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タイ原発>日本のNGOのタイ訪問に高い関心

メコン河開発メールニュース2011年6月3日

タイでは原子力発電所建設計画に対する市民の懸念が高まっています。

メコン・ウォッチは、4月タイのNGO「生態文化研究会」主催セミナーに協力、原子力資料情報室の伴英幸さんを講師にお迎えし、原発建設予定地など3か所を回りました。東北タイのコンケン県、ウボンラチャタニ県ではタイNGO主催のセミナー、首都バンコクは国立チュラロンコン大学で報告していただきました。

福島第一原発の事故のショックはタイにも伝わっておりメディアの関心も高く、報告の合間にはコミュニティラジオから雑誌、大手メディアの衛星放送など、10件ほどの取材を受けました。

そのうちの一つ、タイのメディア大手、ネーショングループのNation Channelでのインタビュー内容を紹介いたします。4月末の時点でのタイのメディアの関心は「なぜ日本人は反対しないのか」、「日本政府は何を隠しているのか」、「メディアは正しく報道しているか」でした。詳しくは以下をご覧ください。

また、メコン・ウォッチでは6月19日に、「輸出される危険−アジアの原発開発への日本の関与」と題したセミナーを開催します。伴さんにも再びご登場いただきます。こちらもぜひご参加ください。

2011年5月11日 Nation Channel「(番組名)思考を喚起する」

原子力資料情報室共同代表インタビュー
23分40秒

ナレーション:2週間前、原子力資料情報室共同代表伴英幸さんが、タイのNGO生態文化研究会の招きでタイを訪れ、日本の原子力発電所の経験について意見交換を行いました。タナーヌット・サグアンサック記者の特別インタビューでお届けします。

 

0:24 福島の原発事故について、(タイで)何を伝えようとされたのでしょうか。

【回答】 まず原子力発電所の施設そのものがどういう状態にあるのか、まだまだ危険な状態を脱していないことを伝えました。それから原発から30キロメートルの範囲の人々が避難している実態。経済的に非常に大きなダメージを受けていること。また、放射能によって野菜や水産物などが汚染されたので、汚染の実態について報告しました。

1:13  タイの人々は主にマスメディアから情報を得ていますが、市民側として何か、それとは異なる情報を伝えられたのでしょうか。

【回答】こちらの方では、(原発は)安定な状態であるとか、輸出しようとしている原発は今事故が起きているタイプのものとは違うなど、そういう風な報道がされていて、それは今私たちが考えている、あるいは福島で起きている実態とは少し違っていると感じました。具体的には、福島では事故が起きたけれども日本の技術を使えば原子力は安全である、ということがこちらには伝わっているようですが、私は事故というものは必ず起きるものであって、決して100%安全ということはないということを伝えてきました。

2:43  日本政府は福島の原発は古いシステムだから事故を起こし、新しいものは大丈夫だ、と国民に説明していますか(訳注:タイの原子力推進派が、福島の事故原因をこのようにタイ社会に説明しているため)。

【回答】 日本では、今、福島の事故が起きたことが大きな話題と大きなショックを与えていますので、今のところ他(の原発)は大丈夫だという宣伝をする余裕がない状態で、そういった報道などはありません。しかし、原子力を進めている人たちは新しいタイプのものでは(事故は)起きないと考えているようです。一方、他の原子力発電所では、津波対策ということで、1キロメートルくらいの防波堤を作るとか、いろいろな対策が緊急にたてられて、政府に報告があがっている状態です。これは、新しいタイプのものだからといって安全ではない、ということを示していると思います。

3:58  日本人はとても規律があり、また自分の政府を非常に信頼している、と海外では言われています。原発に対しても、日本人は反対していないように見えますが。

【回答】 今回の事故の対応として、政府や原子力専門家は信頼をことごとく失っています。それは対応が遅れているとか、政府が十分に事態を把握していない状態というのがだんだん見えてきて、(市民は)不信を募らせています。日本の一般市民は、事故が起こる前から原子力の安全性について不安を持っていて、世論調査でも8割くらいの人たちは不安で、事故が起こるという風に思っていました。今、それが現実のものとなって、いよいよ原子力に対する対応として(原発を)やめていくべきだと考える人たちが増えています。こちらでは日本の一般市民が原子力を信頼している、受け入れていると伝えられているかもしれませんが、決してそうではありません。政府も原子力に対して市民の信頼を得られていないというのはわかっていて、毎年数十億円の宣伝費を使って、テレビや新聞で広告を出したりして、原子力は安全だ、安全だと宣伝をしています。それを裏返せば、市民が不安に思っていてとても信頼できるものではないという風に感じているから、政府がそういうことをやっているわけです。

