ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >メコン下流本流ダム>危機に直面した河の恵みと人びとの暮らし(3)MRCはサイヤブリダムについて協議を尽くすべきだ。
メコン河開発メールニュース2013年1月15日
1月16・17日(今週水・木曜日)、メコン河委員会(MRC)は、ラオスの古都ルアンパバーンで第19回評議会(Council)会合を開催します。メコン河流域内外のNGO・住民団体は、今回の会合で、MRC加盟国とドナー国(日本も含む)・国際機関が、ラオス北部で建設中のサイヤブリダムをめぐる未解決の問題について、どのように協議・合意するか注視しています。
ところが、サイヤブリダムが今回の会合の正式な議題にすらあがらない可能性が出てきました。メコン・ウォッチが入手した情報でも、当日のプログラム案には、本流ダムの追加調査の件があがっているのみで、「サイヤブリダム」は見当たりません。
サイヤブリダムについて協議を尽くさなければ、すでに準備段階に入ったドンサホンダム(ラオス・カンボジア国境近く)、パクベンダム(ラオス北部)といった他の本流ダム計画も、不十分な協議で進行してしまいます。MRCは今回の会合でサイヤブリダムについてきちんと協議し、また、日本政府も、ドナー国の一員として協議を求めるべきです。
以下では、「サイヤブリダムを公式の議題としては協議しない」とするMRC事務局の回答を引用した『プノンペンポスト』紙の報道(原文英語)を日本語で紹介します。
Shane Worrell
プノンペンポスト
2013年1月8日
来週、メコン河委員会(MRC)は、例年通り評議会を開催するが、加盟国のラオスが昨年(2012年)11月に建設を始めたサイヤブリダムに関して、反対意見を聞く機会を放棄するようだ。
昨日、MRC事務局のSurasak Glahan広報担当官は、カンボジア、タイ、ベトナムといった加盟国が、出力1,285メガワットのサイヤブリダムを公式の議題としては協議しないことを明言した。
同広報官によると、「加盟国から、サイヤブリダムに特化した協議を求める声はあがらなかった」とのことだ。
しかし、(評議会メンバーである)各国の環境・水資源担当大臣には、広い意味での水力発電所計画の影響について現状を報告するということだ。
ラオス政府は、河川事業に関して開始前に加盟国間で合意するよう義務付けた1995年のメコン協約を無視して、総額38億ドルのサイヤブリダムの建設を始めたが、環境保全団体は、同ダムがカンボジアに対して甚大な悪影響をもたらすとしている。
MRC加盟国は、2011年暮、本流ダム計画によって国境を越えた環境影響が発生する可能性について追加調査が必要であるとの点で合意した。
米国のNGOインターナショナルリバーズのAme Trandem東南アジアプログラム担当は、(ラオスやタイといった)加盟国が1995年のメコン協約に違反し、サイヤブリダムの協議手続きが正式に終了していない以上、MRC事務局に、なぜサイヤブリダムが今回の評議会の議題にあがらないのか問う必要があると述べた。
「サイヤブリダムが、ラオスとカンボジアで、連なって計画されている10ヶ所の本流ダムをはじめ、メコン河の将来をめぐる意思決定の悪しき前例となっていることから、今回の評議会での協議は重要だ」とTrandem氏は語った。
MRC事務局のGlahan氏は、MRCに財政援助する国々が、MRCの役割を、事業の承認ではなく協議と審査の場を提供することだと理解している点を強調した。
MRCの財政を支える国には、デンマーク、スウェーデン、オーストラリア、米国、ドイツなどがある。
ラオスがサイヤブリダムを建設することへのMRCの対応が十分であったかと問われて、デンマーク、スウェーデン両政府は、電子メールでほぼ同一の回答を送信してきた。
「(デンマークもスウェーデンも)サイヤブリダムの経済・社会・環境上のリスクには懸念があるが、MRCはサイヤブリダムをはじめとする本流ダム計画に対して、知識に基づいた解決策を提供すべきだとの確信を持ちつづける」とメールでの回答は述べている。
MRCに対するオーストラリア政府の支援について議会で取り上げた緑の党所属のLee Rhiannon上院議員は、プノンペンポストに対して、オーストラリア政府がメコン河の将来に重要な役割を果たしうると述べた。
Rhiannon議員は、ラオス政府がサイヤブリダムの工事を始めた時、「緑の党は、オーストラリア政府が、ラオス政府に1995年のメコン協約の義務事項を周知させるよう求める」と発言していた。
オーストラリア大使館の広報担当によると、オーストラリア援助庁(Aus-Aid)は、加盟国に対して、サイヤブリダムについてオープンで透明な協議を行うよう促し、「本流ダムの影響に関する追加調査」を実施するよう何度も呼びかけたとのことだ。
【訳注】記事の原文(英語)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.phnompenhpost.com/2013010860670/National/xayaburi-dam-not-on-agenda.html
(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)