ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオス水力発電ダム(3)>被影響地は秘密?セカタムダム
メコン河開発メールニュース2010年12月23日
メコン河開発メールニュースでは、「東南アジアのバッテリー」を目指すラオスの水力発電開発について、現地情報を交え最近の状況を5回にわたってご紹介しています。第3回は、関西電力の進めるセカタムダムの情報公開の現状です。
セカタムダムは2006年、関西電力によって「タイ国輸出用ラオス国セカタム水力発電事業可能性調査」が行われています。これは、経済産業省の「平成17年度開発途上国民活事業環境整備支援事業」としてODA予算を使って行われたものです。ここでは、初期環境調査(IEE)が実施されていますが、現地踏査を行った調査団員は経済・財務分析の専門家のみで、調査団員の中には環境社会影響を専門とする人は一人も含まれていません。ダムの影響を受けるニャフン族など社会的に脆弱なグループへの配慮や、累積的な影響、不確実性などの視点が欠けたものとなっています。これまでの経緯はこちらをご覧ください。
メコン・ウォッチでは、この調査の後に、関西電力が独自の資金で実施した環境アセスメントや移転行動計画の公開を2007年から同社とラオス政府に求めてきました。しかし、2008年7月にラオス政府から公開された資料は、社会影響アセスメントと移転行動計画の要約のみでした。その上、要約では影響村、地名など、事業地の固有名詞が一切記入されておらず、Village (1)、River (1)といった表記に終始しています。驚くべきことに各村の住民の収入、どの程度の面積の農地を使用しているか、影響の予想される面積がどれほどになるか、といった事業の影響を検討するために必要な、ごく基本的な情報も全て伏せ字で記入されています。
また、2005年にIEEの調査を開始してから25回のパブリックコンサルテーションが開催されたと記載されていますが、メコン・ウォッチが2008年8月に書簡で申し入れたのにも関わらず、議事録は公開されていません。
一方、メコン河委員会のベトナム、ラオス、カンボジアの国内委員会の要請で、アジア開発銀行が技術援助を供与している、セサン川、スレポック川、セコン川(3S)の開発の対話促進のため立ち上げられたウェブで、EIAの情報の一部がパワーポイント資料として公開されていますが、なぜかそこには影響村の名前などが記述されています。
Xekatam Hydroelectric Power Project Environmental Impaact Assesment(EIA)
このように、日本のODAを利用した調査で進められた事業でありながら、その後の情報公開は不十分です。現状では、ラオスの少数民族である住民が事業の詳しい内容を知り、自分たちの意見を事業者に伝えていくのは、極めて困難と言わざるを得ません。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)