6:15 (タイと同様)日本政府も原発に対する多大な広報をしているということですね。

【回答】 毎年数十億円ずつ出されていて、最近は、小学生から原子力の宣伝をしないとだめだということで、小学校にパンフレットを配るとか、授業で原子力の問題を扱うとか、そういう風な傾向になっています。この間の25年前のチェルノブイリ事故以降、原子力を専攻する学生がすごく減ってきて、小さい頃から原子力の安全性を刷り込んでいるということで、そういうことも含めて膨大な宣伝費を使っています。

7:17  小学校の教育課程に、原子力について既におりこまれているのですか。

【回答】 はい、部分的には。全部の学校が実施しているかは知りませんが、いくつかの学校ではそういう授業が進められています。

7:38  既に一部は入っているということですね。しかし、福島の事故でこれに反対する声が出てくるのではないですか。

【回答】 もともと反対の声があって、教えるのであればプラスの面とマイナスの面と両方を教えなさいという先生の意見が強かった。だけど、文部省はマイナスの面についてはあまり強調したくないので、宣伝の部分を強くしたものになっていました。今回福島の事故が起きてから、そもそも教育の場面に原子力の問題を持ってくることへの反対も強くなると思いますが、仮に教育するとすれば、ネガティブな部分をしっかりと教えるべきです。

8:32  お話ですと、日本人の多くが原子力に反対しているということですが、海外からはそれが存在しない、もしくは非常に少ないように見えます。市民の反対の実態はどうなのでしょう。

【回答】 見えないのは、やはりマスコミ・メディアがそれを取り上げない。これはメディアの深刻な問題があると考えています。メディア自体が政府の発表だけを安易に報道するという姿勢があって、なかなか反対する人の声を拾うということができていません。私たち、反対側としては非常に多様な形の反対の仕方があります。日本には17か所に原子力発電所があって、それぞれの施設の周辺の人たち、いくつかの県を合わせた周辺の人たちが停止を求めるということをやっていますし、大阪、東京、名古屋であるとか(でも同様です)。具体的に一つの例を挙げると、4月10日に東京では2か所でデモがあったのですけれども、合わせて18,000人くらいの人がデモに参加した。これの前は多くて200から300人だったが、事故後にふくらみ、合わせて18,000人くらいの人がデモに参加して、原子力からの撤退を訴えました。

10:33  NHKなどは世界中の人が信頼しているメディアですが、今回の原発事故に関してその報道をどう思われますか?

【回答】 私たちの目で、批判的に見て言いますと、NHKは非常に信頼されているところではあります。しかし、今回の報道について言うと、結局NHKも原子力の 専門の人の判断に頼って報道しています。その専門の人は原子力を推進する立場にあるので、事故の影響をなるべく小さく見せるという傾向があって、NHKもそれに引きずられるような形で報道していました。今もそういう面があって、市民の間からは、少しNHKの報道の姿勢が推進に偏りすぎている、という批判は多く聞かれます。

11:55 日本人は反対しているのに、マスメディアがあまり取り上げないということですが、原子力資料情報室ではどのように人々に情報を伝えているのでしょう?

【回答】 二つの方法があります。一つは、私たちは積極的にニュースレターを出していますので、それが一つ。それから、今はインターネットが普及してきているので、今回の事故の際には、Ustreamでずっと批判的な見解あるいは批判的な専門家の人に解説をしていただくということで伝えています。

12:40  例えば、4月10日に1万人以上の多くの人がデモをしたといいますが、私はその報道を見ていませんが。

【回答】 これは、メディアは取り上げませんでした。だけど、先ほど言いましたUstreamやYou-tubeでさかんに様子が伝えられて、多くの人はそちらの方で情報を入手して見ている。

13:15  日本は原発で問題が起きました。将来の原子力政策はどうなっていくと見ていますか?

【回答】 少なくとも、ここ数年というのは原子力をさらに増やすという計画が段々とコンセンサスを得る方向になってきていましたが、今回の福島の事故でそれは完全につぶれてしまって、新しい政策が必要になっています。既に動いている原発も、少なくとも福島第一原子力発電所の方は、4基は廃炉が確実で、残り2つについても廃炉の方向に進むと思われます。その他もいくつかあるのですが、原子力の廃止を求める声が強くなっているので、私は今回の事故が一つ、大きな運動になって、これからは原子力から撤退する方向に向かうと見ています。発電能力でいうと、原子力がなくても、大体電力についてはまかなえる、供給できるくらいの電力がありますが、日本は京都議定書に批准している国ですので、CO2削減も同時に達成しないといけません。原子力の撤退とCO2の削減、この2つを同時にやっていかなければいけない、ということが日本ですぐに明日にでも原子力を止めるわけにはいかない理由になっていています。

