ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >原発輸出 > ベトナムのメディアに登場した原発導入への懸念(2)
メコン河開発メールニュース2012年9月28日
前回に続いて、ベトナム語の報道記事をご紹介します。
ベトナム政府公認の電子新聞「見識」は、同国に建設予定のニントゥアン原発が「最も新しい世代の原子炉であり、技術は検証ずみで、絶対的安全」としつつ、「小さなミスでも非常に大きな影響と害悪を引き起こす」とその危険性を指摘しています。短い記事の中で、矛盾する二つの記述があることが、推進、懸念を持つ人々両方の存在を感じさせる記事です。同じく、匿名の協力者の翻訳でお届けします。
電子新聞「見識」
2012年8月3日
7月2日、科学技術大臣がベトナムにおける原子力メディア情報に関するセミナーを開催した。専門家らによると、ベトナムにおける原子力発電開発は、条件や環境や技術に適合しているとのことだ。2020年に原発が稼働したら、電力不足の状況は大きく改善されるだろう。
ベトナム原子力エネルギー院の准教授チャン・タイン・ミン博士によると、原発の運転は火力発電所の運転とよく似ている。水を沸騰させ、蒸気にし、その蒸気を使ってタービンを回す段階までが似ている。異なる点は火力発電所が化石燃料を使うのに対し、原発はウランと原子炉の中で沸騰した水を使うことだ。わずかの燃料でも大きなエネルギーを得られる。1000MWの容量の発電所の運転に必要な燃料は1年間で、ウランなら30トン、石炭なら220万トン、石油なら140万トンとなる。
設計の簡素化と標準化により建設費用を節約しているが、原発の建設には非常に大きな投資が必要だ。原子炉一基につき約20億米ドルがかかり、建設期間は長く、先進的で複雑な技術を要する。通常の原発は、2基から4基の原子炉を備えている。
原発の運転と保守管理は40年から60年の長期に渡って安全に行うことができ、これも大きな関心の的だ。小さなミスでも非常に大きな影響と害悪を引き起こす。それ以外に、環境への影響も原発建設に当たっての最重要課題となる。核燃料の生産過程において、高山開発とウラン鉱石加工の二段階において、人間と環境に最も悪い影響が出る。ウラン鉱石加工の段階で、何百万リットルもの放射能汚染水が河川に放出され、水中の堆積物に放射能が徐々に溜まっていく。これらについては、慎重な対応が必要だ。
現在世界には31の国家と地域で原発が動いており、合計433基の原子炉がある。原子炉は核燃料の種類によって、通常燃料と濃縮燃料とに分類される。世界で使用されている原子炉は、気化炉、加圧水炉、軽水炉の3つである。ニントゥアン原発は改善軽水炉の技術を使う予定だ。最も新しい世代の原子炉であり、技術は検証ずみで、絶対的安全が保障され、投資計画を立案する時点で経済的効果が予想される。ニントゥアン第一原発の起工は2014年に予定されていて、最初の原子炉の稼働は2020年となっている。その暁には、電力供給がその時点での基本的な需要に応えられるだろう。
(文責 メコン・ウォッチ)