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パクムンダム>社会的公正を求める人々

メコン河開発メールニュース 2010年8月26日

東北タイを流れるメコン河の支流ムン川に世界銀行の支援で建設され、甚大な漁業被害を引き起こし続けてきたパクムンダム。メコン・ウォッチの木口由香は、このパクムンダムの影響地に、1999年から通い続けています。メコン河開発メールニュースでは、この問題の経緯と最近の現地情報について5回にわたってお届けしています。

前回は、パクムンダムの水門開放が行われないことで起きる問題についてお伝えしました。今回は住民の運動についてお知らせします。

パクムンダムについてはこちらをご覧ください

第3回:社会的公正を求める人々

パクムンダムの影響住民は、サマッチャーコンヂョン(貧民会議)という全国的な住民運動のネットワークに加わって運動を続けています。7月、村人は1世帯1バーツ(約2.7円)ずつ平等に出しあって水門開放を求める垂れ幕を作りました。タイが政治的に大混乱しているのは報道でご存知の通りですが、その解決のために政府が立ち上げた改革委員会に、村人の代表も加わっています。垂れ幕は水門開放時のダムを背に漁をする住民の写真を背景に、政府の「改革」にかけて「パクムンダムの水門開放と15年間の損失の補償によってタイの改革を実現−貧民会議、XX村』と記されています。65村が参加、これから各村に配布され掲げられるところでした。この垂れ幕を作る予算が5,000バーツだったことからも分かるように、今も5,000世帯以上がダムの水門開放を求めています。

パクムンダムの一番の影響は、メコン河とムン川の魚の回遊を止めてしまったことです。住民の運動の結果、2001年から2002年にかけて一年以上調査のための試験的な水門開放が行われましたが、その際の経験から、水門が開けば環境が大幅に回復することは分かっています。これは地元大学の調査によっても証明されているのです。

調査では住民の生計回復のため、5年間の水門開放が提言されましたが、それは政府に入れられず、年間4か月開放が続いてきました。2007年からは県に設置された関係者による調整委員会が開放時期を決めてきましたが、この「解決策」は閣議で3年と期限が定められており、今年がその最終年にあたります。住民グループは、昨年から政府と話し合いを重ね、首相府大臣を座長とする「パクムン問題解決委員会」の設置が実現しました。今後のダムの運営を研究者による検討をもとに、政府が決めるためのものです。

5月にはメコン・ウォッチの木口がこの委員会下の小委員会に招かれ、ダムによる環境の変化と乾季に水門を開けないことによる河川生態系の劣化の問題、ダムの事前調査では十分な魚類のデータがないこと、2001年に調査を行ったウボンラチャタニ大学の情報をベースラインとしてその提言を受け入れるべきであることなどを指摘・提言してきました。

しかし、8月3日の委員会では、水門開放を勧める研究者や住民代表に対し、県の農業・水産部門の担当者が農地の水不足を強く主張し、話し合いは平行線に終わっています。農業用水供給がダムの影響住民の生活向上に結び付かないことは、前回お伝えした通りです。

関係者によると、今年6月、政府は県に対し直ちに水門開放を行うよう指示しているのですが、県知事がこれを拒否しています。タイではバンコクを除き、県知事は選挙によって選出されるのではなく、内務省の常勤公務員から指名されます。政府の指令が入れられない異例の事態と言っていいでしょう。8月3日の会議に参加した関係者は、水門を開放しなければタイ発電公社の予算で影響緩和事業が実施されるので、県はその予算の獲得を狙っている、と分析しています。影響緩和事業は県内に何らかの利益をもたらすでしょうが、影響住民の生計回復には役立ちません。住民グループは、この会議結果を受けて、重ねてダムの水門開放を求めていくと話していました。

一つのダムができたことで、ダムから恩恵または被害を受ける地域住民の間だけでなく、公的機関と住民の間にも様々な軋轢が生まれています。人々は約束を守らない/守れない政府や公務員に対する信頼を失ってきたのです。昨今のタイの政治的混乱の根は、このようなところにもあるのではないでしょうか。

(文責:木口由香/メコン・ウォッチ)

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