ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >パクムンダム>水門恒久開放に23カ国から賛同の声
メコン河開発メールニュース2011年3月10日
今回、パクムンダム水門恒久開放の委員会決定を実行に移すよう、タイ政府に要請した件で、2日間ほどの緊急の呼びかけにもかかわらず世界中から共感の声があがりました。3月7日日本時間の午後5時にタイ政府に書簡を送付してからも連絡があり、最終的に23ヶ国から141団体・個人の賛同が集まりました。皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。書簡は、8日の午前中、国会近くで政府の決定を待つ約2000名の住民の方たちの前で読み上げられ、喝采を浴びたと現地から報告がありました。
しかしながらタイ政府は、下記の新聞報道にあるように、3月8日の閣議で既に委員会が調査をし、問題がないと報告したムン川の渇水問題について再度45日以内に調査をするように決定しました。ムン川の水位低下の問題は、2001年の調査でも現地の水供給に影響を与えないことが分かっています。住民側はこれを、解散総選挙が秒読みに入ったとみられるこの時期において、アピシット首相が次の政権に問題を先送りにしたとみています。
本日3月10日、パクムンだけでなく、共闘していた土地を巡る問題を抱えた他の各グループも、政府から明確な回答を引き出せずに解散することとなりました。今回の一連の行動のコーディネーター、パイチットさんから「パクムンの人々は自分たちが孤立して闘っているのではなく、世界中から共感される運動をしていると分かり励まされました。引き続き、みなさんのご支援をお願いします」との伝言がありました。
残念ながら、人々の闘いはまだまだ続くことになりました。数年来、タイに吹き荒れている暴力の嵐とは一線を画し、非暴力で社会的公平を訴える人々が軽視される現状をみると、タイの政治の先行きに危機感を覚えざるを得ません。メコン・ウォッチでは引き続き、世界銀行融資が引き起こしたこの問題について、情報発信を続けてまいります。
これまでの経緯につきましては、こちらをご覧ください。
バンコクポスト紙
2011年3月9日
タイの内閣は、ムン川流域の一部住民がパクムンダムの水門開放は上流域の干害を引き起こすことを懸念していることから、5年間は同ダムの水門の通年開放は行わないという決定を下した。
昨日(2011年3月8日)の閣議では、「公正な社会のための住民運動(P-Move)」と称する農民・漁民グループからあげられていた同ダムの水門の通年開放の要求について議論が行われた。
アピシット・ウェチャーチワ首相は閣議後、もし水門が通年開放されることになった場合、ムン川の水位に不安が残ると述べた。政府は全ての住民グループに配慮しなければならない、とアピシット首相は語った。もしダムの水門が一年中開放され、川が干上がれば、漁民だけではなく、溜められている水から利益を得ている人々も困難に陥ることになる。
アピシット首相は、「この問題は、論理的に議論されなければならない」と述べ、「もし今、水門が開放され、川が干上がれば、誰が責任を取るのか?誰が利益を得ることになるのか?誰も責任を取らないし、誰も利益を得られないだろう。雨季まで待ちさえすれば、ダムの水門はいずれにしても開かれることになる」と語った。
「もし適切な川の水位に関する情報が明らかになれば、その適切な水位が確保できる期間は、ダムの水門を開くことができる」と首相は述べた。
パクムンダムの水門は通常、毎年6月から9月までの4ヶ月間開放されており、それよりも早い時期に水門を開放する必要はないだろう、と首相は言う。
昨日、内閣はパクムンダム委員会に対し、45日以内にムン川の適切な水位に関する調査結果をまとめるように指示した。
首相府大臣サティット・ウォンノントゥーイ氏は、政府は時間稼ぎをしているわけではなく、決定をする前に明らかな情報を必要としているのだと述べた。
サティット大臣によれば、ムン川の適切な水位に関する既存の情報は、メコン河の通常の状態を前提としたものだが、メコン河の水位は、現在、危機的に低下しており、ムン川の水位よりも11メートルも低い。
ムン川はメコン河の支流である。
他の開発問題について、アユタヤ県庁の前のアジア高速道路を封鎖していた米作農民は、昨日、道路封鎖を解いた。農民たちは、金曜日(3月11日)に首相が県知事と農民が抱える問題の解決策を議論するのを待つ。
農民たちは、政府に対して、米の保証価格を引き上げ、価格保証制度の対象となる米の量を増やすように要求している。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ、翻訳 東智美/メコン・ウォッチ)