムの運転を中止するように 求める要請書を提出しました。

以下、世界銀行とアジア開発銀行に宛てた要請書(原文英語)の和訳です。

なお、要望書に対しては、すでに世界銀行とアジア開発銀行が回答を公表しています(末尾のリンクを参照)が、この回答に対する私たちの見解は今後のメール ニュースなどでお伝えいたします。


2010年3月26日

世界銀行総裁 ロバート・B・ゼーリック殿
1818 H Street, NW
Washington, DC 20433 USA

アジア開発銀行総裁 黒田東彦殿
6 ADB Avenue,
Mandaluyong City 1550, Philippines

ラオス・ナムトゥン2水力発電事業の商業運転について

ロバート・B・ゼーリック殿、黒田東彦殿

ラオスのナムトゥン2水力発電所の商業運転に関する懸念をお伝えしたく、この書簡をお送りいたします。ご存知のとおり、ナムトゥン2水力発電事業は、2005 年に世界銀行、アジア開発銀行、ヨーロッパ投資銀行等の金融機関から資金調達を受け、2010年3月15日に商業運転を開始しました。

ナムトゥン2電力会社(NTPC)は、ラオス政府とのコンセッション契約や世界銀行の移転に関する政策に規定されている環境社会配慮上の主要な要件を満たさな いまま、発電所の稼動を開始しました。「商業運転」開始までに満たさなければならない法的義務を回避するため、同社はダムの運転を電力の「商業的な輸出」 と呼んでいます。

3月15日から17日に現地を訪問したインターナショナル・リバースの報告によれば、ダムのフル稼働が始まってからセバンファイ川の水位は3.6メートル上昇しました。その結果、以下のような事態が起きています。

同社は、セバンファイ川沿いの住民に、川の水は汚染されているので飲まないようにとの警告を発しました。しかし、代わりに設置された地下水給水ポンプは機能しておらず、地下水も生活用水に適していません。そのため、多くの住民には、川の水を使う以外の選択肢がほとんど残されていません。

セバンファイ川沿いの野菜畑は、川の増水が原因で浸水しています。しかし、世界銀行の政策に反し、地域住民には未だに補償が支払われていません。

・NTPC社がダムの試運転を2009年12月に開始して以来、セバンファイ川の水位が上下し、下流で深刻な浸食が起きています。浸水した河岸の野菜畑に対する補償は支払われていません。

セバンファイ川沿いの住民は、インターナショナル・リバースに対し、先週から川に魚がいなくなったと報告しています。

セバンファイ川中流のブーンセ村の住民は、「ダムから放出された水が、私たちの生業である水田やタバコ畑の浸水を悪化させるのではないかとの深刻な懸念を抱いている。当初、NTPCは浸水を防ぐためのインフラを建設すると言っていた。しかし、今は、河岸を補強する資金がないと言っている」と話しています。また、「NTPCが村の給水ポンプで汲み上げた地下水を検査したところ、9つのポンプすべての水が鉄分で汚染されていた。NTPCは、飲料水について解決策を見つけると約束したが、未だに解決策は見つかっていない」ため、住民たちは飲料水についても心配しています。

<コンセッション契約と世界銀行の移転政策に対する主な違反>

○清潔な水を供給していないこと
コンセッション契約で、NTPCは「(特に最初の2、3年間)貯水池に沈んだバイオマスが分解するため、セバンファイ川下流地域の水質が影響を受ける」ので、「商業運転開始日までに適切な質の生活用水の入手方法を開発しておく」ことを約束しました(コンセッション契約セクション4、第2部:120)。そして、先週、フル稼働を始める前、NTPCは、川の水が汚染されているので使わないようにと住民に警告しました。しかし、セバンファイ川下流ナヴァンタイ村に設置された7つの地下水給水ポンプのうち機能しているのは2つだけです。セバンファイ川上流のマハサイタイ村でも、先週の時点で機能しているポンプは2つだけでした。 水の色も茶色に変化しましたが、多くの住民にとって、川の水を使う以外の選択肢はほとんどありません。

○土地の喪失について、事前の補償がなされていないこと
世界銀行の移転に関するセーフガード政策は、世界銀行に対し、「移転のために必要な措置が採られないうちに退去や[財産への]アクセス制限が起こらない」ようにする義務を課し、「特に、土地やそれに関連した財産の収用は、補償が支払われた後にのみ行うことができる」としています(OP4.12パラグラフ10)。しかし、先週インターナショナル・リバースが訪問した村(マハサイタイ、ブーンセ、ヴェンサナン、ナヴァンタイ)で、ダムからの放水で浸水した河岸の野菜畑について補償を受け取った住民はいませんでした。

