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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >メコン下流本流ダム＞危機に直面した河の恵みと人びとの暮らし（４）カンボジア・フンセン首相も影響調査を重視か？
メコン河開発メールニュース2013年1月15日
明日（1月16日）、ラオスの古都ルアンパバーンで始まるメコン河委員会（MRC）評議会による、メコン河本流ダム問題、とりわけ建設工事がすでに開始されているラオス・サイヤブリダムへの対応に、注目が集まっています。
メコン・ウォッチでも、日本政府・外務省に対して、サイヤブリダムがもたらす甚大な環境・社会影響や、MRCでの協議手続きの不備をあらためて列挙した上で、この問題の解決、すなわち流域国・市民社会による合意形成に、日本が積極的な役割を果たすよう求める英文書簡を提出しました。この要請は、昨年12月14日、参議院議員会館で開催した外務省との公開協議で、内外のNGO・研究者らが発した意見と提言をまとめたもので、協議の参加者18名が名前を連ねています。以下のサイトでご覧になれます。
http://www.mekongwatch.org/PDF/CSO_MekongDamLetter_to_GoJ.pdf
MRC評議会でのサイヤブリダムの扱いについては、各種報道がなされていますが、以下では、カンボジアのフンセン首相が本流ダムの影響調査を求めているという、現地紙『カンボジア・デイリー』の記事（原文英語）を日本語訳で紹介します。
Denise Hruby
The Cambodia Daily
2013年1月11日
先週金曜日（1月11日）、世界野生生物基金（World Wildlife Fund=WWF）は、カンボジアをはじめとするメコン河流域四カ国政府に対して、サイヤブリダム問題をめぐる協議を再開するよう呼びかけた。ラオス政府は、下流諸国からの反対の声にもかかわらず、昨年11月、このダムの建設を開始している。
「カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム各国政府の閣僚は、来週、ラオスのルアンパバーンで開催する会合において、本流ダムについての意思決定をめぐる迷走を正常化すべきである。さもなければ、世界でもっとも重要な河川の管理を放棄するリスクを犯すことになる」と、WWFの声明は警告している。
1月16・17日の両日、メコン河委員会（MRC）が開催する会合には、流域四カ国政府の水資源担当大臣が出席し、メコン河下流域の今後の開発について協議を行う予定になっている。
「今回の会合では、国家間での協力関係、および6,000万人の人びとの生計にとって重要なメコン河の命運が試練に立たされる」と、WWFは指摘している。
サイヤブリダム建設問題は会議の議題にあがっていないが、WWFは、カンボジア、ベトナム両国政府が話を持ち出すだろうと述べている。
「話題になることは間違いない…。今回は、（カンボジア、ベトナムの）下流国政府が発した要請を無視してラオス政府がサイヤブリダム計画を進める決定を下してから、はじめての会合だ」と、WWFのSarah Bladen大メコン圏プログラム広報課長は述べた。
（カンボジア政府の）Lim Kean Hor水資源・気象担当大臣が、今回の会合へのコメントを避ける一方で、Mok Mareth環境大臣は、Kean Hor大臣が会合に出席し、カンボジア政府は、信頼のおける環境影響調査が実施された場合にのみ、サイヤブリダムの推進に同意するとの点を強調した。
Mareth大臣によれば、「フンセン首相が、（カンボジアに）どういう影響が及ぶのか、まず環境影響調査を実施してみる必要があると述べている。ラオス政府には、2011年、計画を延期するよう要請した」ということだ。
ラオス政府は、昨年11月、カンボジア、ベトナム両政府の書面による抗議にもかかわらず、出力1,285メガワット、総工費35億ドルのサイヤブリダム建設計画に着工した。カンボジア、ベトナム両政府は、サイヤブリダムが、魚を生活の糧とする何百万人もの人びとの暮らしを破壊すると述べている。
【訳注】
WWFの声明（”Regional cooperation on Mekong River in tatters”）は、以下のサイトで閲覧可能
http://wwf.panda.org/what_we_do/where_we_work/greatermekong/news/?207205
（文責・翻訳 メコン・ウォッチ）