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 メコン下流本流ダム>サイヤブリダムをめぐる諸問題(その8)〜サイヤブリダムなしでもタイの電力は足りる

メコン河開発メールニュース2011年12月6日

ラオス・サイヤブリダムが必要な根拠としてあがっているのが、タイの電力需要の増加です。ところが、専門家がタイの電力需要予測を検証したところ、「20年後の電力需要が、サイヤブリダム10基分に相当する13,200メガワットも余剰に見積もられている」という結果が出ました。タイの電力需要から考えると、サイヤブリダムはむしろ再検討すべき事業と云えそうです。

そこで、将来の電力需要を過去の実績に即して下方修正した上で、省エネルギーや熱電併給(コジェネレーション)といった手段を活用すれば、タイの電力は将来的にも十分であるばかりか、2030年までに電力料金を12%下げ、670億ドルの資金を節約し、温室効果ガスの排出も削減できるとしています。以下では、この「オルタナティブ」な電力需要予測の概要を記者発表の日本語訳でご紹介します。【1】

タイの電力需要の水増しについては、メコン・ウォッチでも、ラオス・ナムトゥン2ダムが不要であることを示すために何度か紹介してきました。【2】今回は、同じ視点からサイヤブリダムの再検討を提言しているわけですが、このように電力需要予測にさかのぼった検証は、個別の発電所や電源の是非を議論する前に必要な作業です。実際、以下の発表では、同じく電力需要の観点から、タイには原子力発電所もまったく不要であることを論証しており、今後とも注目すべき観点です。

サイヤブリダムの電力は不要〜タイの将来を安価で安心な電力でまかなう新しい電力開発計画

2011年12月3日

本日公表された「タイのオルタナティブ電力開発計画(Alternative Power Development Plan for Thailand)」によって、タイの将来の電力需要は、これ以上隣国のダムからの電力輸入に依存せず、石炭発電所や原子力発電所の建設に投資しなくても、十分にまかなえることがあきらかになった。つまり、メコン河本流に計画されているサイヤブリダムの電力は不要であり、省エネ、再生可能エネルギー、熱電併給(コジェネレーション)に投資することで、2030年までに電力料金を12%下げ、670億ドルの資金を節約できるのである。

「今回の分析で、タイ政府は、消費者の利益を最重要視するのではない取り決めをラオス政府と結ぶことで、タイ市民を裏切っていることがはっきりとしました。サイヤブリダムの電力は、将来的に不要なばかりか、他の電源と比べると高価なのです。今、強く求められているのは、スマート・エネルギーの未来を目指すことです。タイ政府はサイヤブリダムをはじめ、他のメコン河本流ダムからの電力輸入契約を即座に破棄して、将来の電力需要を予測するために、市民が参加する公明正大な手続きを採用するべきです」と、インターナショナル・リバーズのピアンポン・ディテート・タイキャンペーン担当は語った。

オルタナティブ電力開発計画は、タイの電力政策を専門とするチュンチョム・サガラシ・グリーソン氏とクリス・グリーソン博士が共同で作成した。両氏はタイ政府の現在の電力開発計画(PDP2010)を分析し、20年後の電力需要が、サイヤブリダム10基分に相当する13,200メガワットも余剰に見積もられていると結論付けた。両氏は、また、2017年まで、新規の発電所建設や省エネ手段が必要でないほど、タイには発電能力に十分な余裕および計画中の発電所が存在することも明らかにした。

「現在のタイの電力セクターの立案過程には大きな問題点があります。安心で安価な電力源に投資し、将来の需要を良識的なやり方で予測すれば、電力料金が安くなるばかりでなく、タイ国内の温室効果ガスやその他の有害物質の排出も削減することができます。環境破壊をもたらすメコン河本流ダム、石炭・原子力発電所といった事業は、タイにはまったく必要ないのです」と、共同研究者の一人、チュンチョム・サガラシ・グリーソン氏は語った。

今回の分析では、過去25年間にわたる傾向をたどり、現状に基づいた形で2030年までの電力需要予測を立てた。すると、過去20年間、タイ政府の電力需要予測は一貫して将来の電力需要を過剰に見積もり、不要な投資と高額の電気料金の原因になっていることが判明した。オルタナティブ電力開発計画では、需要予測を下方修正した上で、電力供給に15%の余裕をもたせるために2030年までに14,387MWの追加電力が必要となるとしている。この電力は、以下の手段でまかなうことができる。

1) すでに建設中の発電所および計画中の再生可能エネルギー源と熱電併給。サイヤブリダムをはじめとする水力発電の新規輸入は含めない。
2) タイ政府の「省エネ20年計画」に匹敵する程度の省エネ対策および需要側管理(demand side management)。これは電力総消費量20%分の節約に相当する。
3) 4,800メガワット相当の高効率熱電併給ガス火力発電。熱電併給(コジェネレーション)発電所では、電気だけではなく、発生した熱も産業・商業目的に活用するため、発電所の効率を著しく高めることができる。対照的に、一極集中型の発電所で発生した熱は冷却装置を通して廃棄されるのが通常であ
る。
4) 一部の現存発電所の耐用年数の延長。

タイ政府の2010年電力開発計画では、2030年までの二酸化炭素排出量が一人当たり75%の増加となるのに対して、オルタナティブ電力開発計画では、一人当たり7.7%の削減に転ずることができるとしている。

「タイの電力開発計画を見ると、過去の電力需要を踏まえず、まったく不要な数の、しかも不適当な種類の発電所を処方するなど、立案過程が致命的であることが分かります」とチュンチョム・サガラシ・グリーソン氏は語った。「現在の電力開発計画は見直しの必要があり、立案過程も変更して、政府のエネルギー政策が目指すものに幅広い尺度と説明責任を組みこんでいかなければなりません。さもなければ、タイ市民は、好ましからざる、しかも必要でない投資に対して、毎年34億ドルを無駄にすることになります」。

詳細(英語)
・タイのオルタナティブ電力開発計画(Alternative Power Development Plan for Thailand)要約
http://www.internationalrivers.org/en/node/7010

・サイヤブリダム:メディア用資料
http://www.internationalrivers.org/en/node/6403

問合せ(英語・タイ語)
・チュムチョム・サガラシ・グリーソン(Chuenchom Sangarasri Greacen)
+66 817 733 788、chomsgreacen@gmail.com
・ピアンポーン・ディテート(Pianporn Deetes)、インターナショナル・リバーズ
+66 814 220 111、pai@internationalrivers.org

【注1】原文(英語)は、以下で閲覧可能
http://www.internationalrivers.org/en/2011-12-2/power-xayaburi-not-needed-thailand
【注2】以下を参照
・「ナムトゥン2の電力は必要か?〜タイ国家電力開発計画の分析から出た答え」
ウィトゥーン・プームポンサーチャルーン、『フォーラムMekong』第6巻2号2004年、8〜11ページ
・「ナムトゥン2ダムは必要か?〜タイのエネルギー政策から問う」
(ウィ トゥーン・プームポンサーチャルーン、『フォーラムMekong』第11巻2号2011年、27〜29ページ)

(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)

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