ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 岐路に立つODA>皆さまの声を外務省に(連名呼びかけ中)
メコン河開発メールニュース2010年4月28日
事業仕分け第2弾がいよいよ最終日を迎えましたが、みなさんはどうご覧になっていますでしょうか。
ODA関係では、初日に有償資金協力(円借款)が取り上げられました。この日の議論では、フィリピン・ボホール灌漑事業がハイライトされ、事後評価の甘さが浮き彫りになりました。仕分け人からは「不当な債務を生み、かつ開発便益がないという現地の無駄を作ってはならない」「過去の事業を調査して、問題を類型化して、二度と起こさせないという作業が必要」などの指摘が続出し、「審査機能の強化」という結論となりました。
●活かされなかった教訓
さらに深く見てみましょう。
この事業は「効果がなかった」のみではすまされない問題も含んでいます。仕分けで引き合いに出されたボホール灌漑事業(I)。この事業により、農民たちは従来の農地をつぶし、従来型の分散型の農業から、ダム・灌漑施設に依存した集約型の農業に転換しました。ところが、あてにしていた水がこなかったため灌漑ができず、整地作業の費用を借金として背負うこととなってしまった農民もでてきました。
JICAおよび外務省は、同じ河川水系を利用する一連の灌漑事業に、次々に基本設計や実施可能性調査などの技術協力、無償資金協力、有償資金協力を提供していきました。灌漑用水がこない理由の検証や農民の借金の問題が解決されないまま、ボホール灌漑事業(II)へ円借款が決定されましたが、この結果、事業効果が上がらないばかりか、現地の農民に借金を背負わせるような事業が拡大されていくとが懸念されています。詳しくは下記をご覧ください。
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/bohol/background.html
●過去のODAの検証が必要
過去のODAの失敗の経験が活かされなかったのはボホール灌漑事業だけではありません。
私たちは、ODAや公的資金融資事業の15事業のレビューを行いましたが、問題が解決されないままに放置されている事例、またそのような経験が活かされないまま、同じ実施機関による類似の事業に日本のODAが供与されている事例があります。くわしくは下記のペーパーをご覧ください。
事業仕分けを機に、せめてこれらの事業の問題点がきちんと認識され、改善可能なものについては改善に向けて取り組みがなされるべきでしょう。
現在進められているODAの見直しには、過去のODA検証が必要不可欠。それが私たちの一貫した主張です。
●質の高いODAのために必要なものは?
質の高いODAを実施するためには、一件あたりに、それなりの案件形成、審査、監理のコストをかけることが必要でしょう。一方、投入可能なコストに限りがある中、リスクの高い案件はあらかじめ除外していくことが必要ではないかと考えています。たとえば、軍事費が極端に多い国における事業、軍の関与がなければ事業の実施が困難な事業、熱帯モンスーン地域における大貯水池事業などはリスクが高いと言えると考えています。
●連名呼びかけ中
このたび、私たちは、他のNGOとも協力して、ODAの抜本的な見直しに向けた提言を作成しました。提言は、(1)ODAを大規模インフラから人間の安全保障分野にシフトさせること、(2)除外リストの設定、(3)独立評価局の設置、(4)無償資金協力の趣旨の明確化――などを求めるものです。
4月26日現在、34団体52個人の皆さまから連名のご連絡を頂きました。厚く御礼を申し上げます。
日本政府への提出目標を連休明けに設定したため、締め切りを5月5日に延長しておりますので、どうぞ引き続き、ご協力を頂ければ幸いです。詳細は下記をご覧ください。
●タイ・マプタプット工業団地などを題材にODAシンポ開催
さらに、6月5日(土)には、ODAの改革に向けたシンポジウムを開催します。シンポでは、タイからゲストを招聘し、成功例とされているマプタプット工業団地へのODAを検証します。同工業団地では石油化学工業による深刻な大気・水汚染 が発生し、昨年タイ行政裁判所が事業拡張に対して仮差し止めの判決を下したことで、大きな社会問題になっています。このほか、シンポジウムでは、インフラ重視の開発による急ぎすぎた経済成長を、ラオスの現場の事例なども通して振り 返り、皆さまとともにODAの未来を考えていきます。ぜひ、こちらもご参加ください。
シンポジウム:ODAの抜本的な見直しに向けて 「複製される経済成長モデルと環境問題」
(文責:満田夏花)