ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > J-Power発電所>バンクラでの発電所移転を巡る混乱
メコン河開発メールニュース2010年9月30日
日本の電力卸会社大手のJ-Power(電源開発株式会社)はタイで2つのガス火力発電所の建設を計画しています。しかし、住民の強い反対でチャチュンサオ県サメッタイ地区の事業地の移転が決まりました。また、サラブリ県ノンセン地区の発電所は、行政裁判で予定地の土地利用の適正さが争われています。
この問題について、現地報道や関連のプレスリリースを5回シリーズでお届けしています。第2回は、移転を巡る動きが報道された3月の記事をご紹介します。
事業についてはこちらをご参照ください。
3月の報道でタイ発電公社(EGAT)は、この発電所の運転が遅れることで電力供給に支障をきたすと主張しています。7月、タイ政府は発電所建設予定地の移転を決めますが、タイ字紙ターンセタキット紙の8月の報道では、発電所移転に伴う費用を電力の買い取り料金に上乗せすることをEGATの労組が批判しています。 一方EGATは、昨年12月までに環境アセスメントを終了できなかったのは企業の責任で、タイ政府は契約を破棄できたが、電力不足が懸念される中、国民に料金を負担してもらう決断をした、と発表しています。この事業が経済的な側面からも、タイ社会の中で議論を呼んでいる様子が伺えます。
また、電力需要予測については、それが過剰であるとタイの市民社会から強い批判がある一方、EGATなどは右肩上がりの需要増大という予想を崩しておらず、こちらも議論の的となっています。
Watcharaponn Thongrung (ザ・ネーション紙)
2010年3月3日
サイアム・エネジー社がバンクラの発電所を予定通りに建設することができなければ、タイは近隣諸国からの電力輸入を増加しなければならない可能性がある。
チャセンサオ県バンクラで建設が計画されている1.6ギガワットの天然ガス火力発電所は、2013年までに電力供給を開始する予定だったが、地域住民の反対にあっている。同発電所は、12月までに環境アセスメントの承認を受ける必要がある。
先週、エネルギー省のポーンチャイ次官によると、サイアム・エナジー社が独立発電事業者(IPP)の条件の下でバンクラから新たな場所にプロジェクトを移すことができるか否かに関し、エネルギー省小委員会は、まだ司法長官局の意見を待っている。小委員会は、司法長官局の意見なくして、バンクラ発電所問題の解決策を決定することが出来ない。
もしバンクラ発電所からの送電が遅れた場合、タイ発電公社(EGAT)には、国内の電力を確保するため、他の発電所に送電を求めたり、近隣諸国からの電力輸入を増したりするという選択肢がある。司法長官局が、発電所移転がIPPに反しないと回答した場合、エネルギー省は、草の根的反対運動を防ぐ方法を含め、サイアム・エネジー社と新たな場所について協議する。エネルギー省とサイアム・エナジー社は、EGATに電力を供給する日程や価格についても話し合う。
逆に、司法長官局がサイアム・エナジー社は建設場所を移転できないと回答したならば、同社は現在の場所で建設を開始しなければならないことになる。その場合、これまで建設が停止していたことに鑑み、小委員会は電力供給開始日の延期を考慮するかもしれない。
ポーンチャイ次官によれば、事業会社とEGATは、まだ電力購買契約を締結していない。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ 翻訳 草部志のぶ)