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 メコン下流本流ダム>サイヤブリダムの行方(その4)〜情報公開と市民参加

メコン河開発メールニュース2011年4月17日

連日、ラオス・サイヤブリダム建設計画についてお知らせしています。昨日に引き続き、今回は、現地『バンコクポスト』紙の社説を通して、タイ社会からあがる懸念の声、とりわけ情報公開と市民社会の不十分性についてお伝えします。

この社説は2010年10月に発表されましたが、「ラオス政府が…メコン河委員会(MRC)事務局に提出したサイヤブリダム計画の文書は市民に公開されておらず、(MRCの協議手続きに)透明性を保つことを定めた原則があるにもかかわらず、まったく透明性を欠いている」というNGOの主張を紹介し、最後に、「アピシット首相(も)…建設工事を始める前に、サイヤブリダムが引き起しうるあらゆる影響を徹底的かつ包括的に検証する作業を終える必要がある点には同意できるのではないか」と自らの主張を述べています。

実は、MRCは、最近になって、サイヤブリダムに関する重要書類を次々とHPで公開しはじめました(詳細は、以下のサイトをご覧下さい)。
http://www.mrcmekong.org/PNPCA/PNPCA-technical-process.htm#EIA

このこと自体は評価できますが、一方でこの情報公開は『バンコクポスト』の社説が取上げているような、市民社会の強い働きかけがあってはじめて実現したことです。さらに重要なこととして、情報公開は意味のある協議を進めるための条件/出発点でしかありません。MRCは、サイヤブリダム建設をめぐる決定を今月19日にも下すとしていますが、かりに建設を承認することになれば、アリバイ作りのために直前に大量の情報を公開したとの非難を免れないでしょう。

サイヤブリダムの建設中止をすみやかに決定し、メコン河開発の「徹底的かつ包括的な検証」に仕切り直しで臨むのでなければ、MRCの存続意義が危ぶまれます。

サイヤブリダム建設計画の詳細については、こちらのサイトをご覧下さい。

メコン河開発の決定には市民社会の声が不可欠

『バンコクポスト』社説【1】
2010年10月17日

先月末、ラオス政府は、メコン河本流に建設を予定している1,260メガワット(MW)のサイヤブリ水力発電ダム計画をメコン河委員会(MRC)に提案した。
同ダムは広範な環境影響をもたらすとして、現地で、タイのNGOや国際的なNGOが中止を求めているにもかかわらず、ラオス政府が計画推進の意志を公式に表明したことになる。

サイヤブリダムはラオス国内の事業であるが、タイでも、メコン河がラオスとの長い国境のほとんどを占め、コミュニティの多くが河や周辺の生態系に依存して生活しているため、深く関係している。また、タイ企業がこのダムを建設し、タイ発電公社(EGAT)が事実上100%の電力を購入することで合意している。電力は送電線を通じて東北部ルーイ県にあるEGATの変電所に送られる。

近年の大規模発電計画をめぐるタイでの経験は、計画のごく初期の段階から透明性と市民参加が必須であることを示している。しかし、先週、インタープレスサービス(Inter Press Service News Agency)の記事が明らかにしたように、環境保護団体は、このダム建設計画が、不透明なやり方で、そして、被害をこうむるかもしれない人びとが参加することなく進められるのではないかと強い猜疑心を持っている。

「セーブ・ザ・メコン(Save the Mekong)NGO連合」は、MRCのジェラミー・バード代表執行役(CEO)に宛てた10月13日付書簡の中で、「ラオス政府がPNPCA(MRCの協議手続きである、通告・事前協議・合意の手続き)【2】にしたがって通告し、MRC事務局に提出したサイヤブリダム計画の文書は市民に公開されておらず、PNPCAには透明性を保つことを定めた原則があるにもかかわらず、まったく透明性を欠いていると指摘している。

さらに書簡は、MRCが透明性を誓っている一方で、PNPCAの実際の手続きの説明になると、「意図的にあいまいな言い回しを含み」、また、「市民との協議の機会を確約していない」と続けている。

これに対して、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナムを加盟国とする政府間組織を代表するバード代表執行役は、PNPCAとMRCの立場を擁護し、「四カ国の間でメコン河本流開発が国境を越えてもたらす影響を議論する場が存在すること自体が、環境外交を遂行しようとする意欲を示している」と語ったとIPSは報じている。

バード代表執行役は、「特定事業に関する事前協議は、追加的な市民参加を公式に義務付けるものではないが、排除するものでもない。メコン河下流国政府は近々、事前協議手続きを参照しつつ、市民参加や協議会を通じて、いかにして重要な利害関係者(stakeholders)を巻き込んでいくかを議論することになる」と述べた。こうした答弁は、透明性や市民参加に関してMRCの前向きな姿勢を広く示すものだが、曖昧でもある。

サイヤブリダムはメコン河下流で計画されている11カ所ほどの水力発電所の第一号に過ぎない。このうち9カ所はラオス国内にある。

セーブ・ザ・メコン連合によると、サイヤブリダム建設計画で2,130軒の家屋が水没し、約20万人の人びと(多くはタイ国民)が「生計手段、収入、食料確保への悪影響に苦しむ」ことになる。

中国は雲南省で3カ所のダムを操業しており、4カ所目となるダム壁世界最高の小湾水力発電所が2012年に完成する。MRCは先に、中国南西部の河川水位が50年間で最低であったと発言している。

9月10日、タイ北部と北東部のメコン河沿いに暮らす住民の代表者たちが、アピシット・ウェチャチワ(Abhisit Vejjajiva)タイ首相に、サイヤブリダムからの電力輸入を断念するよう求める書簡を提出した。また、タイの市民組織50団体と「メコン河のためにタイ民衆ネットワーク(Thai Peoples Network for the Mekong)」が別途に提出した書簡でも、アピシット首相に電力輸入をやめるよう求めている。

「政府の決定は政治家と官僚の中だけでなされたもので、市民社会の参加を無視し、タイをはじめとする下流域国に国境を越えてふりかかる被害を十分に考慮していない」と書簡は述べている。アピシット首相が現段階で電力輸入をあきらめることはなさそうだ。しかし、建設工事を始める前に、サイヤブリダムが引き起しうるあらゆる影響を徹底的かつ包括的に検証する作業を終える必要がある点には同意できるのではないかと思う。

【訳注】
【1】英語原文は、以下のサイトで閲覧可能です。
http://www.bangkokpost.com/news/local/201774/mekong-decisions-need-civil-society-input
【2】PNPCAは、英語原語では、Procedures for Notification, Prior Consultation and Agreement

(文責 メコン・ウォッチ/翻訳 神崎尚美)

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