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原発輸出>ベトナムの予定地の暮らし(2)先住民の津波の記憶

メコン河開発メールニュース2013年8月1日

日本政府は、ベトナムへの原発輸出を進めています。

敦賀原発などを所有する日本原子力発電(株)は、ベトナムの原発計画に関する実施可能性調査(F/S)を受注し、既に現地調査を終えた模様です。この調査の予算は19.99億円。2009年、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課が公募した補助金「低炭素発電産業国際展開調査事業」で実施されました。

一方、ベトナムの建設予定地の人々は、ベトナム政府からも、日本政府からも驚くほど何も知らされていません。メコン開発メールニュースでは昨年11月に行った現地訪問時の様子を、5回にわたってお伝えしています。


緑の中に砂地が広がる景観

ベトナム最初の原発建設地に選ばれたニントゥアン省は、南シナ海に面した風光明媚な場所です。省内には国内有数の観光ビーチを抱え、州都のファンラン市は半砂漠という東南アジアでは珍しい独特の景観が見られるところです。ウミガメの産卵地のある国立公園も抱えるニントゥアン省には、観光地として国内外から年間多くの人が訪れています。

山の上の遺跡では、若いカップルが結婚記念に民族衣装で写真を撮っていました。

ベトナムの先住民チャムの人たちです。近くには観光客向けに素朴な焼き物を売るチャム族の村もありました。店にいた女性にベトナム語のわかる同行者が話しかけたところ、原発が建設されることを非常に恐れていたといいます。現地在住の人によると、ベトナムのテレビでは、2011年5月ごろから福島のニュースはほとんど報道されなくなり、多くの人は事故が収束したと誤解しているそうです。

訪問したチャムの村も原発立地20km圏内に入る場所です。人びとはまだ何も具体的なことを知らされていないのに、原発ができることだけを知っています。

チャム族の研究者によると、この地では津波で命を落とした英雄が神として祀られているといいます。過去に大規模な津波があったことが、人々の記憶にかすかに残っているのです。

2012年10月、日本で衝撃的なニュースが報道されました。

経産省は「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業」の一環としてベトナム原発予定地の断層の有無などを調査するため、日本原子力発電(株)と随意契約を結び、それに5億円の予算が計上されていたことが明らかになりました。これは、あろうことか津波の被害や原発事故に苦しむ人たちのために、増税してねん出された復興予算の流用でした(東京新聞2012年10月29日報道など)。様々な世論調査で、対象となった日本の市民の約6割が「原発輸出に反対」と答えていると報道されています。しかし、日本政府はお構いなしに輸出の実現にまい進しています。

(文責 メコン・ウォッチ)

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