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J-Powerバンコク支店前でアピールする人々
(写真提供:農民生活保全ネットワーク)
日本の電力卸会社大手のJ-Power(電源開発)がタイで2つのガス火力発電所の建設を計画しています。同社はタイ発電公社(EGAT)から IPP(独立発電事業者)の枠を入札で獲得し、2つの事業会社を立ち上げて、建設に向け環境アセスメント(EIA)を実施しようとしました。しかし、農業や漁業で生活する地元住民はそれに強く反発、1つの発電所はEIAを実施できず予定地を変更、またもう1つの事業も行政裁判で発電所としての土地利用の是非が争われる模様です。住民は2008年と2010年にバンコクのJ-Power支店を訪れ、事業に反対の意向を示しています。人々は、J-Powerの社会的責任(CSR)に謳われている「社会とのコミュニケーション」が実態の伴ったものとなることを強く訴えています。(J-Powerグループの社会的責任:
http://www.jpower.co.jp/company_info/environment/pdf/er2007pdf/07-02.pdf)
2010年11月25日、ノンセン郡の住民数十名が首都バンコクのJ-Power支店を訪れ、これまでのいきさつや裁判の内容を記した書簡を届け、同社関係者と1時間ほど話し合いました。書簡には約100名の住民が賛同署名を寄せています。住民は、現地の状況や行政裁判の内容を同社幹部に伝えました。また、書簡では、憲法で保障された権利に従って反対を表明したにもかかわらず、一部住民が刑事裁判の被告となっていることなども記されています。
タイ政府は7月20日の閣議で、チャチュンサオ県バンクラ郡で計画されていたガス火力発電所の建設予定地の変更とEGATとの電力販売契約(PPA)の見直しを決定。この事業は、J-Power傘下の独立発電事業者(IPP)、サイアム・エナジー社のものでした。タイ政府の決定を受け、J-Powerも予定地変更の検討を始めました。発電所は2013年3月の商業運転開始を目指していましたが、住民の強い反対でEIAを実施できずにいました。
J-Powerはこれにより、2011年3月期第1四半期(4〜6月)で約47億円の損失引当金を計上する予定で、また新しい建設地はアユタヤ県ロジャナ工業団地になると報道されています。(2010年 7月 28日)
タイのエネルギー省小委員会は、サイアム・エナジー社が独立発電事業者(IPP)の条件の下でチャチュンサオ県バンクラ郡から別の場所に事業を移転できるか、司法の判断を仰いでいます。EGATは、バンクラ発電所からの送電が遅れた場合、2011-12年にかけて電力不足が発生するとして、国内の他の発電所の増設、近隣諸国からの電力輸入増加を検討すると報じられています。
また、サラブリ県ノンセン郡で予定されていた発電所に関し3月23日、公布を待つ都市計画に関する省令の中で、発電所予定地で工場の建設が禁止されていることを影響住民らが指摘、関係機関が発布を7年も怠っているとして、内務大臣などを相手取った行政裁判を起こしました。(2010年 3月)
EGATは、景気減速で電力需要の伸びが以前の予想を下回り、供給過剰になる懸念が出たため、独立発電事業者(IPP)に事業を遅らせるよう要請したと報じられました(2008年 12月24日付バンコクポスト紙)。
2008年10月27日、2地区の住民代表はラヨン県で石炭火力発電所に反対する住民と共にバンコクのJ-Power支店に出向き、抗議書簡を手渡しました。J-Power のシニアマネージャーが対応、住民と約20分にわたり会談しました。住民側は書簡に記した懸念を説明した後、同社の現地視察を求めましたが、ビジネスパートナーのガルフ社と相談すると回答するにとどまりました。最後に住民は現地で取れたココナツの実を房ごとプレゼント、農業地帯である建設予定地の理解を求め、解散しました。住民は環境アセスメント(EIA)が終了していないのに、事業者が既に発電所の建設地を決めているのは、住民参加の観点から不当であると訴えています。(2008年10月27日)
タイの国家エネルギー政策委員会(NEPC)は2007年12月7 日、独立発電事業者(IPP)向け発電事業の入札でJ-Powerの天然ガス火力発電2事業からの電力購入を決定しました。
2012〜14年にタイ発電公団(EGAT)への電力供給が開始される予定で、J-Powerは、東部チャチュンサオ県と中部サラブリ県にそれぞれ出力1,600メガワット(MW)の発電所を建設する計画を発表しています。(2007年12月10日)
サメッタイ地点の建設予定地周辺は果樹栽培、エビ養殖などが盛んな農業・漁業地帯で、発電所はKhlong Bang Phai運河に面しています。ノンセン地点は2年で5回稲作を行う米どころで200年の歴史があります。発電所建設予定地はRaphiphat、Huay Baの2つの運河に近接しており、周囲は水田地帯です。2008年当時、住民は環境アセスメント(EIA)が終了していないのに、事業者が既に発電所の建設地を決めているのは住民参加の観点から不当であると主張していました。また、両地区の住民とも、発電所の操業による農作物への影響や風評被害を懸念しています。
広がる水田 | 整備された水門 | 張り巡らされた運河 |
タイ初の近代的灌漑ダム(ラーマ6世ダム) | ダムに集まった鳥 | 川で魚を獲る人 |