○灌漑設備がないこと
コンセッション契約によれば、NTPCは2008年までに「[貯水池となった地域で][移転させられた]世帯一戸につき、整地された灌漑済みの土地0.66ヘクタールを」提供し、「そのうち少なくとも0.16ヘクタールは米作用の水田として使うことができるように整備」しなければなりませんでした(コンセッション契約セクション4、第2部:77)。さらに、世界銀行とアジア開発銀行が2009年10月22日付けでインターナショナル・リバースに送付した書簡では、ナカイ高原の灌漑設備は「商業運転開始日前に完成する必要がある」ことが確認されています。しかし、北部で移転させられた住民たちに対し灌漑設備は未だに提供されていません。

世界銀行は、ナカイ高原の灌漑設備を完成させるため、貯水池の水位を下げる必要があると述べています。貯水池が満水となる前に灌漑設備を完成させることができなかったという事実は、ナムトゥン2ダム計画に根本的な問題があったことを示しています。すなわち、環境社会配慮プログラムよりもダム建設が優先されたということです。灌漑設備を完成させるために貯水池の水位を下げる必要があるのであれば、灌漑設備がいつ完成するのかを示す明確な工程表を伴う計画が公けにされるべきです。そして、灌漑設備が完成し、収入や食物を継続的に得るための土地の耕作が可能となったことが証明されるまで、住民に対するコメと食料の支援が継続されるべきです。

私たちは、こうした事実がコンセッション契約と世界銀行の移転政策(OP 4.12)に対する深刻な違反であると考えています。このプロジェクトは、清潔な水へのアクセスを阻害し、補償を行わずに重要な食料資源を破壊することによって、人権を侵害しています。ナムトゥン2の資金提供者であるアジア開発銀行、世界銀行、ヨーロッパ投資銀行、赤道原則を採択した金融機関には、自らが設定した要件が満たされ、ラオス住民との約束が果たされることを確認する義務があります。

私たちは、アジア開発銀行と世界銀行に対し、以下の緊急措置を即時に採ることを求めます。

1. ダムの運転を即時に停止し、コンセッション契約と世界銀行の移転政策の要件が完全に満たされたことが証明されるまで再開しないこと。NTPC、アジア開発銀行、世界銀行が約束したように、商業運転開始前の要件が完全に満たされているか否かを判断するため、独立かつ迅速で、透明性のある、説明責任を果たすことができるような調査手続きを即時に開始すること。こうした調査では、コンセッション契約のみならず、関連性のある世界銀行の政策的要件も視野に入れなければなりません。

2. 河岸の野菜畑に対する完全補償、実際に機能する給水設備、失われた漁獲に替わるたんぱく質源、洪水予防メカニズム、灌漑設備の改善といった、セバンファイ川下流の影響緩和策を強化すること。

3. NTPCが、現在、貯水池、下流の河床、セバンファイ川、メコン河で収集している水質監視データを完全かつ即時に公開すること。こうした場所において、独立性・透明性のある、継続的かつ説明責任を果たすことができるような水質の監視を行うこと。

ナムトゥン2ダムは、ラオスの貧困削減に資するとされていますが、貯水池が建設された地域で6200人以上の少数民族を移転させ、セバンファイ川下流からメコン河との合流点に至る155キロメートルの地域に暮らす12万人以上(180以上の村)の生活に影響を与える、問題の多いプロジェクトです。ダムの影響を受ける人々の大部分は、生活を支えるうえで現在も自然資源に大きく依存しており、プロジェクト実施により生活が悪化した人々の生活回復は重要な課題であり続けています。以下のウェブサイトにある9分間のナムトゥン2ダムに関するビデオもご覧になってくださるようお願いいたします。 (http://www.internationalrivers.org/en/risky-business

この書簡を読んでくださったことに感謝いたします。2010年4月9日までにご返信いただければ幸いです。


松本郁子                 土井利幸
インターナショナル・リバース     メコン・ウォッチ代表理事
ラオスプログラム担当

関連リンク:
ナムトゥン2ダムに関する9分間のビデオ「Risky Business」
http://www.internationalrivers.org/en/risky-business

ナムトゥン2ダム商業運転開始前に取り組むべき問題
http://www.internationalrivers.org/files/NT2letter_090809.pdf

ナムトゥン2ダムに関するインターナショナル・リバースのウェブサイト
http://www.internationalrivers.org/en/southeast-asia/laos/nam-theun-2

Cc:
イランゴヴァン・パチャムトゥ殿
世界銀行
Country Manager
Lao PDR Country Office

アンソニー・J・ジュード殿
アジア開発銀行東南アジア局
Director
Energy and Water Division

世界銀行理事各位
アジア開発銀行理事各位
米国財務省
日本国財務省
ナムトゥン2電力会社
ヨーロッパ投資銀行
公的輸出信用機関(ECAs)


要請書の本文と世界銀行・アジア開発銀行からの回答は、以下をご覧ください。

世界銀行・アジア開発銀行に対する要請書(2010.3.26)
世界銀行・アジア開発銀行からの回答(2010.4.8)

(文責:東智美/メコン・ウォッチ 翻訳:草部志のぶ)

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