ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > パクムンダム>再び守られない約束 水門開放は8月に
メコン河開発メールニュース2013年7月30日
パクムンダムはタイ東北部を流れるメコン河の支流、ムン川河口近くに建設されました。世界銀行の支援で作られたこのダムの発電能力は136メガワット、タイのNGOによると、バンコクの大型デパート5軒分の電力をまかなう程度の規模でしかありません。しかし、この大規模と言えないダムは、流域で漁業を主な生業として暮らしてきた人々の生活とメコン河の生態系に大きな負の影響を与え続けています。
1999年に始まった流域住民の自然と生計の回復を求めるダムの水門開放運動により、タイ政府は一時的な水門開放と再調査を地元大学に委託、大学は5年間の水門開放を提言しています。しかし、それは採用されず、2003年から年間4ヶ月間の発電休止とダムの水門開放という妥協案でダムは運転されています。これまでの経緯はこちらをご覧ください。
(これまでの経緯)http://www.mekongwatch.org/report/thailand/pakmun.html
この水門開放は、メコン河から支流に回遊する魚の移動を可能にすることが目的です。ムン川への魚の回遊は2月から始まりピークは5月ごろにやってきます。当初7月だった開始時期は、住民の要請で5月開始になったのですが、今年は未だに実施されていません。住民はこちらの5月の報告以降も、何度もバンコクに請願やデモに出かけています。
(5月の報告)http://www.mekongwatch.org/resource/news/20130520_01.html
今年は、雨季前半の少雨と新しく上流に建設されたフアナーダムの滞水の影響のためか、ムン川の水質は非常に悪く、ホテイアオイの大発生も起こっています。今、ダムの貯水池は大量のホテイアオイで埋め尽くされています。
ホテイアオイで埋まったダム貯水池
(写真提供:現地市民グループ)
ダムを超えられないメコン河の回遊魚を獲る漁師。
資源の枯渇が心配されるが、住民は生活のために漁を続けざるを得ない。
(写真提供:現地市民グループ)
また、最近の様子はタイのNGO、Living River Siamの撮影した映像で見ることができます。
(最近の映像(字幕等解説はタイ語))http://youtu.be/Bwq-anFSmlk
住民の度重なる要請を受け、タイ政府はようやく8月2日に水門を開放する使節を送ると住民に通達しました。
本流や支流に次々とダムが建設され、メコン河の豊かな生態系の危機が叫ばれる今、魚の資源維持のために、パクムンダムの水門開放はタイだけでなくメコン河下流域にとっても重要な課題です。ムン川の経験から流域の人々と学ぶために、メコン・ウォッチでは以下の映像の制作を行い、流域各国の言語に翻訳中です。日本語版も公開していますので、ぜひご覧ください。
(映像「ムン川の経験―メコンの暮らしとダム」) http://www.mekongwatch.org/gallery/index.html
(文責 メコン・ウォッチ)