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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ・ティラワ経済特区>住民が「協議も同意もない」とJICAにレター提出

ビルマ・ティラワ経済特区>円借款案件・関連インフラ事業サイトの住民、
「協議も同意もない」とJICAにレター提出

メコン河開発メールニュース2013年6月19日

5月下旬に訪緬した安倍首相が多くの日本企業幹部と予定地を視察するなど、現在、日本が官民を挙げて進めているビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業。約900世帯におよぶ大規模な住民移転、また、情報公開が不十分であることなど、現地では多くの問題が山積したままです。

国際協力機構(JICA)は6月7日、「同ティラワ関連インフラ事業(港湾・電力)」への円借款200億円について、先方政府機関との融資契約を締結しましたが、その直後の6月10日には、同関連インフラ・港湾事業の予定地域で暮らす住民グループから、「政府当局が事業計画や移転・補償対策に関する情報をまったく住民に提供していない」状況を報告するレターがJICAに提出されました。

同レターでは、住民協議や住民の同意なしに事業が進められようとしていることに対し、強い警告が発せられています。

同関連インフラ事業への円借款を検討するにあたり行なわれたJICAの環境レビューのなかでは、「住民協議は実施済み」との認識が示されていましたが、メコン・ウォッチは、住民が協議に参加していない実態を日本政府・JICAに伝え、本来とられるべき環境社会配慮手続きが蔑ろにされている点を指摘してきました。今回の住民グループからのレターは、改めて、適正な環境社会配慮手続きがとられないまま、円借款供与が決定されてしまった現状を浮き彫りにしています。

以下、住民グループのレター(原文ビルマ語)を日本語訳でご紹介します。

ティラワSEZ開発事業・関連インフラ(港湾施設整備)予定地域の
住民グループによる国際協力機構(JICA)宛てのレター
(2013年6月10日付)(原文はビルマ語。同英訳を和訳)

 

国際協力機構
理事長 田中 明彦 様

2013年6月10日

 

題目:慣習的な権利により当該地を利用している農民・漁民との事前交渉、および、同意取得なしに、農地立入り、砂による埋め立て、農地境界の破壊、囲い込み、構造物の建造等、いかなる手段をとることも止めるよう警告する

 

1. 私たちは、ヤンゴン管区南部県チャウタン郡区パラン・エィミャティダに記録されている610番地の区画番号63、54/2、54/3、63/1、55、56/2、22、49/2、46、88、48/97、8、90、 42、42/1、42/2、56/1に位置する土地で生活し、働いている地元コミュニティーの代表です。同地は地元では、ベイ・パウク集落としても知られています。

2. 同地は慣習的な権利により、私たちに帰属するものです。つまり、私たちは土地利用に課されている税金を支払ってきましたし、それは、昨年までの税支払いの領収書上で、農地として明確に記載されています。(添付文書1を参照)

3. 1994〜95年頃、同地の収用が行なわれ、地元コミュニティーの中には20,000チャットが補償として支払われた住民もいました。しかし、それは土地収用法に適切に則った形で行なわれたわけでも、同法の要件とされている自由意思に基づく(強制されていない)同意が確保されたわけでもありません。したがって、法的には、同地は国有地にならなかったはずです。

4. 第39項を提起しましたが、当該地は今日まで継続的に農地として利用されています。すなわち、いかなる他の用途であっても、異なる土地利用が認められてから6ヶ月以内に同土地利用が遂行されなくてはなりませんが、実際には、異なる用途で利用されてきませんでした。同地は過去から常に、そして、現在も農地のままです。

5. 6ヶ月の期限が過ぎる場合は、農地法(2012年)の第31項、および、第30項に則り、農地以外の他の用途で土地を利用する権利は失効します。そして、第32項に則り、同地が現在、従来の利用者である農民に帰していることは明らかです。

6. こうしたあらゆる事実にもかかわらず、農地境界の破壊や農地の砂による埋め立て行為が、栽培可能な農地を破壊しています。農民や漁民の同意なしに、ミャンマー港湾公社は一方的な決定をできません。一方的な決定を下すことは、ミャンマー港湾公社が法の支配を無視しているということです。

7. 既存法で規定されている農民の権利が無視されたり、以前の法律によって彼らの権利がすでに奪われ、正当な権利を有する農民であっても裁判所に訴えられたケースが複数あります。

8. 私たちの謂わんとしているのは、私たち農民がたとえ従来の所有者であり、私たちの権利が新しい農地法により認められ、土地を所有する新たな機会が付与されているとしても、私たちは多くの形態の脅威やリスク、危険に直面しているということです。

9. そのような背景状況があるにもかかわらず、私たち農民や漁民は、国全体に利益をもたらすであろう特別経済区開発事業に反対しようとしているのではありません。私たちはただ単に、国だけが利益を享受し、私たち地元コミュニティーが利益を享受できないのではと心配しています。

10. こうした懸念があがってくるのは、私たちの生活水準を従来の水準より低下させないよう確保するため、どのような取り決めがなされるのかについて、同事業によって立ち退きを迫られる私たちの仲間がまったく情報を持っていないからです。私たちはいかなる言質も聞いていませんし、いかなる事業計画も見せられておらず、透明性や説明責任はまったくありません。

11. 私たちは、移転計画といった類のものについて、まったく情報を受け取っていません。

12. 私たちは、例えば同事業により漁場を失うことになる漁民がそうであるように、生計手段に対して起きる変化について、どのような支援策がとられるのか、まったく情報を持っていません。

13. 私たちは、補償対策がどのように決定されるのか、つまり、一方的に決定されるのか、あるいは、移転を迫られている地元コミュニティーの代表が補償手続きの意思決定に参加できるのか/するのかについて、まったく情報を持っていません。

14. 私たちは、金銭補償のみが提供されるのか、「他形態の対策」というものが私たちにとって何を意味するのか、また、それらの他形態の対策が何なのかについて、まったく情報を持っていません。

15. 私たちは、喪失することになるあらゆる生計手段を代替するために創出されるという新たな雇用機会が、どのような類のものであるかについて、まったく情報を持っていません。

 

したがって、私たちは関連機関に対し、以下を伝えます。

a. 透明性のないまま、住民を強制的に移転させようとする動きがあること

b. 地元コミュニティーとの透明性のある対話や交渉を行なうにあたり、政府を代表する機関の責任と説明責任が欠如していること

c. 同事業地で生活をしている地元コミュニティーは懸念を増幅させている一方で、現実には、制定法に基づき付与されている権利を享受していないこと

 

同事業地、つまり、第1段落で言及されているベイ・パウク集落で生活する当該農民(19名)、および、漁民を代表する地元コミュニティー・グループ

(以下、シュエピタヤー小区ベイ・パウク集落の代表5名の氏名や連絡先、署名等。また同レターの写しの発送先。日本への写しの発送先は、岸田 外務大臣)

 

※同事業の詳細は、こちらでご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

 

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