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サイヤブリダム
サイヤブリダムは、ラオス国内部分を流れるメコン河本流の、古都ルアンパバンから約150キロメートル下流に建設されます。ダムの長さは810メートル、高さは32メートル、貯水池面積は49平方キロメートルとなる予定です。設備容量は1,260MWと見込まれ、主にタイへの売電が行われることになっています。サイヤブリダムの一番の目的は、外国為替収入を増加させ、ラオスの社会的・経済的発展のための資金調達を行うことです。ラオス政府の計画では、サイヤブリ水力発電プロジェクトは2019年に操業を開始する予定です。
- プロジェクト名
- サイヤブリ水力発電プロジェクト
- プロジェクト所在地
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ラオス北西部
ルアンパバンから約150キロメートル下流
- 調査・実施主体
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実現可能性調査、環境影響調査、社会影響調査:タイ企業 チョー・カンチャー
ン社(Ch. Karnchang Public Company Ltd)がTEAM consulting Engineering and Management Co., Ltdに委託して実施。
実施企業:サヤブリ・パワー社(Xayaburi Power Co.,Ltd)
- 事業費・供与先
- 事業費約30億米ドル
- 状況
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2010年9月22日、ラオス政府は公式にサイヤブリダムの計画をメコン河委員会(MRC)へ提出しました。関連する問題全てについて詳細分析を行い、各国がプロジェクトの結論を出すまでに6ヶ月かかる見通しです。この計画書が出されたことにより、メコン河委員会の定める「通知、事前の協議および同意の手順(PNPCA)」が初めて実行されたことになります。このPNPCAでは、メコン河流域の人々や下流の環境に影響を及ぼす可能性のある開発事業について、事前にメンバー各国間で情報共有を行う取り決めとなっています。MRCの委託で行われたInternational Centre for Environmental Managementが作成した戦略的環境アセスメント(SEA)によると、サイヤブリダムの計画によって2,130世帯の移転が必要と考えられています。
- 懸念される問題点
- サイヤブリダムは、生息する魚類への影響を軽減するため、魚道を2か所設置する予定です。しかし、戦略的環境アセスメント(SEA)は、これらの魚道が有効ではないとしています。その理由として、ダムの高さが運用可能とされている魚道(30メートル)よりも高いこと、仮に、魚が魚道を通り越せた場合でも、上流の生息環境がダムによって改変され、魚の生存に適さない可能性があることが指摘されています。メコン河には50種以上の回遊魚が存在するとされ、それぞれ異なった水文条件で回遊しています。これらの情報がないままダムが建設されれば、魚の回遊に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、売電による経済発展を目指すラオスの政策は、販売先のタイの政治や経済状況に大きく左右される不安定なものです。更に、この事業には環境アセスメントが公開されていない、という情報公開上の大きな問題があります。
建設予定地のラオスでは、現地住民が事業に意見を言う機会はほとんどありません。MRCの実施するPNPCにも、影響を受ける住民の声を反映させる手続がないのです。実際、PNPCAに計画が通知されてから数ヶ月が経ちますが、審査状況についての情報も公開されていません。
サイヤブリダム建設は自然資源に依存して生計を立てているラオスの人々やその下流のタイの漁民の生活に重大な影響を与えることが懸念され、タイ側からは既に強い反対の声が上がっています。
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