ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >メコン下流本流ダム>サイヤブリダムをめぐる諸問題(その11)〜メコン河委員会は評議会での合意を意味あるものにできるか?
メコン河開発メールニュース2011年12月13日
12月8日、メコン河委員会(MRC)評議会が「本流ダム開発計画の影響を含めて、メコン河の持続可能な開発と管理に関する追加調査が必要である」と合意したことは、前回のメールニュースでお伝えした通りです。
この合意を受けて、日本政府をはじめとするMRCの「開発パートナー」(ドナー国政府・支援開発機関など)は、9日、共同声明を発し、次のように述べています。
「調査は、知見が不足すると思われている部分を補い、(メコン河)流域が現時点でもたらす環境・経済・社会上の資源の総価値を明らかにする機会となるべきだ。こうした、根拠に基づき、協議を経、総合的な調査がサイヤブリダムをはじめとするメコン下流本流ダム計画を進めるべきか否かを判断する手続きに有用になるだろう」(「開発パートナー共同声明」第4段落。原文は、以下のサイトで閲覧可能)。
http://www.mrcmekong.org/news-and-events/speeches/joint-development-partner-statement-donor-consultative-group-18th-mrc-council-meeting/
この声明を素直に読めば、総合的な追加調査を実施し、その上であらためてサイヤブリダムを含む下流本流ダム計画の是非を決することになります。
ところが、現実はそれほど単純でもなさそうで、以下に紹介する現地紙も指摘するように、とりわけラオス政府が今後きちんと調査・協議に協力するのかは予断を許しません。ラオス政府はすでにサイヤブリダムの関連工事を開始していますし、この件が問題化した後の今年6月、開発パートナーに対して「他の流域国から十分な理解が得られるまで(サイヤブリダムの)工事は行わない」と明言しながら、今に至るまで工事を中止した様子がみえません。
MRCが12月8日の合意をどのように実質化していくのか、今後とも注目したいと思います。
Kristin Lynch&Mary Kozlovski
プノンペン・ポスト
2011年12月9日
だれも「延期」という表現を使いたがらないが、論争になっているラオス・サイヤブリダム計画は、少なくとも予想される影響についての追加調査が完了するまで待機状態となる。
昨日(12月8日)、長時間の非公開協議の末、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム四カ国政府の閣僚は、またしても発電容量1,260メガワットのサイヤブリダム計画に対して決定を下さず、代わりにメコン河本流開発計画の影響について追加調査を実施する旨提案した。
「メコン河委員会(MRC)評議会はメコン河の開発事業について追加調査の実施を支持する…ことで合意しました」と、MRC合同委員会のテ・ナブット(Te Navuth)カンボジア代表は、昨日の協議後に記者団に語った。
「つまり、明確な結果が判明するまで、工事は始まらないということです」。
MRC加盟国が総額38億ドルのサイヤブリダム計画を延期すると決めたのは、昨日で二度目のことだった。4月にもMRC合同委員会で明確な結論を出すことができなかった。
4月の会合では、カンボジア、タイ、ベトナムがサイヤブリダムの影響について追加調査を要請し、ベトナムは本流ダム計画を全カ所10年間延期すべきであると主張した。
サイヤブリダム計画に対しては、これらラオスの隣国政府に加えて環境保全団体からも、河川の水位と漁業資源への悪影響の可能性を懸念する声があがっている。
環境保全団体インターナショナル・リバーズは、昨日の声明で、ラオス政府がサイヤブリダム建設の中断を誓約するよう呼びかけている。
「MRC加盟国政府は追加調査を実施するとの結論を出すことで責任を果たしました。しかし、私たちは、これで建設工事が止まるのか、調査日程はどのようなものなのか、協議手続きはどうなるのか、といった点が今後明らかになってくるものと思っています」とインターナショナル・リバーズのエイミ・トランデム(Ame Trandem)東南アジアプログラム・ディレクターは『プノンペン・ポスト』紙に語った。
表面上は合意に達したものの、四カ国の代表は協議について固く口を閉ざし、ラオスが計画を進めるのかどうかについても見解がまちまちだった。
ラオス外務省のサルムサイ・コマシット(Saleumxay Kommasith)内部組織部長は、今回の決定を延期と呼ぶことを拒んで、「単に追加調査が必要である」としただけだ、と述べた。
タイ自然資源環境省水資源部にあるメコン河管理局のドゥオンジャイ・シタワッチャイ(Duangjai Srithawatchai)氏も、MRCの協議手続きは「完了」し、MRCが「建設を許可すべきかどうか云々することはできない」と語った。
MRCのスラサック・グラハン(Surasak Glahan)広報担当は、「(MRCの)手続きには法的拘束力はない」ことを認めつつ、加盟国は「ここに集まり協議したことで手続きに対して責任を示したのです」と語った。
原文(英語)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.phnompenhpost.com/index.php/2011120953268/National-news/one-more-dam-delay.html
(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)