15:10  タイのジャーナリストの中では、日本は資源がないために選択肢がないので、原子力に依存している、という人が多いのですが、本当にそうなのでしょうか。

【回答】 原子力は電気を作る施設ですので、電気を作る方法というのは非常に多種多様にあって、原子力しかないからという選択ではないのです。むしろ今から50年ほど前に、今日こんなに大変な状態になるということは考えないで、非常に安易に原子力を進めて、一つの大きな産業として形成されてしまっている。市民の間では、先ほど言った2つの原子力をやめて、かつCO2削減という二つの方向を満たすやり方というのでは、いくつかシナリオを持っていて、これからはそのシナリオをどう実現していくのかという議論が活発に行われていくと考えています。

16:20  どのようなオルタナティブ・エネルギーのシナリオがあるとお考えですか。

【回答】日本のエネルギー需要全体を技術的に減らしていくということ。そういうシナリオがあります。大体40-50%くらい今のエネルギー消費を減らせる。それは具体的には太陽光、風力、日本の場合は、森林が豊富ですので、森林の間伐材を使ったバイオマス発電であるとか、小規模な水力発電とか。現状は大規模な発電で、送電するというシステムですが、それに対して、分散型、コミュニティ単位である程度の電力需給を達成していくようなシステムをいくつかの場所に作っていくという選択肢があります。

17:19  そのようなオルタナティブを日本政府に持ちかけて、受け入れられるのでしょうか?先ほどのお話では、日本の原子力産業が非常に巨大だということだったのですが。

【回答】 これは、市民の声がどれだけ強いかによって、受け入れられる、受け入れられないということが大体決まってきて、これからの課題ですが、受け入れられる余地というのは非常に大きいと思っています。

17:55  日本政府は原子力を積極的にPRしてきたわけですが、(現在の事故について)本当のことを言っているとお考えですか。

【回答】 毎日、原子炉のデータとか環境放射線の測定結果などが出されています。その中身については疑ってはいませんが、市民が納得する情報が全部オープンになっているのかというと、そうではないと考えています。私たちとしては政府に対して、もう少し情報を公開してほしいと思っています。海外に出て、日本の政府の情報発信についていろいろと質問を受けるのですけれども、事故が起きた後、原子力を推進した専門家の人たちが、一斉にメディア・新聞で事故をあまり大きく見せないように発表、コメントを出していったのです。それがかえって、市民の間に不安を与えて、そのコメントは十分ではないわけです、事態を詳しく説明していない。そこが一番大きいと思っています。政府への信頼をなくした一番大きい理由というのは、原子力の専門の人たちが事故を小さく見せようとしたことによります。

19:32  ということは、日本の国民は今あまり自分の政府を信頼していなということですね。

【回答】 原子力に関しては全く信頼されていませんね。私たちの事務所では事故が起きてから、今でもそうですが、毎日電話が鳴りっぱなしで、本当のところはどうなっているのかという問い合わせ、放射能が漏れて、普通に暮らして安全なのか、そういう問い合わせが殺到しています。その時に、電話口の人が必ずいうことは、政府はいろいろ言っているけれども信用できない、ということです。

20:15  日本の今回の経験から、タイに何を伝えたいとお考えですか。

【回答】 まず一つは、日本の技術は安全で、日本の国内でもそうですが、優秀であって事故は絶対起こらないという宣伝をしてきた、それがしかし、史上2番目ぐらいに大きな、史上最悪になるかもしれないけど、大きな事故が起きたということ。ですから、原子力について絶対安全はないということが証明された、というのが一つ。もう一つは、いったん事故が起きると、原子力発電所の後始末の問題、避難をした人々への補償の問題を合わせると、2兆円を越える、場合によっては3兆円を越えるくらいの大きな被害となる。結局2つのことです。100%安全はないということ、そして事故が起きたら、それが莫大な損傷になり、健康に影響が大きい。場合によっては住めない地域が出てくる。それが今回の福島事故。それを十分に教訓として、日本の悪い事例から学び取って判断をしていただきたいという風に思います。

22:02  最後に伝えたいことはありますか。

【回答】 仮に事故が起きなくても、原子力発電所で使い終わった燃料というのは、それを環境に出ないように安全に管理し、処理しないといけない。しかしその技術というのは世界中どこでも確立されていないという状態です。一度原子力を使い始めると、最初はいいかもしれないけど、後で使い終わった燃料の始末の問題で非常に頭を悩ませることになります。

以上

(文責 メコン・ウォッチ)

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