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メコン下流本流ダム>守られない「サイヤブリダムの工事延期」の約束 

メコン河開発メールニュース2012年7月17日

カンボジア、ベトナム両政府や流域住民からの反対の声に押されて、ラオス政府は、「サイヤブリダムの建設工事を流域国の懸念が払拭されるまで延期する」と公言してきました。

ところが、6月中旬、NGO関係者がサイヤブリダム予定地を訪問すると、建設工事を請け負うタイ企業チョーカンチャン社が、川床の掘削・拡張や住民移転を進めている様子が見て取れました。NGOが撮影した現場の様子はBBCでも取り上げられ、以下のサイトで視聴できます(2分44秒、英語)。
http://www.bbc.co.uk/news/world-18700473

これに対してラオス政府は、国内メディアなどを通じてあらためて工事の延期を強調し、現在行われている作業は地質調査の一環であるなどと反論しています。また、7月16日・17日の両日、流域国・援助国政府やメコン河委員会(MRC)の代表を招き、サイヤブリダムに関する説明会とダム建設予定地の視察を実施するとしています。

サイヤブリダムがもたらす環境・社会影響については、MRCが、日本政府をはじめとする援助国政府に対して追加調査のための資金援助を求める準備を進めています。しかし、意味のある調査を実施するためには、建設予定地周辺の環境や住民に影響を及ぼす工事は中断されなければなりません。

以下では、チョーカンチャン社による工事の様子を伝えるインターナショナルリバーズの記者発表を日本語訳で紹介します。

チョーカンチャン社、サイヤブリダム建設工事を続行

インターナショナルリバーズ(IR)記者発表
2012年6月27日(水)

タイ・バンコク発 インターナショナルリバーズ(IR)が先にサイヤブリダム建設予定地を訪問したところ、タイ企業のチョーカンチャン社はすでにかなりの建設工事や移転作業を実施しており、行っているのが初期作業だとの主張に反していることが分かった。

先ごろチョーカンチャン社は、流域国の同意を得るまで工事を延期するとしたラオス政府の立場に従うと公言しておきながら、先週IRがダム建設予定地および影響村15ヶ所を訪問すると、建設工事が行われている様子が目撃できた。これらの作業には、ダム建設予定地の川床の掘削・拡幅、巨大なコンクリート製の防壁の建設、チョーカンチャン社の現地作業員の拡充などが含まれていた。
フアイ・スアイ(Houay Souy)村の住民については、2012年1月、すでにダムの放水路に予定されている場所から近郊のサイヤブリ町に移転していた。

IRのエイミ・トランデム(Ame Trandem)東南アジア・プログラム・ダイレクターは、「サイヤブリダムの工事や移転を進めることで、チョーカンチャン社は、メコン河の未来を決めようと展開している外交上の手続きを完全に無視したことになる。チョーカンチャン社は、咎められることもなく、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム政府の信頼関係を台無しにしてしまった」と語った。

6月2日、チョーカンチャン社のアスウィン・コンシリ(Aswin Kongsiri)理事長は、タイ・バンコクポスト紙に対して、「事業を実行するかどうかは、最終的にラオス政府が決めることであるが、わが社は大メコン圏各国の全関係者が合意するまで静観したい」と語った。アスウィン理事長は、チョーカンチャン社は工事をまだ始めていないとしながら、「したがってわが社は事業の準備、とりわけ財政と環境影響評価に焦点を当てている」と述べていた。こうした主張がなされたのは、ラオス政府がダム建設を延期し、実施しているのは進入道路の建設といった「準備工事」だけであると公言して何週間も経ってからのことである。

「チョーカンチャン社はこれまで、ダムの『初期工事』を進めているだけだと言い張ってきたが、『初期』の定義がどんどん広がってきている」と指摘するのは、IRのカーク・ハーバートソン・メコン・キャンペーン担当である。「川床を掘り起こしたり、村ごと住民を移転させるのでは、初期工事とは言えない」。

フアイ・スアイ村から移転した家族に話を聞くと、チョーカンチャン社が約束を守っていないことも分かる。移転世帯はまだ新しい農地の支給を受けていないし、提供された家屋を完成させるには補償金から多額の費用を捻出しなければならない。チョーカンチャン社は、電気と水を一年間無料で供給するという約束も反故にした。無料になったのは一か月分だけだった。チョーカンチャン社は他の村々にも、早ければ今年(2012年)12月に移転すると告知する一方で、ラオスの国内法に背いて、漁業の損失、農地の活用、砂金の収集といった主な食糧源・収入源に対しては補償を行わないと言っている。

タイのNGO、リビング・リバー・サイアム(Living River Siam)のティラポン・ポムン(Teerapong Pomun)ダイレクタ―もダム予定地の訪問に加わったが、「サイヤブリダムは、この初期の段階においてすら地元住民や環境に被害をもたらしている。チョーカンチャン社には、法律に背く勝手な振る舞いに対して責任を取らせなければならない。メコン河の生態系や魚類への被害がタイなど下流の国々で顕在化するのは時間の問題で、チョーカンチャン社は、そのことを考慮すらしていない」と述べた。

6月28日・29日、メコン河委員会(MRC)加盟国政府は、ラオスの首都ビエンチャンで開かれる2012年度援助国非公式会合の席で、開発パートナーたちと話し合いを行うことになっている。メコン河本流ダムの件も、議題になると見られている。

「チョーカンチャン社が進めている工事は、メコン圏諸国の政府間に不協和音を生んでいる」とハーバートソン担当は言った。「流域での今後の協力関係を台無しにするような工事を許すべきではない。タイ、ラオス両国政府は約束をきちんと守って、チョーカンチャン社に外交上の手続きを尊重するよう命じるべきだ」。

チョーカンチャン社の関与以外にも、タイはサイヤブリダム建設事業に深く関わっている。事業に融資しているのはタイの商業銀行である。サイヤブリダムで発電する電力の推定95%はタイに販売されることになるだろう。7月にはメコン河流域タイ8県の住民が、タイ政府を相手取って、サイヤブリダムの電力を購入する同意書に署名したことが憲法に明記した権利を侵害しているとして、訴訟を起こす予定である。

本記者発表に関する連絡先
・エイミ・トランデム(Ms. Ame Trandem)、IR東南アジア・プログラム・ダイレクター(Southeast Asia Program Director)
電話:+66 868822426、電子メール:ame@internationalrivers.org
・カーク・ハーバートソン(Mr. Kirk Herbertson)、IRメコン・キャンペーン担当(Mekong Campaigner)
電話:+66 867863182、電子メール: kirk@internationalrivers.org
・ティラポン・ポムン(Mr. Teerapong Pomun)、リビング・リバー・サイアム・ディレクター(Director, Living River Siam)
電話:+ 66 814477969、電子メール:aaa@livingriversiam.org

関連する情報
・サイヤブリダム建設現場光景(2012年6月)
http://www.flickr.com/photos/internationalrivers/sets/72157630300944090
・報道関係者用資料
http://www.internationalrivers.org/resources/media-kit-on-the-xayaburi-dam-3412

(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)

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